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便の腸内細菌から膵臓がんを見つける手掛かり、複数の細菌遺伝子を利用する研究が進む

膵臓がんリスクが高い人の中から、早期のがんを見つける方法として期待 第64回日本癌治療学会学術集会

第64回日本癌治療学会学術集会の会場に設置された「JSCO2026」の大型ロゴ。背景には大会名と大会テーマが表示されている。
第64回日本癌治療学会学術集会の会場に設置された「JSCO2026」のロゴ。2026年10月22~24日に神戸市で開催された。(写真:編集部)

 便に含まれる腸内細菌の遺伝子を調べ、膵臓がんの早期発見につなげようとする研究が進んでいる。特に、膵臓がんの発症リスクが高い人の中から、実際にがんが発生している人を見分けるための検査として期待されている。

 2026年10月22日に神戸市で開幕した第64回日本癌治療学会学術集会では、藤田医科大学医学部消化器内科学講座教授の大野栄三郎氏が、同大学の研究グループが発表した腸内細菌に関する研究成果と、膵臓がん検査への応用の可能性について講演した。

早期発見が難しい膵臓がん

人体の上半身の内部構造が透過表示され、膵臓がオレンジ色で強調されている様子。
体内にある膵臓の位置を示した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 膵臓がんは早期発見が難しく、一般の人を対象とした有効な検診方法はまだ確立していない。
  • 膵臓がんのリスクが高い「IPMN」などの病変がある人では、定期的な検査が重要。ただし、誰にがんが発生するかの予測は難しい。
  • 便に含まれる腸内細菌の遺伝子に注目。膵臓がんの人では、特定の遺伝子の量が少ないことが研究で判明。

 膵臓がんは早期発見が難しいがんの一つだ。胃がんや大腸がんとは異なり、一般の人を対象に実施して死亡率を減らせることが確認された検診方法は確立していない。

 現在は、家族歴や膵臓の画像検査などから、膵臓がんの危険性が高い人を把握し、定期的に調べる取り組みが進められている。その対象の一つが、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と呼ばれる膵臓の病変だ。IPMN自体ががんになる場合だけでなく、膵臓の別の場所に膵臓がんが発生することもある。このため、経過観察を続けることが重要になるが、誰にがんが発生するかを正確に予測することは難しい。

 大野氏らが注目したのは、便に含まれる腸内細菌の遺伝子だ。

 膵臓がんのある人とない人では、腸内細菌の構成に違いが見られる。こうした違いに着目し、細菌が持つ遺伝子の量を調べることで、がんの有無を見分ける手掛かりを得られる可能性がある。

 2026年4月に発表された研究では、腸内細菌が「酪酸」という物質を作る働きに関係する遺伝子に注目した。その結果、膵臓がんのある人では、健康な人や膵臓がんの危険因子を持つ人と比べ、この遺伝子の量が少ないことが分かった。

複数の細菌遺伝子を組み合わせ発見に生かす

胃、肝臓、小腸、大腸などの消化器を示したイラスト。
胃や腸、肝臓などの消化器を表した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 便に含まれる3種類の腸内細菌の遺伝子を組み合わせ、膵臓がんの可能性を数値で評価する方法を開発。
  • 早期膵臓がん17人と、がんの危険因子を持つ64人を比較した研究では、両者を一定程度見分けられる可能性が示された。
  • 採血せずに便で調べられる点が特徴。膵臓がんのリスクが高い人の経過観察に役立てるため、検査の精度などをさらに検証。

 研究グループはさらに、複数の細菌遺伝子の測定結果を組み合わせることで、膵臓がんを見分ける精度を高めようとした。

 2026年6月に発表した論文では、便に含まれる3種類の腸内細菌由来の遺伝子マーカーを測定し、膵臓がんのある人とない人を区別するためのスコアを算出する方法を開発した。この方法で、早期膵臓がん17人と、膵臓がんの危険因子があるものの、がんとは診断されていない64人を比較したところ、両者を一定程度見分けられる可能性が示された。

 注目されるのは、採血などを必要とせず、便を使って調べられる点だ。便から膵臓がん細胞そのものを見つけるのではなく、腸内細菌の遺伝子量の違いを手掛かりにするという、新しい発想の検査だ。

 今回の研究は少数例による探索的な段階にある。腸内細菌は年齢や薬の服用などによっても変化するため、異なる集団でも同じ結果が得られるかなど、追加の検証が必要になる。

 大野氏は、こうした検査を、IPMNなどで定期的な画像検査を受けている人の経過観察に役立てる可能性を紹介した。今後は、異なる集団で検査性能を確かめるとともに、経過観察中に膵臓がんを発症する人を早期に見つけられるかどうかを検証する必要がある。また、どの細菌遺伝子や組み合わせが膵臓がんの評価に最も有用かを見極めることも課題になる。

参考文献

Fujii T, Ohno E, Nakano N, Nakaoka K, Takahashi H, Funasaka K, Doi Y, Hirooka Y, Tochio T. Disease-specific gut microbial signatures generate model-derived cancer probability scores through targeted fecal qPCR profiling. Biosci Biotechnol Biochem. 2026 Aug 24;90(9):1273-1282. doi: 10.1093/bbb/zbag090. PMID: 42315484.
https://doi.org/10.1093/bbb/zbag090

Fujii, Tadashi, Eizaburo Ohno, Yoshiki Hirooka, and Takumi Tochio. 2026. “Minimally Age-Dependent Gut Microbial Signatures in Pancreatic Neoplasia Identified by QPCR Targeting the But Gene”. Microbiology Research Journal International 36 (4):151-70.
https://doi.org/10.9734/mrji/2026/v36i41737

便の腸内細菌から大腸がんや膵臓がんの可能性を数値化
https://prevono.net/research/2615/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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