研究

50歳未満の乳がんリスク評価、家族歴中心の基準で把握できた発症者は4.4%

英国の女性1258人を対象にNICE基準とBOADICEAを10年間で比較

3世代の女性が並んで笑顔を見せている。
乳がんリスク評価では、親族の乳がん経験である家族歴が参考にされるが、それだけでは将来のリスクを十分に把握できない可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 50歳未満の女性で乳がんになる危険性が高い人を見つけるには、親族に乳がんを経験した人がいるという家族歴だけでは十分ではない可能性が示された。

 英ケンブリッジ大学とロンドンのがん研究所などの研究チームが、現在英国で使われている基準と、遺伝情報や生活習慣などを組み合わせた乳がんリスク評価を比較した。

乳がんを発症した人の73%に家族歴なし

胸に手を当てている女性の上半身。
乳がんを発症した50歳未満の女性の多くに家族歴がなく、家族歴だけでは高リスクの人を見つけにくい可能性が示された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 英国の50歳未満の女性1258人を対象に、現在の基準と詳しい乳がんリスク評価を比較した。
  • 現在のNICE基準で、その後10年以内に乳がんを発症した女性のうち事前に把握できたのは4.4%だった。
  • 乳がんを発症した女性の73%には家族歴がなく、家族歴中心の基準では高リスクの人を見逃す可能性が示された。

 乳がんになりやすい人を早い段階で見つけることができれば、通常より詳しい検診を受けたり、予防について相談したりすることにつながる。

 英国では現在、50歳未満の女性について、主に乳がんの家族歴を基準として、かかりつけ医が専門的なリスク評価へ紹介するかを判断している。

 研究チームは、この方法で将来乳がんを発症する女性をどの程度事前に把握できるのかを調べた。

 対象となったのは、英国の長期研究に参加した50歳未満の女性1258人。その後10年間に乳がんを発症した人について、現在の英国の基準と、「ボウディシーア(BOADICEA、Breast and Ovarian Analysis of Disease Incidence and Carrier Estimation Algorithm)」と呼ばれる詳しいリスク評価の方法を比べた。

 ボウディシーアは、乳がんの家族歴だけでなく、生活習慣、妊娠や出産などの履歴、遺伝情報などを組み合わせ、将来の乳がんリスクを計算する仕組みだ。

 現在のNICE(英国国立医療技術評価機構)基準では、専門的な評価の対象になるのは50歳未満の女性全体の1.4%だった。その中に、その後10年以内に乳がんを発症した女性の4.4%が含まれていた。

 一方、ボウディシーアを全員に使った場合、26.5%が平均より乳がんリスクが高いと判定され、その後10年以内に乳がんを発症した女性の34.8%を把握できた。

 研究チームによると、発症した女性を把握できる割合は、現在の基準のおよそ8倍となる。

 大きな違いが出た理由の一つが家族歴だ。10年以内に乳がんを発症した50歳未満の女性の73%には、乳がんの家族歴がなかった。

家族歴だけでなく、複数の情報からリスクを考える方向へ

明るい室内で窓を開ける女性。
50歳未満の女性の乳がんリスク評価では、家族歴だけでなく、生活習慣や妊娠・出産歴、遺伝情報など複数の情報を組み合わせる方法が検討されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 家族歴に加え、生活習慣や妊娠・出産歴、遺伝情報などを組み合わせることで、乳がんリスクをより詳しく評価できる可能性がある。
  • ボウディシーアでは、その後10年以内に乳がんを発症した女性の34.8%を事前に把握でき、現在の基準を大きく上回った。
  • 詳しい評価を広く導入するには、遺伝子検査の費用や人員、医療体制などを含めた検討が必要となる。

 今回の結果は、乳がんの家族歴がなくても、将来的な乳がんリスクが高い女性が少なくないことを示している。

 家族歴だけで判断するのではなく、生活習慣や妊娠・出産歴、遺伝的な特徴など、複数の情報を組み合わせれば、これまで見つけにくかった人を早い段階で把握できる可能性がある。

 リスクが高いと分かれば、より詳しい検診や予防について相談するなど、その人に合わせた対応を検討しやすくなる。

 一方で、詳しいリスク評価を50歳未満のすべての女性に行えば、専門的な評価を受ける人も大幅に増える。今回の研究では、約4人に1人が平均より高いリスクと判定される計算になった。

 研究チームは、遺伝子検査を含む詳しい評価には費用や人員が必要になるため、どのような方法なら安全で公平に導入できるかを今後検討する必要があるとしている。

 別に行われた調査では、30~49歳の女性から、家族歴について自分から相談するのを待つのではなく、医療側から乳がんリスク評価の機会を案内する方法を支持する声も多かった。

 将来乳がんになりやすい人を事前に見つけ、その人に合った検診や予防につなげる方法を、どのように実際の医療に取り入れるかが今後の課題となる。

参考文献

NICE referral criteria miss up to 95% of women under 50 who go on to develop breast cancer within 10 years(University of Cambridge)
https://www.cam.ac.uk/research/news/nice-referral-criteria-miss-up-to-95-of-women-under-50-who-go-on-to-develop-breast-cancer-within-10

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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