研究

乳がんのホルモン療法、遺伝子検査後に42%で延長治療の推奨が変化

早期のホルモン受容体陽性乳がん約3000人で、検査前後の医師の治療推奨を分析

女性が衣服の上から乳房に手を当て、状態を確認している様子。
ホルモン受容体陽性乳がんでは、診断から5年以上たって再発することもあり、長期的な治療方針が課題となる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 乳がんの再発を防ぐために行う内分泌療法(ホルモン療法)について、どの遺伝子が機能しているかという遺伝子発現を調べる検査「Breast Cancer Index(BCI)」の結果を確認した後、42%の患者で医師の治療方針が変わったことが分かった。

 検査を提供するホロジック(Hologic)のグループが2026年9月に発表した。

5年を超えて治療を続けるか、判断が難しい乳がん

白衣に付けられたピンクリボンと、胸元にかけられた聴診器。
乳がんのホルモン療法を延長するかどうかは、再発リスクや副作用を踏まえた判断が重要になる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 早期のホルモン受容体陽性乳がんでは、内分泌療法を5年より長く続けることで利益が得られる患者がいる一方、副作用も課題になる。
  • 遺伝子発現検査「Breast Cancer Index(BCI)」は、内分泌療法を延長した場合に利益を得られる可能性などを示し、治療判断を支援する。
  • 研究では約3000人を対象に、BCI検査の前後で医師の治療推奨がどのように変化したかを調べた。

 今回対象となったのは、早期のホルモン受容体陽性乳がんの患者だ。このタイプの乳がんでは、女性ホルモンなどの働きを抑えて再発を防ぐ「内分泌療法」が標準的に行われる。

 ホロジックの発表によると、ホルモン受容体陽性乳がんでは、再発のおよそ半数が診断から5年以上経ってから起こる。一方で、内分泌療法を5年より長く続けることで再発リスクを下げられる患者がいるものの、すべての患者が同じように利益を得られるわけではないという。

 治療を長く続けると副作用も問題になる。今回の解析では、83%の患者が何らかの副作用を報告しており、筋肉や関節の痛み、腟や性機能に関する症状、心理的な症状などが含まれていた。

 こうした中で、治療を延長するかどうかの判断を助けるために使われるのがBCIだ。BCIは腫瘍の遺伝子発現を調べ、内分泌療法を延長することで利益を得られる可能性など、治療判断に役立つ情報を示す。

 研究では、早期のホルモン受容体陽性乳がん患者約3000人を対象に、検査前後で医師の治療推奨がどのように変わったかを調べた。

42%で推奨が変化、約3分の2は延長しない方向へ

青い背景に、DNAらせんとデジタル情報を組み合わせたイメージ図。
腫瘍の遺伝子発現を調べる検査が、乳がんのホルモン療法延長の判断材料として使われている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • BCIの結果を確認した後、42%の患者で内分泌療法を延長するかどうかについて医師の推奨が変わった。
  • 方針が変わった患者の約3分の2では、治療を延長しない方向への変更だった。
  • 遺伝子発現情報を使うことで、副作用と再発予防の利益を踏まえた治療の個別化につながる可能性がある。

 その結果、BCIの結果を確認した後、42%の患者で内分泌療法を延長するかどうかについて、医師の推奨が変わったことが分かった。

 さらに、方針が変わった患者の約3分の2では、治療を延長する方向ではなく、延長しない方向へ変更されていた。

 ホロジックによると、BCIは、早期のホルモン受容体陽性、HER2陰性乳がんで、内分泌療法を延長した場合に利益を得られる可能性を判断する検査として、全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)と米国臨床腫瘍学会(ASCO)の診療ガイドラインで取り上げられている。

 また、同社は2026年7月からBCIの報告内容を更新し、診断時点から10年間の再発リスクについて、より早い段階で情報を得られるようにしたとしている。

 長期にわたる内分泌療法では、副作用と再発予防の利益をどうバランスさせるかが重要になる。腫瘍の遺伝子発現情報を使って、その患者にとって治療延長の意味があるかを判断する方法が、治療の個別化につながる可能性がある。

参考文献

New Data Shows Physicians Changed Extended Endocrine Therapy Recommendations for Over 40% of Patients Following Breast Cancer Index Testing(Hologic)
https://www.hologic.com/about/press-release/new-data-shows-physicians-changed-extended-endocrine-therapy-recommendations

Sanft TB, Siuliukina N, O’Neal B, Khojandi N, Jankowitz RC, Pegram MD, Diab S, Zhang Y, Anderson AKL, Treuner K, O’Shaughnessy JA. Breast Cancer Index and Recommendations for Extended Endocrine Therapy. JAMA Netw Open. 2026 Sep 1;9(9):e2634974. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2026.34974. PMID: 42783373; PMCID: PMC13613174.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42783373/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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