WHO(世界保健機関)は2026年2月27日、デンマークがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)および梅毒の母子感染排除(EMTCT、Elimination of Mother-to-Child Transmission)を達成したと認証した。
欧州連合(EU)加盟国としては初めてとなる。
2021年から2024年にかけ、感染率や妊婦を対象にした検査や治療の実施率など、WHOが定める基準を満たしたことが確認された。
基準を継続的に達成
デンマークの港町の風景。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- WHOのEMTCTは、妊婦の高い検査・治療率を維持しつつ新生児感染を極めて低水準に抑え続けることを求める認証制度。
- 妊婦の95%以上が検査と必要な治療を受け、出生10万人あたり50件未満に感染を抑えることが基準。
- デンマークはこれらの指標を複数年にわたり達成し、EU加盟国で初の認証を受けた。
WHOのEMTCTとは、単に感染例が一時的にゼロになることではなく、妊婦を対象とした検査と治療率を高く保ちながら、新生児感染を極めて低い水準に抑え続けることを指している。
WHO欧州地域事務局によると、「排除」と認められるには、少なくとも妊婦の95%以上が検査と必要な治療を受け、新生児の感染数を出生10万人あたり50件未満に維持することが求められる。
今回の発表によると、デンマークはこれらの指標を複数年にわたり達成した。
同国では妊娠中のHIVと梅毒検査が体系的に組み込まれ、感染が確認された場合は速やかに治療が行われる。平等に医療へアクセスできる仕組み、質の高い周産期医療、強固な検査体制とデータ管理システムが成果を支えたとWHOは指摘している。
WHOのテドロス事務局長は「強い政治的意思と継続的な投資があれば、すべての妊婦と新生児を守ることができる」と述べ、デンマークの取り組みを評価した。
デンマークが認証済み22カ国・地域に加わる
母親と幼い子どもが自宅で過ごす様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 同国では妊娠中のHIV・梅毒検査と迅速な治療が体系化され、母子感染はゼロ水準を維持。
- 平等な医療アクセス、質の高い周産期医療、強固な検査・データ管理体制が成果を支えた。
- 世界では22の国・地域が認証済み。デンマークはB型肝炎を含む「トリプル排除」にも取り組んでいる。
デンマークでは現在、約5950人のHIV感染者がおり、妊婦の感染率は0.1%未満と低い。定期検査と適切な治療の徹底で、母子感染はゼロに抑えられている。母子感染により子どもに発生する先天梅毒も体系的な妊婦健診によりまれな状況にある。2024年に報告された梅毒感染は626件で、その多くは男性だった。
一方、慢性B型肝炎の有病率は0.2~0.3%と推定され、主に流行地域からの移住者にみられる。WHOは、デンマークがB型肝炎を加えた「トリプル排除」に向けた認証プロセスを進めていることも明らかにした。
WHOによると、デンマークは今回の認証により、母子感染排除を既に達成した22の国・地域に加わると説明している。アジアでは、スリランカとタイが含まれているが、日本は含まれていない。
日本でもHIV、梅毒、B型肝炎はいずれも母子感染対策が行われているが、引き続き予防の取り組みは重要といえる。