研究

HPVワクチン世代、子宮頸がん検診は減らせる?

危険な病変が増えたと見なされず、フィンランドの比較試験が示す

腕にワクチン注射を受けている女性
腕にワクチン接種を行う様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 HPVワクチンの普及に伴い、子宮頸がんの検診の頻度を減らせる可能性が示されている。

フィンランドの研究グループが2025年11月に発表したものだ。

ワクチン普及で変わる?

HPVと表示された注射器のクローズアップ
HPVワクチンの注射器。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • HPVワクチンの普及で、子宮頸がん予防の前提となる感染リスクの構造が変わってきた。
  • 研究では、若年時にワクチン接種した女性を高頻度検診群と低頻度検診群に分けて追跡した。
  • 接種世代で検診回数を減らしても予防効果を損なわないかが検証の焦点となった。

 子宮頸がん予防は、長らく細胞診やHPV検査による定期的なスクリーニングを柱としてきた。

 一方で、HPVワクチンの導入により、がん化リスクが特に高いHPV16型と18型の感染は接種世代で大きく減っている。この変化は、ワクチン導入前を前提にした検診の体制をそのまま保つべきかという問題につながっている。

 今回、研究グループは、2007~2010年に12~15歳でHPV16型と18型のワクチンを3回接種した女性5626人を対象に、22歳時点で「高頻度に検診を受けるグループ」と「低頻度に検診を受けるグループ」に割り付け、22歳、25歳、28歳の時点の状況を確かめる追跡調査を行った。

 高頻度グループでは、毎回の検診時に子宮頸部の細胞を調べる細胞診の結果をすべて本人に通知し、低頻度グループでは、がんに近いと判断される高度病変が疑われる場合を除いて、軽度な異常は6年間開示せず、追加の対応は取らない方針とした。

 併せて、18歳で接種した女性を「安全性を評価するグループ」として、接種時期の違いによるHPV感染状況も比べた。

 研究の狙いは、クチン接種世代で検診頻度を下げても、がんにつながる恐れのある病変の予防効果を損なわないかを確かめることだ。

 検診は、がんやがんにつながる恐れのある病変を防ぐためのものだが、検査の頻度が高すぎる場合には、不必要な精密検査や治療につながる恐れもある。HPVワクチンの普及した今、その利益と不利益のバランスを改めて問い直すことになる。

がんにつながる恐れのある病変は両グループで同程度

HPVワクチンのバイアルに注射針を刺している様子
HPVワクチンのバイアルから薬液を吸引する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • CIN2以上の発生率は高頻度群0.70%、低頻度群0.66%で、実質的な差はなかった。
  • 接種世代ではHPV16型と18型が大幅に減少し、高度異常からも検出されなかった。
  • 従来通りの高頻度検診より、リスクに応じて間隔を延ばす見直しが合理的な可能性がある。

 結果を見ると、22~28歳の追跡期間における、がんの手前の状態である「CIN2」以上の発生は、高頻度検診グループで0.70%、低頻度検診グループで0.66%であり、実質的な差は見られなかった。検診回数を抑えたグループでも、通常より多く検診を受けたグループと比べて、がんにつながる恐れのある異常が増えた様子はなかった。

 今回の結果は、HPVワクチン接種世代では、従来ほど頻繁に検診しなくても安全性を大きく損なわない可能性を示している。

 特に重要なのは、ワクチンが主に防ぐHPV16型と18型の感染が、接種した人たちで大きく減っていたことだ。12~15歳で接種したグループでは、18歳で接種したグループより、こうしたタイプのHPVが28歳時点までに大幅に減った。さらに、追跡中に見つかった高度の異常では、HPV16型と18型は確認されなかった。

 ワクチンは狙ったタイプのHPVをしっかり減らしており、それが検診回数を見直せる可能性につながっていた。

 一方で、HPV51型や52型などの非ワクチン型の高リスクHPVはなお一定程度見られた。

 しかし研究チームは、これらの型は一般にHPV16型や18型より発がん性が低く、軽度異常や境界病変を多く拾い上げても、必ずしも将来のがん予防利益に直結しない可能性があると指摘している。

 接種世代では従来通りの高頻度検診を続けるよりも、即時のがんにつながる恐れの高い病変に焦点を絞った、より間隔の長い検診のほうが合理的である可能性があると見られた。

 今回の研究は、HPVワクチン接種女性において、検診の「多さ」そのものが安全性や有効性を保証するわけではないことを示した点で意義が大きい。

 ワクチンによってリスク構造が変化した集団には、それに見合った検診の方法が求められている可能性がある。過剰診断や過剰治療の抑制、医療資源の適正配分、受診者負担の軽減という観点から、接種世代向けの子宮頸がん検診を再び考え直し、より良くするための検討材料となる研究になる。

参考文献

Ortega Llobet M, Gray P, Baussano I, Elfström KM, Eriksson T, Lagheden C, Nieminen P, Söderlund-Strand A, Dillner J, Pimenoff VN, Lehtinen M. Controlled trial of cervical cancer screening frequency among human-papillomavirus-vaccinated women. Int J Cancer. 2026 Apr 1;158(7):1941-1951. doi: 10.1002/ijc.70229. Epub 2025 Nov 7. PMID: 41203578; PMCID: PMC12875181.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41203578/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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