研究

がん死亡は減っているのに、「飲酒に関連する死亡」は倍増 米国で2023年2万3000人超

男性と55歳以上で負担大きく、肝がん・食道がん・大腸がんが上位

複数人がビールジョッキを持ち寄って乾杯している様子。
米国では、飲酒に関連すると推計されるがん死亡が30年余りで増加したと報告された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 飲酒に関連するがん死亡が、米国でこの30年余りで約2倍に増えていることが示された。

 米国の研究グループが2026年9月に報告した。

飲酒に関連するがん死亡、33年間の推移を分析

氷の入ったグラスに琥珀色の酒を注いでいる様子。
飲酒は肝がん、食道がん、大腸がんなど複数のがん死亡に関連する可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 世界の疾病負担を推計するデータを使い、米国の1990~2023年における飲酒関連がん死亡の推移を分析した。
  • 飲酒が原因と推計されたがん死亡は、1990年の1万1361人から2023年には2万3126人へ約2倍に増加した。
  • 人口構成を調整した死亡率も、人口10万人当たり3.8人から4.1人へ上昇した。

 アルコールは、口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸など複数のがんとの因果関係が確認されている発がん要因とされる。

 体内でアルコールから作られるアセトアルデヒドがDNAを傷つけるほか、炎症などを通じて発がんにつながると考えられている。

 今回の研究では、世界の疾病負担を推計する「世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease、GBD)2023」のデータを使い、米国における1990~2023年の飲酒関連がん死亡の変化を調べた。

 対象としたのは、食道、胃、肝臓、喉頭、乳房、前立腺、大腸、口腔、膵臓、咽頭などのがん。男女別、20~54歳と55歳以上の年齢別、さらに全米50州とワシントンD.C.について分析した。

 ここでいう「飲酒が原因となった死亡」は、死亡診断書に飲酒が原因と記載された人数ではない。各地域や年齢、性別の飲酒量と、飲酒によって各がんのリスクがどれだけ上がるかという研究結果を組み合わせ、「飲酒がなければ避けられた可能性がある死亡」を統計的に推計したものだ。

 その結果、飲酒が原因と推計されたがん死亡は、1990年の1万1361人から2023年には2万3126人に増えた。人口構成の変化を調整した死亡率も、人口10万人当たり3.8人から4.1人へ上昇した。

2023年は肝がん7686人、男性と55歳以上で高い死亡率

肝臓の位置を示すイラストが重ねられた腹部を押さえる人。
飲酒関連がん死亡では、肝がんが最も多く推計された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 2023年の飲酒関連がん死亡は、肝がん7686人が最多で、食道がん4902人、大腸がん3818人が続いた。
  • 飲酒関連がんの年齢調整死亡率は男性が人口10万人当たり6.4人、女性が2.1人で、55歳以上では19.2人と20~54歳の2.4人を大きく上回った。
  • がん死亡全体に占める飲酒の割合は1990年の2.2%から2023年には3.5%へ上昇し、がん死亡全体が減る中でも飲酒の影響は相対的に拡大していた。

 2023年の飲酒関連がん死亡をみると、最も多かったのは肝がんの7686人だった。次いで食道がん4902人、大腸がん3818人となった。

 男女差も大きく、飲酒関連がんの年齢調整死亡率は、男性が人口10万人当たり6.4人だったのに対し、女性は2.1人だった。飲酒関連がんの死亡者数でも、男性が1万7477人を占めた。

 年齢別にみても、飲酒関連がんの死亡率は55歳以上で高く、人口10万人当たり19.2人だったのに対し、20~54歳では2.4人だった。55歳以上では、男性は肝がん、女性は乳がんの飲酒関連死亡率が最も高かった。一方、20~54歳では、男性は大腸がん、女性は乳がんが最も高かった。

 さらに注目されたのが、がん死亡全体に占める飲酒の影響。がん死亡全体に占める飲酒の影響も拡大しており、その割合は1990年の2.2%から2023年には3.5%へ上昇した。男性では2.5%から4.8%、女性では1.8%から2.0%となった。

 研究グループが追加分析したところ、がん全体の死亡率は、男女とも各年齢層で低下していたが、飲酒が原因の死亡率は男性では増加し、女性でも低下幅はがん死亡全体より小さかった。がん死亡全体が減ってきた中でも、飲酒の影響は相対的に大きくなっていることになる。

 推計には一定の不確実性があるものの、飲酒ががんに与える影響の大きさを改めて示す結果となった。研究グループは、飲酒量を減らす取り組みや啓発を強化する必要があるとしている。

参考文献

Alcohol-attributable cancer mortality in the United States, 1990–2023: a secondary analysis of Global Burden of Disease data(The Lancet Regional Health – Americas)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667193X26002292

Jani CT, Edwards K, Sharma R, et al., Alcohol-attributable cancer mortality in the United States, 1990–2023: a secondary analysis of Global Burden of Disease data, Lancet Reg Health Am, 2026;101599. DOI: 10.1016/j.lana.2026.101599.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667193X26002292

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

ARCHIVE

新着記事

胸を押さえ、心臓付近の痛みを示す男性。
心筋梗塞や脳卒中などのリスク評価では、通常のリスク計算に加え、対象を選んで冠動脈カルシウム検査を使うことの有用性が検討された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

心臓CTの「カルシウム検査」、全員には必要ない可能性

心臓の血管にたまったカルシウムをCTで調べる「冠動脈カルシウム検査」は、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを見極める方法として利用が広がっている。しかし、すべて…

第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会の大会テーマと熊本城のイラストが表示された会場スクリーン。
「人生のそばに予防医療を」をテーマに開かれた第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会。(写真:編集部)

がん検診、職場と自治体の情報を一体把握へ 厚労省が第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会で最新動向を説明

がん検診を「受けてもらう」だけでなく、職場と自治体に分かれた検診情報を連携させ、科学的根拠が蓄積してきた新しい検査を、自治体で実際に運用できるか検証する──…

日本人間ドック・予防医療学会学術大会で、健診から肝疾患を拾い上げる方法について議論する肝臓関連シンポジウムの様子。
第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会で開かれた、日本肝臓学会との共催シンポジウム。健診を入口に、MASLDやアルコール関連肝疾患をどう見つけるかが議論された。(写真:編集部)

肝疾患の拾い上げ、健診は「ALT30超え」を入口に次の行動へ

健診で「肝機能の数値が少し高い」と言われても、そのままにしている人は少なくない。一方で、血液検査の数値が大きく外れていなくても、脂肪肝や肝臓の線維化が進んで…

関連する病気から探す

カテゴリーから探す

あなたの立場から探す

あなたの関心から探す