研究

50歳未満の大腸がんと子宮体がんで発症や死亡が増加

国立がん研究センターなど国際研究グループが44の国と地域を分析

患者の周囲に、肺、脳、心臓、肝臓、胃、腸などの臓器アイコンが配置されたイラスト。
さまざまな臓器に関わる疾患や検査を示す。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 20歳以上50歳未満で発症するがんが、世界の多くの国や地域で増えていることが示された。

 国立がん研究センターを中心とする国際共同研究チームが、世界44の国と地域のデータを分析し、2025年11月に発表した。

20歳以上50歳未満のがんを世界規模で分析

地球の周囲に、がん啓発を象徴する複数の色のリボンが並ぶ画像。
地球の周囲に配置された、がん啓発を象徴するリボン。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 国立がん研究センターを中心とする国際共同研究チームが、日本を含む世界44の国と地域のデータを分析した。
  • 20歳以上50歳未満で発症したがんを「若年発症がん」として、50歳以上のがんと比較した。
  • 大腸がんと子宮体がんでは、複数の国で罹患率だけでなく死亡率も増えていた。

 論文によれば、若い世代でがんが増えている可能性が各国で報告されている。

 この増加の背景はよく分かっていない。がんの発見数は、がん登録の精度や検診、画像診断の普及によっても増えることがある。

 そこで今回の研究では、若年発症がんの増加が高齢発症がんと比べてどのように異なるのか、死亡率にも変化があるのかが分析された。

 研究では、2000年から2017年までに診断されたがんについて、20歳以上50歳未満で発症したがんを「若年発症がん」、50歳以上で発症したがんを「高齢発症がん」として比較した。日本を含む世界44の国と地域のがん罹患データと、WHOの死亡率データなどが用いられた。

 その結果、女性では甲状腺がん、乳がん、子宮体がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、膵臓がんなど、男性では甲状腺がん、腎臓がん、精巣がん、前立腺がん、大腸がんなどで、若年層の罹患率が多くの国や地域で増えていた。

 特に注目されるのは、大腸がんと子宮体がんである。これらは、複数の国で罹患率だけでなく死亡率も増えていた。

 大腸がんでは、カナダ、米国、英国などで若年層の罹患率と死亡率がともに上昇していた。子宮体がんでは、日本、韓国、エクアドル、米国、英国で、同じように罹患率と死亡率の上昇が見られた。

大腸がんや子宮体がんは早期発見が課題に

青空の下、緑の木々に囲まれた都市部の高層ビル。
青空の下に建つ都市部の高層ビル。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 日本では、若年発症の子宮体がんの罹患率が、高齢発症がんよりも顕著に増えていた。
  • 若年発症がんの増加には、肥満や食生活、運動不足、糖尿病、環境要因などが関係する可能性がある。
  • 予防や早期発見、医療や支援の向上に向けて、生活習慣や環境要因との関連を調べる研究が進められる。

 今回の研究では、日本で若年発症の子宮体がんの罹患率が、高齢発症がんよりも顕著に増えていたことも示された。

 大腸がんについても、若年発症の増加は複数の国で確認された。

 若年発症がんが増えている理由は、一つに絞られていない。研究チームは、肥満との関連にも注目した。肥満率が高い国や地域では、肥満と関連する若年発症がんの罹患率も上昇しており、肥満と若年発症がんの関連が示唆された。

 ただし、肥満だけで説明できるわけではない。食生活、運動不足、糖尿病、環境要因、若い頃からの生活習慣、検診や診断技術の変化など、複数の要因が関係している可能性がある。

 国立がん研究センターは今後、大規模コホート研究や、がん組織の詳しい解析、生活習慣や環境要因との関連を調べる研究を進めるとしている。若年発症がんの増加は、世界的な課題として、予防、早期発見、医療や支援の向上につながる可能性がある。

参考文献

若年大腸がんと子宮体がんの罹患・死亡の増加を確認 若年発症がんの病態解明の基盤となる国際共同研究成果(国立がん研究センター)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/1225/index.html

Terashima M, Nakayama K, Shirai S, Ugai S, Lee HY, Matsui H, Mizuno H, Tanaka S, Song M, Sasamoto N, Kawachi I, Giovannucci EL, Ugai T. Diverging global incidence trends of early-onset cancers: comparisons with incidence trends of later-onset cancers and mortality trends of early-onset cancers. Mil Med Res. 2025 Nov 14;12(1):79. doi: 10.1186/s40779-025-00670-8. PMID: 41239501; PMCID: PMC12616995.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41239501/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

ARCHIVE

新着記事

胸部X線画像を表示したモニターを前に、医師が診断AIの解析画面を確認している様子。
画像診断AIは、胸部X線やCT、MRIなどの検査画像から異常が疑われる症例を拾い上げ、医師の読影を支援する。画像はイメージ。

診断AIは「導入して終わり」ではない、マウントサイナイなど米12医療グループが検証へ

画像検査が増える一方で、診断する医師の負担も重くなる。こうした課題に対し、AIを各医療機関が個別に導入するだけでなく、複数の大規模医療グループが共同で効果や…

医師らが、人体の血管や骨格を映したデジタル画像を見ながら解析している。
AIと血液中の多様な生体情報を組み合わせることで、循環器病のリスクをより詳しく評価できる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

心臓や血管の病気6種類、血液中のタンパク質などをAI解析しリスク予測を改善

- 従来の循環器病のリスク予測は、年齢や血圧などが中心で、一人ひとりの変化を十分に捉えにくい課題。 - AIで血液中の2920種類のタンパク質と168種類の…

農地と集落が広がる田園地帯の風景。
農薬への曝露は、農地周辺の地域環境や住民の健康リスクを考える上でも重要になる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

住む地域の環境とがんリスクに関連、複数の農薬の影響を受けやすい地域で平均150%高く

農業で使われる複数の農薬への環境曝露が多い地域では、がんの発症リスクも高い可能性があることが、ペルー全国を対象とした研究で示された。フランスのパスツール研究…

室内で電子たばこを手に持ち、口元に近づけている人。
電子たばこ使用では、DNA損傷や酸化ストレス、口や呼吸器の炎症など、がんにつながり得る変化が報告されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

電子たばこ、肺がんや口腔がんを引き起こす可能性

電子たばこは、肺がんや口腔がんを引き起こす可能性が高い――。世界各地で行われた研究を幅広く検討した結果から、こうした結論が示された。オーストラリアのニューサ…

関連する病気から探す

カテゴリーから探す

あなたの立場から探す

あなたの関心から探す