研究

マンモグラフィ画像のAI解析、将来の乳がんリスク予測に可能性

問診だけでは見えにくいリスクを画像から補える可能性、実用化には慎重な検証が必要

モニターに表示されたマンモグラフィ画像を医療者が確認している様子
マンモグラフィ画像をモニターで確認する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 マンモグラフィ画像をAIで解析する研究が進み、実用化に向けた動きが活発になっている。

 米国ワシントン大学などの研究グループが2026年3月に発表した。

AIが画像から拾う新たな手がかり、検診の精度向上に期待

マンモグラフィ装置の前で医療者が患者に説明している様子
マンモグラフィ検査前に説明を受ける様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • マンモグラフィ画像のAI解析で、将来の乳がんリスク予測の精度向上につながる可能性が示された。
  • 従来の問診や既知の危険因子だけではとらえにくい情報を、画像から直接読み取れる点が強み。
  • 個々のリスクに応じて検診間隔や追加検査を調整する、個別化検診への応用が期待される。

 今回の報告は、マンモグラフィを用いて乳がんを見つけるというものではなく、将来の乳がんのリスクを予測する力について過去の論文に基づき整理したものとなる。

 報告によれば、これまで乳がん検診では、年齢や家族歴、乳房濃度などに基づいて将来のリスクを考える方法が用いられてきた。こうした方法は自己申告に頼る部分もあり、評価する人によるばらつきも生じやすい。

 これに対し、マンモグラフィ画像をAIで解析する手法は、従来の臨床情報からリスクを判定するよりも、画像の中にある微細な特徴を踏まえたリスクの判定ができる点が強みとなり得る。

 今回報告されたのは、マンモグラフィ画像を基づき将来の乳がんリスクを予測するAI研究の現状を整理したものだ。2012年から2025年2月までの文献を調べ、41件の研究を対象に分析した。

 その結果、マンモグラフィ画像をAIで解析することで、従来の方法ではとらえにくかった情報を読み取り、将来の乳がん発症リスクをより的確に見極められる可能性が示された。

 論文でも、マンモグラフィベースのAIモデルは、従来の臨床情報中心のモデルより高い精度を示しているとされる。将来的には、個々のリスクに応じて検診間隔や追加検査を調整する、個別化検診への応用が期待される。

そのまま広く使える段階ではないとの指摘も

医師がマンモグラフィ画像フィルムを手に持ち説明している様子
マンモグラフィ画像を用いて説明する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 現時点の研究はすべて後ろ向き研究で、実際の検診にそのまま広く適用するには限界がある。
  • 対象集団や使用機器に偏りがあり、多様な受診者で同じように有効かはまだ十分に確かめられていない。
  • 実用化には、前向き研究や多様な集団・複数装置での検証など、丁寧な裏付けが必要である。

 もっとも、現時点でそのまま広く実用化できるわけではない。

 今回整理された41件の研究はすべて、過去のデータを振り返って調べた後ろ向き研究だった。使われた画像の多くは2Dマンモグラフィで、装置は特定メーカーに偏り、研究地域も米国中心であり、そのまま幅広い受診者に適用するには限界がある。人種や民族の情報が十分に示されていない研究も多く、白人の非ヒスパニック女性に偏った集団が目立った。

 今ある結果がそのまま多様な受診者や実際の検診現場に適用できるとは限らない。

 また、AIが高い成績を示しているように見えても、その一部は撮影時点ですでに画像に表れていたごく初期のがんの兆候を拾っている可能性がある。将来の新規がん発症リスクをどこまで正確に示せるのかは、なお慎重に見極める必要がある。

 さらに、AIが示したリスク値が実際の発症率とどの程度一致するかを検証した研究は少なかった。

 医療現場で追加検査や検診間隔の変更に使うには、見つける力だけでなく、AI解析により示されたリスクの妥当性を検証することも欠かせない。

 著者らは、多様な集団や複数の装置での検証、進行がんや悪性度の高いがんへの予測性能の評価、そして前向き研究が必要だと指摘している。

 マンモグラフィとAIの組み合わせは、乳がん検診をより個別化し、高リスク者を見極める手法として期待される一方、実装にはなお丁寧な検証の積み重ねが求められる。

参考文献

Current state of mammography-based artificial intelligence for future breast cancer risk prediction: a systematic review(JNCI: Journal of the National Cancer Institute)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41501990/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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