尿を用いて食物アレルギーを評価する新たな検査法が開発された。
東京大学大学院農学生命科学研究科の村田幸久氏らの研究グループが2026年3月に発表した。
高価な分析装置に依存しない検査法へ
尿を用いた食物アレルギー検査法の概念図(出典:東京大学)
- 食物アレルギー診断は主観的評価も多く、客観的指標の必要性が高まっている。
- 尿中のテトラノルPGDMがアレルギー反応の指標として有望とされてきた。
- モノクローナル抗体を用いた「EIA法」により、簡便で低コストな測定が可能になった。
報告によれば、食物アレルギーは世界的に増えており、特に子どもの生活の質に大きな影響を及ぼしている。
食物アレルギーの診断には「経口食物負荷試験(OFC)」と呼ばれる検査が用いられる。これは原因と疑われる食品を少量から段階的に摂らせ、症状の有無や程度を評価する方法だ。
この際の評価は、皮膚の症状のほか、呼吸や消化器の症状などから行われるが、重症度を評価する場合などには医師の主観的な評価に頼る部分があり、より客観的な数値の指標が求められている。
研究グループによれば、アレルギー反応が起こると、活性化した肥満細胞から放出される「プロスタグランジンD2(PGD2)」の代謝産物である「テトラノルPGDM(tetranor-PGDM)」が、尿中で測定可能な指標となる可能性が示されてきた。これは食物アレルギーの判定に有望と考えられるが、その測定には液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC-MS/MS)などの高価な分析装置が必要で、一般医療機関での実用化が課題となっていた。
今回の研究では、テトラノルPGDMの尿中の濃度を簡単に測定できる手法を構築した。
テトラノルPGDMにのみ反応する「モノクローナル抗体」を開発し、これによりテトラノルPGDMを検出、定量できるようにした。このような方法は、酵素免疫測定法(EIA)と呼ばれている。
これにより、従来のような高価な分析装置を用いず、一般の医療機関でも実施可能な検査法が実現された。
尿検査のみで精度高く判定
卵やナッツ、乳製品、魚介類など食物アレルギーの原因となり得る食品。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 新検査は従来法と高い相関を示し、精度の高さが確認された。
- 尿中テトラノルPGDM濃度により、アレルギーの有無を高精度で判別可能。
- 尿のみで検査でき、低負担かつ家庭用キットなどへの応用も期待される。
研究グループが4歳から14歳の子どもを対象として検証したところ、新たに開発した検査による測定値は従来の方法と比べて高い相関関係があり、精度が認められた。
また、食物アレルギーの患者では尿中のテトラノルPGDMの濃度が高く、健康な子どもと明確な差があった。
解析の結果、この検査は高い判別性能を示した。基準となる値を設定することで、アレルギーがある人の約93%を正しく見つけることができ、アレルギーでない人も約82%の精度で見分けられることが確認された。尿検査だけでも実用的にアレルギー反応の有無を判断する手がかりになる実用的な診断補助となる可能性が示された。(検査の判別能力を評価する方法であるROC解析では、1に近づくほど判別性能が高いと判断できるAUCが0.91となった)。
開発された検査は血液を採る必要がなく、尿だけで行えるため、子どもへの負担が少ない点が大きな利点になり得る。
研究グループによれば、将来的には、経口食物負荷試験をどのタイミングで安全に終了できるかの判断材料を得たり、自宅での体調管理、免疫療法の効果を確認する手段としての活用も期待されるという。
研究グループは家庭で使える簡易検査キットの開発も進めている。