研究

側わん症のX線画像、AIが最速0.1秒で自動計測 専門医の計測作業短縮に期待

日米10施設の約4600枚で開発と検証、背骨の曲がりは専門医に近い精度

側わん症のX線画像をAIが解析し、背骨の計測点や角度を自動で検出する流れを示した図。
X線画像を入力すると、AIが計測に必要なキーポイントを検出し、背骨の曲がりなどを自動計測する。(出典:大阪大学)

 側わん症の診療で必要となるX線画像の計測を、AIが最速0.1秒で自動化できることが分かった。

 大阪大学の研究グループが2026年7月に論文発表した。

1枚3~5分かかる計測をAIで自動化

側わん症の評価のため、医療者が子どもの背中の姿勢を確認している様子。
側わん症では、背骨の曲がりを診察やX線画像で継続的に確認する。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 側わん症ではCobb角など複数の項目をX線画像から測る必要があり、従来は1枚当たり約3~5分かかっていた。
  • 大阪大学などの研究グループは、正面・側面X線から背骨や骨盤などを自動認識し、必要な角度や距離を計算するAIを開発した。
  • 手術後のスクリューやフックなどの金具も自動検出でき、術前から術後の経過観察までの活用を想定している。

 側わん症は、成長期などに背骨が左右に曲がり、変形が進むことがある病気だ。診療では、X線画像を使って背骨がどの程度曲がっているかを継続的に確認する。

 代表的な指標が「Cobb角(コブ角)」で、背骨の曲がりの大きさを角度で示す。これ以外にも背骨や骨盤の傾きなど複数の項目を測る必要があり、現在はデジタル画像を使っていても、医師が一つずつ位置を指定して計測する作業が残っている。

 従来は1枚の画像を計測するのに約3~5分かかり、誰が測るかによって3~8度程度の差が生じることも課題となっていた。

 研究グループは、画像認識に使われるAIを用いて、正面と側面から撮影したX線画像から背骨、鎖骨、骨盤、大腿骨の位置を自動的に見つけ出す仕組みを開発した。そこから側わん症の診療に必要な角度や距離を自動計算する。

 さらに、手術後の画像に写る、背骨を固定するためのネジやフックなどの金具にも対応した。AIが金具の位置を認識し、本数まで自動で数えられるようにした。

 AIの開発には米国と日本の9施設から集めた4043枚の画像を使用し、それとは別に米国1施設の542枚で性能を検証した。JPGやPNG、医療現場で使われるDICOM形式の画像をドラッグ&ドロップするだけで計測できるアプリケーションも開発した。

背骨の曲がりを高精度に計測、最速0.1秒

診察室で医療者が子どもの背中に手を当て、側わん症の確認をしている様子。
側わん症の診療では、診察とX線画像の計測を組み合わせて背骨の変化を評価する。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 背骨の最も大きな曲がりを示す角度では、専門医による手動計測との差が平均2.7度に収まった。
  • 横から見た背骨の曲がりでも平均誤差は3.7度で、手術後の金具も高い精度で数えられた。
  • 計測時間は最速0.1秒まで短縮でき、診療時間の削減や計測結果のばらつき軽減につながる可能性がある。

 外部データを使って性能を確かめたところ、背骨の最も大きな曲がりを示す角度は、専門医による手動計測との差が平均2.7度に収まった。AIでも、専門医が測った場合に近い結果が得られた。

 横から見た背骨の曲がり具合では、AIと専門医の計測との差は平均3.7度だった。背骨の一つ一つに正しい番号を付ける処理でも、高い精度を示した。

 手術後の画像でも、背骨を固定するためのスクリューやフックなどの金具を高い精度で数えることができた。金具が写っている画像でも背骨の状態を計測できるため、手術前だけでなく、手術後の経過観察にも活用できる可能性がある。

 大きな特徴は処理の速さだ。従来は医師が数分かけていた計測を、AIでは1枚当たり最速0.1秒で行うことができた。

 側わん症では、成長に伴う変化を長期間にわたって確認することがある。AIで同じ基準の計測を続けられれば、経過を比較しやすくなり、複数の医療機関が参加する研究でもデータをそろえやすくなる。診療では、計測にかかる時間を減らし、その分を患者への説明や治療方針の検討に充てられることも期待される。

 今後は、横から撮影した画像や手術後の画像について、より多くの地域や施設で性能を確かめる必要がある。研究グループは、臨床現場で使いやすい形への改良を進め、実用化を目指している。

参考文献

AIが側わん症のレントゲンを0.1秒で計測(大阪大学)
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2026/20260908_1

Nakajima N, Suzuki Y, Hosozawa K, Kishimoto K, Kita K, Kanie Y, Furuya M, Shinyashiki K, Ukon Y, Takenaka S, Kaito T, Yokogawa N, Hori M, Okada S, Fujimori T. Deep learning-based automatic measurement of spinal alignment and implant detection in scoliosis radiographs. NPJ Digit Med. 2026 Jul 17. doi: 10.1038/s41746-026-03020-7. Epub ahead of print. PMID: 42469410.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42469410/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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