世界

乳がん検診、AIを「2人目の読影」に活用 スウェーデン・ストックホルム全域へ導入拡大

マンモグラフィーの二重読影にAIを組み込み、3医療機関で地域規模の運用へ

スウェーデン・ストックホルムの水辺に広がる市街地と教会の尖塔。
乳がん検診へのAI導入が広がるスウェーデン・ストックホルム。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 乳がん検診で撮影するマンモグラフィーをAIが解析し、医師の判定を支援する仕組みが、スウェーデンのストックホルム地域全体に広がる。

 AI開発企業のルニット(Lunit)が2026年9月に発表した。

乳がん検診、AIを「2人目の読影者」として活用

マンモグラフィ検査装置の前で、医療従事者から説明を受けながら検査を受ける女性のイラスト。
乳房を撮影して乳がんの早期発見につなげるマンモグラフィ検査。画像はイメージ。(画像:Adobe Stock)
  • ストックホルム地域では、マンモグラフィーを解析する「Lunit INSIGHT MMG」を乳がん検診に導入する。
  • AIを独立した「2人目の読影者」として活用し、医師による画像判定を支援する。
  • 3施設で展開し、全面運用後は年間20万~25万件のマンモグラフィー検査を支援する見込みとされる。

 マンモグラフィーは、乳房をX線で撮影して乳がんの兆候を調べる検査。乳がん検診では、画像を複数の医師が確認する「二重読影」が行われることがある。

 今回導入される「ルニット・インサイト・MMG(Lunit INSIGHT MMG)」は、マンモグラフィー画像をAIで解析し、がんが疑われる部分を見つけるのを支援する。ストックホルム地域では、AIを独立した「2人目の読影者」として使う。

 導入先は、カピオ・セント・ヨーラン病院やカロリンスカ大学病院などの3つの施設。医療画像システムを手掛けるセクトラ(Sectra)と連携して導入を進め、全面運用後は年間20万~25万件のマンモグラフィー検査を支援する見込みだという。

 ストックホルムでの展開は、同国ダーラナ地域に続き、ルニットにとってスウェーデンで2例目となる地域規模の導入だ。

先行導入ではがん検出が15%増、読影時間は36%超短縮

医療従事者が、モニターに表示された乳房の画像検査結果を確認している様子。
乳房の画像検査結果を確認する医療従事者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 先行導入した病院では、約3年間でおよそ20万件の検査をAIが支援してきた。
  • 開発元によると、1年間の実運用データではがん検出数が15%増え、読影時間は36%以上短縮した。
  • 今回の取り組みは、単一施設での運用から地域全体へAI活用を広げるもので、検診の効率化につながるかが注目される。

 ストックホルムでの拡大には、カピオ・セント・ヨーラン病院で積み重ねてきた検証と実際の運用経験がある。

 ルニットによると、同病院ではまず5万5000人を超える女性を対象に「スクリーントラストCAD(ScreenTrustCAD)」という前向き研究を実施し、実際の乳がん検診の中でAIの性能を評価した。その後、2023年から通常の乳がん検診に導入され、約3年間でおよそ20万件の検査を支援してきた。

 同社は、2024年の北米放射線学会で発表した1年間の実運用データについて、がんの検出数が15%増え、放射線科医の読影時間が36%以上短縮したとしている。

 今回の発表は、新たな臨床試験の結果ではなく、これまで単一施設で使われてきたAIを地域全体へ広げる取り組みだ。乳がん検診では多くの画像を継続して確認する必要があり、AIを読影の一部に組み込むことで、読影時間の短縮や検診の効率化につながるかが注目される。

 ルニットは、ストックホルムでの導入を、研究段階から実際の診療、さらに地域全体での運用へ進んだ事例と位置づけている。

参考文献

Lunit Expands AI-Powered Breast Cancer Screening Across the Stockholm Region(Lunit)
https://www.lunit.io/en/media-hub/lunit-expands-ai-powered-breast-cancer-screening-across-the-stockholm-region/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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