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ピロリ菌感染率の低下で胃がん検診に転換期 感染歴に応じてリスクを見極める研究が進む

除菌後にも胃がんリスク、血液検査や内視鏡、AI活用に期待 第64回日本癌治療学会学術集会

第64回日本癌治療学会学術集会の会場に設置された「JSCO2026」の大型ロゴ。背景には大会名と大会テーマが表示されている。
第64回日本癌治療学会学術集会の会場に設置された「JSCO2026」のロゴ。2026年10月22~24日に神戸市で開催された。(写真:編集部)

 ピロリ菌の感染率が低下する中で、胃がん検診のあり方を見直そうとする研究が進んでいる。今後は、ピロリ菌に感染したことがあるか、胃の粘膜にどの程度変化があるかなどを踏まえ、一人ひとりの胃がんリスクに応じた検診を行うことが期待されている。

 2026年10月22日、神戸市で開幕した第64回日本癌治療学会学術集会では、東京大学医学部附属病院予防医学センター長・病院教授の山道信毅氏が、胃がん検診を取り巻く環境の変化と今後の方向性について講演した。

除菌後も胃がんリスクは残る

胃の中にピロリ菌が存在する様子を示した模式図。
胃に感染するピロリ菌は、胃がんの原因として知られるが、膵臓がんとの関連も検討されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 日本では若い世代を中心にピロリ菌の感染率が低下。2010年生まれでは97.7%が一度も感染していないと推定。
  • ピロリ菌は胃がんの主な原因の一つ。除菌治療を受けても胃がんのリスクが完全になくなるわけではない。
  • 今後は、現在感染している人、過去に感染していた人、感染歴のない人を区別し、胃がんのリスクを評価することが重要に。

 胃がんの発生には、ピロリ菌の感染が深く関係している。しかし、日本では衛生環境の改善などによって若い世代を中心に未感染者が増えている。また、除菌治療の普及もあり、現在感染している人の割合は低下してきた。

 2025年に発表された日本人の感染状況を調べた研究では、2010年生まれの人のうち、ピロリ菌に一度も感染したことがない人の割合は97.7%と推定された。若い世代では未感染者が大多数となっている。

 一方、高齢世代では現在もピロリ菌に感染している人の割合が高く、除菌治療を受けた人にも胃がんのリスクが残る。

 山道氏は、今後の胃がん検診では、現在感染している人、過去に感染していた人、一度も感染していない人を区別することが重要になると説明した。

 同じ年齢であっても、感染歴などによって胃がんのリスクは異なる。こうした違いを検診に反映させることが、新たな課題になっている。

胃の粘膜の状態からリスクを評価、AI活用も進む

診察室で、医師が内視鏡を使って患者の上部消化管を検査している様子。
内視鏡検査を受ける患者と検査を行う医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 血液検査でピロリ菌の感染や胃の粘膜の状態を調べ、胃がんのリスクを分類する「ABC分類」などの方法がある。
  • 内視鏡で胃の粘膜の変化を調べるほか、AIを使ってピロリ菌の感染状態や胃炎の有無を判定する研究も進む。
  • 現在の胃がん検診は年齢を基準に実施。将来は感染歴や胃の状態も踏まえ、一人ひとりのリスクに合わせた検診の実現を目指す。

 こうしたリスクの違いを調べる手段として、血液検査や胃内視鏡などを使った胃がんリスクの評価が研究されている。代表的な方法として、ピロリ菌の抗体検査と、胃粘膜の状態を反映する「ペプシノゲン検査」を組み合わせた「ABC分類」がある。

 ペプシノゲンは胃の粘膜でつくられる物質で、血液中の濃度や種類ごとの比率から胃粘膜の萎縮を推定できる。ABC分類では、ピロリ菌の抗体検査とペプシノゲン検査の結果から、胃がんのリスクに応じてA~Dの4群に分類する。ただし、除菌後の人はリスクが低いA群と判定される場合があり、除菌歴のある人は別に扱う必要がある。

 さらに、胃内視鏡で胃粘膜の萎縮を確認し、胃がんのリスクを評価する研究も進んでいる。胃粘膜の萎縮は、ピロリ菌感染などによって胃の粘膜が薄くなる変化で、胃がんの発症と関連することが知られている。

 山道氏は、AIを使って内視鏡画像からピロリ菌の感染状態を判定する研究や、胃X線画像から胃炎の有無を判定する研究も紹介した。AIによる判定を実際の検診に取り入れるには、異なる医療機関でも十分な精度が得られるかなど、検証が必要になる。

 現在、国の指針に基づく胃がん検診は、原則として50歳以上を対象に2年に1回、胃X線検査または胃内視鏡検査を行うことになっている。なお、胃X線検査は40歳以上を対象とした年1回の実施も認められている。

 感染率の低下によって胃がんのリスクを持つ人の構成が変わる中、年齢だけでなく、一人ひとりの胃がんリスクも踏まえて検診を行う方法が、今後の研究課題となっている。

参考文献

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Takahashi Y, Yamamichi N, Kubota D, Shimamoto T, Nagao S, Sakuma N, Sakaguchi Y, Yakabi S, Tsuji Y, Wada R, Mitsushima T, Ichinose M, Fujishiro M. Risk factors for gastric cancer in Japan in the 2010s: a large, long-term observational study. Gastric Cancer. 2022 May;25(3):481-489. doi: 10.1007/s10120-021-01273-7. Epub 2022 Jan 24. PMID: 35067826.
https://doi.org/10.1007/s10120-021-01273-7

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https://doi.org/10.1016/j.ebiom.2017.10.014

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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