手の写真だけで難病を見つけ出すAI診断システムが開発された。
神戸大学の研究グループが2026年2月に発表した。顔や指紋を用いず、手の形の変化から指定難病「先端巨大症」を高精度に識別できるという。
診断が遅れやすい先端巨大症
先端巨大症の症状と推移。(出典/神戸大学 大町侑香、福岡秀規 CC BY)
先端巨大症は患者数が少なく、見た目の変化も緩やかなため、診断まで10年以上かかることもある。
未治療では糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群、心臓病やがんのリスクが高まるとされる。
手の変化や「フィストサイン」に着目し、顔画像を使わない判定法として手画像AIを開発した。
見た目の変化から病気を見つけるには、専門医の経験が必要になる。特に患者数の少ない病気では、診断までに何年もかかることが珍しくない。
先端巨大症は、脳の下垂体にできる腫瘍によって成長ホルモンが出過ぎることで起こる病気で、顔や手足など体の先端が徐々に大きくなる。鼻が大きくなったり、下あごが出てきたりする外見上の特徴がある。病気は10万人当たり4~24人と少なく、診断まで10年以上かかるケースもある。しかし、この病気は治療せずにいると、糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群などを引き起こし、心臓病やがんのリスクも高まるとされる。進行がゆっくりなため、本人も周囲も気づきにくい。
最近では顔写真から病気を見つけるAI研究も進むが、本人を確認しやすい顔画像はプライバシー面の懸念が大きく、日常的な検診への適用が難しいという課題がある。
そこで研究グループは、先端巨大症の患者の約9割に手の変化がみられるとされる点や、握りこぶしを作っても爪が手のひらに隠れない「フィストサイン」に着目。手なら兆候が現れやすく、顔より個人を特定しにくいことから手画像による判定システムを構想した。
研究は日本全国15の専門医療機関による共同研究として行われた。
18歳以上の成人716人(先端巨大症317人、対照399人)を対象として、手の甲と握りこぶしの2種類の写真を撮影。集まった画像は計1万1480枚になった。
これらの画像をAIに学習させた上で、先端巨大症かどうかを自動で判定できる仕組みを作った。AIは、写真の中の特徴を自ら見つけ出して判断する「深層学習」と呼ばれる技術を用いている。
関節リウマチや肺がんへの応用も
開いた手のひらの様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
AIの感度は89%、特異度は91%で、専門医と同等以上の識別精度が示された。
手の写真のみで判定できるため、健診や人間ドックでの活用や早期専門医紹介が期待される。
将来的にはスマホでの自己チェックや、関節リウマチや肺がんなど他疾患への応用も視野に入る。
結果として、病気の人を正しく見つける割合(感度)は89%、病気でない人を誤って陽性としない割合(特異度)は91%となった。
総合的な識別能力を示す指標も高く、経験豊富な内分泌専門医と同等、あるいは専門医を上回る精度と見なされた。
顔や指紋を写さない仕組みであるため、健康診断や人間ドックで「手の写真を数枚撮るだけ」で済む。この仕組みを使うことで早い段階で専門医につなげることができれば、合併症の予防や生活の質の維持にもつながる。
将来的には、一般的なクリニックなどで専門医への紹介の必要性を判断するための補助や、スマートフォンを使った自己チェックへの応用も視野に入っている。
今後、関節リウマチや肺がん、変形性関節症、貧血、クッシング症候群、強皮症など、手に変化が現れる他の病気への展開も目指すとしている。
成果は2026年2月27日、米国内分泌学会誌「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」にオンライン掲載された。