研究

高血圧の原因「原発性アルドステロン症」、ホルモンは夜に繰り返し急増

患者60人を20分ごとに測定し、1回の採血では捉えにくい副腎ステロイドの変動を確認

医療従事者が血圧計の使い方を指差して説明している様子。
医療従事者が血圧測定について説明する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 高血圧の原因となる「原発性アルドステロン症」では、アルドステロンなどの副腎ステロイドが常に高いのではなく、夜間を中心に繰り返し急増することが分かった。

 英マンチェスター大学やブリストル大学などの国際研究グループが2026年8月に論文で報告した。

高血圧患者の5~20%に見られるとされる病気

左右の腎臓と副腎の位置を示した日本語ラベル付きの解剖イラスト。
腎臓の上にある副腎は、血圧調整に関わるアルドステロンなどのホルモンを分泌する。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 原発性アルドステロン症は高血圧患者の5~20%に見られるとされ、現在の検査では見逃されることもある。
  • 研究グループは患者60人を対象に、携帯型装置を使って24時間、20分ごとに副腎ステロイドの変化を測定した。
  • 1回の採血では捉えにくい時間によるホルモン変動を詳しく調べ、診断上の課題を検証した。

 原発性アルドステロン症は、副腎から分泌される「アルドステロン」というホルモンが過剰になる病気だ。アルドステロンは体内の塩分や水分のバランスを調整しており、過剰になると高血圧につながる。

 論文によると、原発性アルドステロン症は高血圧のある人の5~20%に見られるとされる。特定の原因が明らかでない「本態性高血圧」と比べ、心血管疾患や代謝に関わる病気のリスクが高い一方、現在の検査では見逃されることもあるという。

 その理由の一つとして研究グループが注目したのが、ホルモンの量が一日の中で変化することだ。現在の検査では特定の時間に採血してアルドステロンなどを調べるが、採血したタイミングでホルモン値が低ければ、病気の特徴を十分に捉えられない可能性がある。

 そこで研究グループは、原発性アルドステロン症と診断された60人を対象に、携帯できる装置を使って24時間にわたりホルモンの変化を調べた。患者は日常生活を送りながら装置を身につけ、睡眠中も含めて20分ごとに測定した。

 調べたのは、アルドステロンを含む3種類の副腎ステロイドで、「18-ヒドロキシコルチゾール」と「18-オキソコルチゾール」も測定した。

夜間に繰り返す「ホルモンの急増」を確認

人体の背面側から見た腎臓と副腎の3Dイメージ。
原発性アルドステロン症では、副腎から分泌されるアルドステロンの過剰が高血圧につながる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • アルドステロンなどは常に高いのではなく、夜間を中心に繰り返し大きく増える特徴が確認された。
  • こうした変化は片側の副腎に原因がある患者で特に目立ち、病変を手術で取り除くと正常化した。
  • ホルモンの時間的な変化を追うことで、1回の採血では見逃される異常を捉え、将来の診断改善につながる可能性がある。

 その結果、原発性アルドステロン症では、アルドステロンや関連するホルモンが一日中高い状態を保っているのではなく、夜間を中心に繰り返し大きく増える特徴が確認された。一方で、一日の中でホルモン量が変わる基本的なリズムそのものは保たれていた。

 こうした変化は、両側の副腎ではなく、片側の副腎に病気の原因がある患者で特に目立った。また、病変のある副腎を手術で取り除いた後には、異常なホルモンの変化が正常化した。

 マンチェスター大学の発表では、重症例であっても、測定する時間によってはアルドステロン値が診断に使われる基準を下回ることがあったとしている。このため、ある時点の採血だけでは、原発性アルドステロン症に特徴的なホルモンの異常を捉えにくい場合がある。

 今回の研究は60人を対象とした実証段階の研究で、24時間測定がそのまま新しい診断法として使えることを示したものではない。ただ、ホルモンを一度だけ測るのではなく、時間による変化を追うことで、これまで見逃されてきた特徴を捉えられる可能性が示された。

 研究グループは、高血圧の背景にある原発性アルドステロン症をより早く見つけ、適切な治療につなげることで、心臓病や脳卒中などの予防にもつながる可能性があるとしている。

参考文献

Hidden hormone spikes may reveal high blood pressure condition, study shows(The University of Manchester)
https://www.manchester.ac.uk/about/news/hidden-hormone-spikes-may-reveal-high-blood-pressure-condition-study-shows/

Grytaas MA, Upton T, Marinelli I, Methlie P, Øksnes M, Vassiliadi DA, Bensing S, Russell G, Løvås K, Margaritopoulos D, Botusan IR, Simunkova K, Balomenaki M, Berinder K, Lombard B, Sjøgren T, Løvik I, Oftedal BE, Heie A, Ueland GÅ, Kämpe O, Tsagarakis S, Lightman SL, Zavala E, Husebye ES. Tissue corticosteroid rhythms are dysregulated predominantly during sleep in primary aldosteronism. Sci Transl Med. 2026 Aug 26;18(864):eaeb7517. doi: 10.1126/scitranslmed.aeb7517. Epub 2026 Aug 26. PMID: 42647593.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42647593/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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