乳がん検診「高濃度乳房」の通知、国と学会が標準化へ
2026年夏を目途に自治体向け説明資材を整備

高濃度乳房(デンスブレスト)を含む「乳房構成」の通知をめぐり、国と学会による自治体支援の枠組みづくりが動き出した。
厚生労働省の第46回「がん検診のあり方に関する検討会」(2026年3月23日)では、高濃度乳房を含む「乳房構成」の通知に向けて、自治体向けの説明資材や「QA集」を整備する方向性が示された。
「通知は時期尚早」から「体制整備の上で通知」へ

- 乳がん検診関係3団体は、高濃度乳房を含む乳房構成について、国や学会が連携して情報提供体制を整えた上で通知するのが望ましいと見解を示した。
- 通知体制とは、乳房構成が病気ではなく体質的特徴であることや、検診の限界、追加検査の利益・不利益を受診者が理解できる環境を整えることを指す。
- 研究班の蓄積により、QA集作成や判定アトラス整備、自治体での通知試行などが進み、高濃度乳房の実態や検診指標も見えるようになってきた。
背景にあるのは、乳がん検診に関わる3団体の見解の変化だ。
日本乳癌検診学会、日本乳癌学会、日本乳がん検診精度管理中央機構は、2026年3月19日付の見解で、高濃度乳房を含む乳房構成について「国及び学会等が連携して、各自治体における情報提供体制を整えた上で、受診者に通知されることが望ましい」と明記した。
3団体見解が重視したのは、通知の有無そのものより、受診者にどう伝えるかという点だ。
見解では、「通知体制が整っている」とは、自治体が受診者に対し、乳房構成が病気ではなく体質的な特徴であること、マンモグラフィ検診の限界、追加検査の利益と不利益、自覚症状が生じた場合の対応を分かりやすく伝え、情報に基づいて意思決定できる環境が確保されていることを意味すると整理した。
また、自治体ごとに個別に体制を整えるのではなく、国が主体となって既存のQA集などを基盤に、全国で活用できる情報提供資材を作成することが重要だとしている。
こうした3団体見解の背景には、2017年の3団体提言を受けて進められてきた研究班の蓄積がある。
笠原善郎氏が今回の検討会で示したところによると、その後の研究では、受診者向けQA集の作成、乳房構成判定アトラスの整備、全国集計システムの構築、自治体での通知試行、説明パンフレットの作成、通知時の留意事項の整理などが進められてきた。
こうした成果により、高濃度乳房の頻度や乳房構成別の指標も見えるようになってきた。2020年度分の全国集計では、高濃度乳房の割合は40~49歳で65.5%、50~59歳で48.2%、60~69歳で34.9%、全体で46.9%だった。さらに、乳房の構成によって検診結果に違いが出ることも分かってきた。高濃度乳房では「要精密検査」とされる人がやや多い一方で、要精密検査となった人のうち実際に乳がんが見つかる割合はやや低かった。
通知を拡大するには課題も

- 今回の議論は、全国一律通知の是非から、説明内容や質を標準化しながら通知を進める段階へと移ってきた。
- 通知では4分類で伝えることや、追加検査を一律に勧めるのではなく、まずブレスト・アウェアネスを重視することが整理された。
- 一方で、自治体ごとの対応格差や、通知を望まない人への配慮、通知後の不安への対応など、実施拡大にはなお課題が残っている。
2017年時点の厚労省の検討会では、全国一律の通知は時期尚早とされていたが、その後の研究や試行の積み重ねを踏まえ、今回の検討会では、一定の条件の下で通知を進める方向に整理された。
通知を進めるなら丁寧な説明が欠かせないということも分かってきた。今回のポイントは、単に通知を進めることではなく、説明の内容や質を全国で標準化する点にある。3団体は、乳房構成が「疾患ではなく体質的特徴」であることや、マンモグラフィの限界、追加検査の利益と不利益などを適切に伝える必要があると整理している。
通知の方法についても、単純に「高濃度か否か」の2分類で伝えるのではなく、「脂肪性」「乳腺散在」「不均一高濃度」「極めて高濃度」の4分類で通知することが適切だとした。
高濃度乳房であることを知らされた場合でも、一律に追加検査を受ける必要があるわけではなく、まずは日常生活の中で乳房の変化に気づくブレスト・アウェアネスの重要性を強調することが基本だとしている。
通知を拡大するには課題も残る。
大きいのは、自治体によって対応に差があることだ。厚労省の調査では、乳房構成を通知している、または一部対象者に通知している自治体は全体の21%にとどまった。通知を行っていても、その後にどのような説明を行い、相談にどう応じるかという体制は自治体ごとに差があり、十分な情報提供までできていないケースもある。
受診者の受け止め方にも差がある。福井県で行われた通知の試行では、乳房構成の通知を希望した人は全体の81%で、裏を返せば約2割は通知を希望しなかった。通知を進める際には、「知る権利」だけでなく、「知りたくない権利」にも配慮し、事前に希望の有無を確認することが必要になる。
さらに、通知後の反応を見ると、高濃度乳房とされた人ほど不安を感じやすい傾向があり、特に「極めて高濃度」や「不均一高濃度」とされた人では、不安を訴える割合が高かった。通知するだけで終わらせず、その意味を丁寧に説明し、相談先を示す体制が欠かせない。
通知後の追加検査を実施可能か

- 高濃度乳房の通知が広がると、超音波など追加検査を希望する受診者が増える可能性がある。
- ただし、超音波検査は死亡率低下の効果が十分に確立しておらず、偽陽性や過剰診断といった不利益もある。
- 追加検査の精度管理や実施体制には地域差があり、通知後の受け皿や質の確保まで含めて制度設計する必要がある。
通知が広がれば、通知後に希望される追加検査にも影響が及ぶ。
高濃度乳房ではマンモグラフィで病変が見つかりにくくなるため、超音波検査を受けたいと考える人が増える可能性がある。ただ、超音波検査については、死亡率を下げる効果が十分に確認されたとは言えず、偽陽性や過剰診断といった不利益も指摘されている。
しかも、こうした追加検査をどこでも同じ水準で提供できるわけではない。検査の精度管理や実施体制には地域差があり、希望者が増えたとしても、追加検査の増加が直ちに質の高い医療につながるとは限らない。通知を進めるのであれば、追加検査の受け皿や質の確保もあわせて考える必要がある。
今回の検討会で示されたのは、高濃度乳房の通知を巡る議論が、「通知の是非」から、「実施するなら何をどう伝え、受診者をどう支えるか」という段階に進んだことだ。国と学会が連携して説明資材やQA集を整備し、自治体の情報提供を標準化しようとしている点は前進といえる。一方で、受診者の理解をどう支えるか、通知後の不安にどう対応するか、追加検査の質や地域差をどう埋めるかといった課題はなお大きい。
PREVONOで既に報じたJ-STARTの長期追跡では、40代でマンモグラフィに超音波を併用した検診が進行乳がんの抑制につながる可能性も示されている。高濃度乳房を巡る議論は、通知の問題に加えて、その後にどのような検診や支援体制を整備するかという動きにつながる可能性がある。
参考文献
第46回がん検診のあり方に関する検討会(開催案内)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71654.html
大腸がん検診の便潜血検査、採便2回から1回に変更へ(PREVONO)
https://prevono.net/japan/1115/
40代乳がん検診で「マンモ+超音波」併用が進行がんを抑制 7万人RCTを15年追跡、リスク17%低下
https://prevono.net/research/612/
この記事の執筆者
星良孝
PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。





