メラノーマ(悪性黒色腫)の早期発見に向けて、医療現場に既に蓄積されているデータをAIで活用する可能性が示された。
スウェーデンのヨーテボリ大学などの研究グループが2026年4月に発表した。
年齢や性別だけでは分からないリスク
ダーモスコピーを用いて皮膚の状態を確認する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
スウェーデンの成人約603万人を対象に、全国規模データを用いて5年以内のメラノーマ発症リスクを予測した。
年齢や性別に加え、所得や学歴、婚姻状況、出生地域、診断歴、処方薬情報など幅広い要因をAI解析に活用した。
症状が表面化する前の段階で、将来発症しやすい人を集団の中から見つけ出すことを目指した研究である。
メラノーマは欧米でこの50年ほど増加が続いているという。
こうした中で注目されるのが、症状が表面化する前のリスクをどこまで捉えられるかという視点だ。
今回の研究は、スウェーデンの全国規模のデータを使い、集団全体の中から将来の発症可能性が高い人たちを見つけ出すというものになる。
解析対象となったのは、2014年末時点でスウェーデンに居住していた18歳以上の成人603万6186人。
研究では、その後5年間にメラノーマを発症したかどうかを追跡し、年齢、性別、所得、学歴、婚姻状況、出生地域に加え、既往の診断や処方薬の情報も予測因子として用いた。
複数の解析方法により分析が行われた。
ごく少数のグループで発症確率33%
高齢者の皮膚の状態を確認する診察の様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
5年間でメラノーマを発症したのは全体の0.64%だったが、最も高リスクと判定されたごく少数の層では発症確率が約33%に達した。
ほくろ関連の診断、過去のメラノーマ歴、基底細胞がんや扁平上皮がん、日光角化症、色素異常などが強い関連因子として示された。
実用化には追加研究や倫理面の検討が必要だが、高リスク者の把握や将来のがん検診へのAI活用に役立つ可能性がある。
5年間の追跡期間中にメラノーマを発症したのは3万8582人で、全体の0.64%だった。絶対数としては少ないが、AIモデルはこのような低頻度の病気でも、発症者と非発症者を一定程度見分けることができた。
特に、最も高いリスクと判定されたごく少数の層では、5年以内の発症確率が約33%に達した。全体平均の0.64%と比べれば、きわめて濃縮された高リスク群といえる。
メラノーマの発症と強く結びついていたのは、ほくろに関する診断(色素性母斑)や、過去のメラノーマ歴、さらに基底細胞がんや扁平上皮がんといった別の皮膚がん、日光によるダメージが蓄積して生じる前がん病変の日光角化症、皮膚の色の変化を示す色素異常などであった。
ここから、皮膚に何らかの異変や腫瘍性の変化が既に見られる人では、その後のメラノーマのリスクも高い傾向が示された。
一方で、認知症の診断や、アルコール離脱症状の治療薬、不安や興奮を抑えたり眠りを促したりする鎮静薬関連の処方は、メラノーマと逆方向の関連を示した。
ただし、これはそれらがメラノーマを防ぐことを意味するわけではない。研究チームは、こうした人たちは死亡リスクが高かったり、屋外で日光を浴びる機会が少なかったりするなど、別の背景要因が影響した可能性があるとみている。
研究グループは、この手法が直ちに日常診療へ導入できる段階ではないとしている。制度設計や追加研究、倫理的な検討も必要となる。ただ、高リスクの人たちへのフォローを行うなどの対策を考える上で参考となる。今後、この研究のように、がん検診でAIが応用される場面が増えることも考えられる。