体内のアルギニンが不足すると、免疫ががん細胞を見つけて攻撃する仕組みが弱まる可能性が示された。
米ロックフェラー大学の研究チームが、大腸がんやウイルス感染とアルギニンの関係を調べた。結果は2026年7月30日、科学誌「Cell」に発表された。
免疫の働きを支える重要なアミノ酸
アルギニンを増やすことで、大腸腫瘍に対する免疫の働きを高められる可能性が示された。ただし、サプリメントによる予防や治療効果は今後の検証が必要。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 大腸がんやインフルエンザ、新型コロナウイルス感染では、複数のアミノ酸の中でアルギニンが特に大きく減っていた。
- アルギニンが不足すると、異常な細胞の目印となる「MHCクラスI」が作られにくくなった。
- 目印が減ることで、がん細胞や感染細胞が免疫に見つかりにくくなり、体内に残りやすくなると考えられる。
アルギニンは、体内でタンパク質を作るために必要なアミノ酸の一つだ。体内でも作られるほか、食事からも取り入れられる。
研究チームが大腸がん、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染を調べたところ、いずれの病気でも、複数のアミノ酸の中でアルギニンが特に大きく減っていた。
アルギニンが不足すると、免疫が異常な細胞を見つけるために必要な「MHCクラスI」というタンパク質が作られにくくなった。
MHCクラスIは、細胞の中にある異常なタンパク質の一部を細胞表面に示し、免疫に知らせる役割を持つ。がん細胞やウイルスに感染した細胞に対し、「この細胞を攻撃する必要がある」と免疫が気づくためのお膳立てをする仕組みだ。
ところが、アルギニンが不足すると、この目印が十分に作られなくなる。その結果、がん細胞や感染した細胞が免疫に見つかりにくくなり、体内に残りやすくなると考えられる。
今回の研究は、アルギニンが単なる栄養素ではなく、免疫ががんや感染症に対応するための重要な材料になっていることを示した。
アルギニンを増やすと大腸腫瘍を抑制
アルギニンは、肉や魚、大豆製品、ナッツ類などに含まれるアミノ酸。研究では、大腸がんやウイルス感染時にアルギニンが大きく減ることが示された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- アルギニンが少ない状態では大腸腫瘍が増え、多くすると腫瘍が減る傾向が確認された。
- アルギニンを増やすとMHCクラスIが多く作られ、免疫ががん細胞を見つけやすくなったとみられる。
- がん免疫療法や感染症対策への応用が期待されるが、サプリメントによる予防・治療効果は今後の検証が必要だ。
研究では、アルギニンが少ない状態では大腸腫瘍が増え、アルギニンを多くすると腫瘍が減る傾向が確認された。
アルギニンを増やすことで、MHCクラスIが作られやすくなり、免疫ががん細胞を見つけやすくなったとみられる。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染の実験でも、アルギニンが多い状態では感染の経過が改善した。感染後にアルギニンを与えた場合にも効果が見られたという。
研究チームは、アルギニンの補給を、がんの免疫療法や感染症対策と組み合わせられる可能性があるとみている。大腸がんの発生や進行と栄養状態の関係を考えるうえでも、新たな手掛かりとなる。
一般的な食品では、肉や魚、大豆製品、ナッツ類、種子類などにアルギニンが含まれている。タンパク質を含む食品を偏りなく取ることは、アルギニンを補う方法の一つになる。
ただし、今回の研究結果だけで、アルギニンのサプリメントを多く取れば大腸がんを予防できると判断することはできない。人でどの程度の量が適切か、がんの予防や治療に役立つかは、今後の研究で確かめる必要がある。
病気によってアルギニンが減り、その不足がさらに免疫を弱める可能性が示されたことは重要だ。今後、食事や栄養状態を通じて、がんに対する免疫の働きを支える研究が進むとみられる。