研究

乳がんや卵巣がんなどに加えて、新たに4種類のがんと関連

理研などが発表、BRCA1/2遺伝子が甲状腺、膀胱、頭頸部、皮膚がんとも関連を示す

BRCA1およびBRCA2遺伝子検査用の血液サンプルが入った試験管
BRCA遺伝子検査に用いられる血液サンプルのイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 乳がんや卵巣がんの発症リスクを高める遺伝子として知られてきた「BRCA1/2遺伝子」について、甲状腺がん、膀胱がん、頭頸部がん、皮膚がんの発症リスク上昇とも関連することが明らかになった。

 理化学研究所、東京大学医科学研究所、秋田大学、日本医科大学、愛知県がんセンターなどによる国際共同研究グループが、2026年4月に発表した。

乳がんや卵巣がんで知られるBRCA1/2

BRCA1およびBRCA2遺伝子の病的バリアント保持者における各種がんの累積罹患リスクを男女別に示した図
BRCA1/2遺伝子における病的バリアント保持者の85歳までの推定累積罹患リスクの概要図。黒枠は保険医療の対象となっているがん種、青枠は既報研究で新たに関連が示されたがん種、赤枠は本研究で新たに関連が示されたがん種を示す。累積罹患リスクはバイオバンク・ジャパンのデータに基づく推定値であり、個々人の発症確率を直接示すものではない。また、有意な関連が確認された組み合わせのみが記載されており、未記載のがん種や遺伝子についてリスクがないことを意味するものではない。さらに、病的バリアント非保持者の定義は研究ごとに異なる点に留意が必要。(出典:理化学研究所)

  • BRCA1/2遺伝子は、乳がんや卵巣がんに加え、前立腺がんや膵臓がんとの関連でも重要な遺伝子として知られている。
  • 病気の原因となる遺伝子配列の違いは「病的バリアント」と呼ばれ、遺伝子の働きを大きく損なうことで発症リスクに関わる。
  • 研究ではバイオバンク・ジャパンのDNAサンプルを用い、未解析だった9種のがんについて計4万2331人のデータを解析した。

 がんの発症に影響する要因には、遺伝的要因と環境的要因がある。

 環境的要因は、生活習慣や生活環境を指し、遺伝的要因は特定の遺伝子の影響を指している。遺伝的要因の代表例として、「BRCA1/2遺伝子」が知られている。

 BRCA1/2遺伝子は従来、乳がんや卵巣がんとの関連で広く知られ、さらに前立腺がんや膵臓がんとの関連でも重要な遺伝子として位置付けられてきた。

 BRCA1/2に異常がある場合、DNA修復の弱点を狙う分子標的薬「PARP阻害薬」が効きやすいことも分かっており、一部のがんでは既に保険診療の対象となっている。

 遺伝子はDNAの配列によりその機能が決まっており、個人ごとにその配列には違いがある。その違いは「バリアント」と呼ばれることがある。人の遺伝子には個人差があり、さまざまなバリアントが存在している。これらのバリアントはすべてが病気につながるわけではないが、その中には、遺伝子の働きを大きく損ない、病気の原因となるものがある。これを「病的バリアント」という。

 今回、研究グループは、BRCA1/2遺伝子に病的バリアントを持つ人では、どのがんのリスクが高まるのかを詳しく調べた。

 研究では、日本で進められている遺伝情報を集積した「バイオバンク・ジャパン」が保有するDNAサンプルを用い、未解析だった9種のがんを対象に、計4万2331人のデータを解析した。

4種類のがんで新たな関連、膀胱がんは女性で高リスク

タブレット端末に表示されたX線画像や医療データを確認している様子
医療データや画像をデジタル端末で確認する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • BRCA1の病的バリアントは甲状腺がん、BRCA2の病的バリアントは膀胱がん、頭頸部がん、皮膚がんとの有意な関連が示された。
  • 膀胱がんリスクはBRCA2の病的バリアント保持者で特に高く、女性23.6倍、男性2.4倍と男女差も有意だった。
  • 今回の結果は直ちに新たな検診や治療を推奨するものではないが、今後の検査や治療方針を考える上で重要な情報となる。

 解析の結果、BRCA1/2遺伝子が4種類のがんと関連することが明らかになった。

 具体的には、BRCA1遺伝子の病的バリアントは甲状腺がんと有意に関連。BRCA2遺伝子の病的バリアントは膀胱がん、頭頸部がん、皮膚がんと有意に関連。

 特に注目されるのが膀胱がんで、BRCA2遺伝子の病的バリアントによる膀胱がんリスクは、女性で23.6倍、男性で2.4倍と算出され、男女差にも統計学的に有意な違いが認められた。

 何歳までにどれくらいの可能性でがんを発症するかという観点から、85歳までの推定累積リスクを見ると、BRCA1の病的バリアント保持者の甲状腺がんは10.4%、BRCA2の病的バリアント保持者では膀胱がん6.4%、頭頸部がん8.2%、皮膚がん8.7%だった。膀胱がんを性別で分けると、女性12.8%、男性5.6%とされ、リスクを評価するために活用し得ることが示された。

 研究グループによれば、今回の発見に伴って新たながん検診や治療対応を推奨するものではないものの、誰に、いつ、どのような検査や治療を行うべきかを考える上で重要な情報となる可能性があるとしている。

参考文献

がんリスク遺伝子BRCA1/2と4種類のがんとの関連を同定-甲状腺・膀胱・頭頸部・皮膚がんの個別化医療の発展の可能性-(理化学研究所、東京大学医科学研究所、秋田大学、日本医科大学、愛知県がんセンター)
https://www.riken.jp/press/2026/20260415_1/index.html

Sasagawa H, Endo M, Iwasaki Y, Usui Y, Koyanagi YN, Innella G, Hadler J, Parsons MT, Numakura K, Kamatani Y, Murakami Y, Matsuo K, Matsuda K, Spurdle AB, Habuchi T, Momozawa Y. BRCA1 and BRCA2 pathogenic variants increase the risk of four less common cancer types. ESMO Open. 2026 Apr 7;11(4):106900. doi: 10.1016/j.esmoop.2026.106900. Epub ahead of print. PMID: 41950573.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41950573/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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