研究

50歳未満で増えているがんは何か 乳がん・大腸がん・腎がん・子宮がんが増加

米国で14種類の早期発症がんが上昇

検査結果の書類を見ながら話す患者と看護師
検査結果の書類を見ながら話す患者と看護師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 米国で50歳未満の人に増えているがんの種類が明らかになった。

 米国立衛生研究所(NIH)傘下の米国国立がん研究所(NCI)の研究グループが2025年5月に報告した。

33種類のがんを対象に新たに診断される人を調べた

マンモグラフィーなど乳がん検診項目が記載された問診票
マンモグラフィーなど乳がん検診項目が記載された問診票。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 米国では50歳未満で診断される「早期発症がん」が増えている可能性が指摘されている。
  • 特に大腸がん、膵臓がん、女性乳がん、子宮がんなどで増加が報告されてきた。
  • 研究では米国のがん登録データと死亡統計を用い、若年層と高年齢層の発症傾向を比較した。

 報告によれば、50歳未満で診断される「早期発症がん」が増えている可能性が指摘されている。特に大腸がん、膵臓がん、女性乳がん、子宮がんなどで増加が報告されてきた。

 肥満や糖尿病の増加、欧米型の食生活や超加工食品の普及、運動不足など、さまざまな要因が考えられている。

 今回、研究グループは、若年層のがんが本当に増えているのか、増えているとすればどのがん種なのか、またその傾向が若年層だけに限られるのか、それとも中高年層にも共通する変化なのかを米国のデータから検証した。

 研究グループは、米国の全人口を反映している「がん登録データベース」と「死亡統計」を用い、15~29歳、30~39歳、40~49歳の「早期発症群」と、50~59歳、60~69歳、70~79歳の「高年齢群」を比較した。

早期発症がんの63.4%が女性

  • 2010~2019年に15~49歳で診断された早期発症がんは約202万件で、63.4%が女性だった。
  • 33種類のうち14種類のがんで若年層の増加が確認され、9種類は高年齢層でも増えていた。
  • 若年層では大腸がんや子宮がんなどで死亡率上昇がみられるなど懸念も示された。

 分析の結果、2010~2019年に15~49歳で診断された早期発症がんは202万829例に上り、女性がその63.4%を占めた。女性では乳がん、甲状腺がん、メラノーマ、男性では大腸がん、精巣がん、メラノーマが主要ながん種だった。

 33種類のうち14種類のがんが、早期発症群のいずれかの年齢層で増加が確認された。9種類は高年齢層でも増えていた。

 若年層だけで増えていたのは、メラノーマ、子宮頸がん、胃がん、形質細胞性腫瘍、骨や関節のがんだった。

 高年齢群でも増えていたがんは、女性乳がん、大腸がん、腎がん、精巣がん、子宮がん、膵臓がん、さらに一部のリンパ系腫瘍など。

 全体として若年層のがん死亡率は上昇していなかったが、がん種別にみると懸念される点もあった。

 というのは、30~39歳および40~49歳では大腸がん死亡率が上昇し、30~39歳および40~49歳の女性では子宮がん死亡率も増加していたことだ。さらに精巣がんでも一部の若年層で死亡率上昇が見られた。

肥満はがん増加要因の有力な候補

さまざまな色のがん啓発リボン
さまざまな色のがん啓発リボン。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 若年層のがん増加は単一の原因では説明できないと研究チームは指摘した。
  • 肥満は有力な要因で、大腸がん、腎がん、子宮がんなど複数のがんのリスクと関連した。
  • 糖尿病、運動不足、食生活の変化、検診や画像診断の進歩なども影響した可能性がある。

 罹患率の増加要因について研究チームは、単一の原因では説明できないとしている。

 中でも肥満は有力な候補で、大腸がん、腎がん、子宮がん、膵臓がん、胃がん、子宮頸がん、形質細胞性腫瘍など、複数の増えたがんでリスク因子とされた。

 加えて、糖尿病の増加、運動不足、西洋型食生活、超加工食品、出生コホートごとの生殖関連要因の変化、遺伝的ハイリスク者への監視強化、画像診断や検診技術の進歩も影響した可能性がある。

 例えば、乳がんではエストロゲン受容体(ER)陽性となるケースの増加が目立ち、初経年齢、出産歴、初産年齢などホルモン関連要因との関係が示された。

 大腸がんでは30~39歳、40~49歳で増えた一方、60代後半以上では減っており、若年層でのリスク要因に変化があった可能性や、高齢層での検診の普及が背景にある可能性がある。

 論文は、早期発症がんが増えていることを単純にとらえるのではなく、どのがんがどの年齢層で、どの程度増えているかを見極めていく必要性を説いている。

 今回の研究成果は2025年に学術誌「Cancer Discovery」に掲載された。

 日本でも若年層のがん動向を継続的に監視することが重要と考えられる。

参考文献

Incidence rates of some cancer types have risen in people under age 50(National Cancer Institute)
https://www.cancer.gov/news-events/press-releases/2025/early-onset-cancer-rates/a>

Shiels MS, Haque AT, Berrington de González A, Camargo MC, Clarke MA, Davis Lynn BC, Engels EA, Freedman ND, Gierach GL, Hofmann JN, Jones RR, Loftfield E, Sinha R, Morton LM, Chanock SJ. Trends in Cancer Incidence and Mortality Rates in Early-Onset and Older-Onset Age Groups in the United States, 2010-2019. Cancer Discov. 2025 Jul 3;15(7):1363-1376.
https://doi.org/10.1158/2159-8290.CD-24-1678

前立腺がん・乳がん・膵臓がんで明暗 国立がん研究センターが5年生存率を公表
https://prevono.net/japan/500/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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