7万人を超える女性が参加した乳がん検診研究を継続するため、東北大学の研究者らがクラウドファンディングを開始した。
研究参加者の長期追跡を続け、マンモグラフィと超音波を組み合わせた検診が、最終的に乳がんによる死亡を減らせるかを明らかにする狙いだ。
東北大学が2026年7月31日に発表した。
超音波併用で進行乳がんの累積罹患率が約17%低下
乳房を撮影して乳がんの早期発見につなげるマンモグラフィ検査。画像はイメージ。(画像:Adobe Stock)
- J-STARTには40歳代女性7万6196人が参加し、マンモグラフィ単独と超音波併用の効果を比較している。
- 約15年間の解析で、超音波併用グループはステージII以上の進行乳がんの累積罹患率が約17%低かった。
- 進行乳がんの減少が死亡率低下につながるかを判断するには、さらに長期の追跡が必要となる。
クラウドファンディングの対象となるのは、40歳代女性の乳がん検診を調べる大規模研究「J-START」だ。
J-STARTは2006年、厚生労働省のプロジェクトとして始まった。全国23都道府県の42団体が参加し、これまでに7万6196人の女性が研究に協力している。
日本の乳がん検診では、40歳以上を対象に、乳房をX線で撮影するマンモグラフィが基本となっている。
一方、40歳代の女性や日本人を含むアジア人に多いとされる「高濃度乳房」では、乳腺と乳がんのしこりがともに白く写るため、病変が見つけにくい場合がある。高濃度乳房は乳腺の割合が高い乳房の特徴で、病気ではない。
J-STARTでは、40歳代の健康な女性を、マンモグラフィだけを受けるグループと、マンモグラフィに乳房超音波検査を加えるグループに無作為に分け、その後の乳がんの進行度や死亡率を比較している。
約15年間のデータを解析した結果、超音波を加えたグループでは、ステージII以上の進行乳がんの累積罹患率が、マンモグラフィだけのグループより約17%低かった。
この結果は2026年2月、医学誌「The Lancet」に発表された。超音波を加えることで、ステージII以上で診断される乳がんを減らせる可能性が示された。
ただし、進行乳がんの累積罹患率が低下したことと、乳がんによる死亡が減ることは同じではない。検診の最終的な効果を判断するには、参加者をさらに長期間追跡する必要がある。
なお、PREVONOでは、J-STARTに取り組む東北大学大学院医学系研究科の原田成美准教授へのインタビューも掲載している。40歳代の乳がん検診が抱える課題や、超音波併用の意義について紹介している。
2033年度までの追跡に向けて寄附を募集
原田 成美(はらだ・なるみ)。東北大学大学院医学系研究科乳腺・内分泌外科学分野准教授。(写真:星良孝)
- 東北大学は、7万人を超える研究参加者の追跡を続けるため、クラウドファンディングで寄附を募集している。
- 寄附金はウェブアンケートや郵送・住民票調査、研究体制の維持などに活用される。
- 2033年度末を目安にデータを解析し、超音波併用検診が乳がん死亡率を減らせるかを検証する。
東北大学は、長期追跡を続けるため、クラウドファンディングサービス「READYFOR」で寄附を募っている。募集期間は、2026年8月1日午前9時から10月30日午後11時までである。
東北大学によると、寄附金は、ウェブアンケートの構築、郵送調査、住民票調査などの追跡調査や、研究を維持するための体制整備に充てる。2033年度末を一つの目安としてデータを締め切り、解析する計画だ。
研究開始から20年が経過し、参加者の中には転居した人や、結婚などに伴って姓が変わった人もいる。同じ人の健康状態を正確に追い続けるには、定期的に連絡を取り、同一人物であることを確認する作業が欠かせないという。
一方で、公的研究費の削減に加え、物価や郵送費の上昇も重なり、公的資金や大学の予算だけで7万人を超える参加者の追跡体制を維持することが難しくなっている。
今回のクラウドファンディングは、超音波を併用する乳がん検診が死亡率の低下につながるかを確かめるため、長期追跡と解析を続ける資金を確保する取り組みだ。
死亡率を下げる効果が確認されれば、40歳代女性の乳がん検診のあり方を考える重要な科学的根拠となる。東北大学は、2033年度末を一つの目安として追跡データを集め、解析する計画だ。