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脳腫瘍、手術中に遺伝情報を解析し2時間以内に早期判定 英NHSが迅速検査を拡大

腫瘍組織のDNAを迅速解析し、手術中の早期分類と数日以内の分子診断を目指す

手袋を着けた手が、マイクロプレートの小さなくぼみにピペットで試薬を加えている様子。 キャプション
脳腫瘍の組織を用いた迅速検査では、少量の検体からDNA情報を解析し、診断の早期化を目指す。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 脳腫瘍の組織に含まれるDNAを短時間で解析し、腫瘍の種類を早く見分ける検査の試験導入が英国で広がる。

 英国の国民保健サービス(NHS England)が2026年9月25日に発表した。

100種類以上ある脳腫瘍、診断には数週間かかることも

研究室で、顕微鏡の横で培養プレートに試薬を加えている様子。
脳腫瘍の組織から遺伝情報を迅速に解析し、腫瘍の早期分類につなげる検査が英国で試験導入される。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 脳腫瘍は100種類以上あり、正確な分類には病理検査や分子解析が必要で、確定診断まで数週間かかる場合がある。
  • NHSが試験導入する迅速検査では、採取した腫瘍組織のDNAを短時間で解析し、腫瘍の種類を早期に分類する。
  • ノッティンガム大学病院では、DNA解析を約20分で行い、検体到着から2時間以内に早期分類を手術チームへ伝えた。

 NHS Englandの発表によると、脳腫瘍には100種類以上があり、ゆっくり成長するものから進行の速いがんまで性質が大きく異なる。腫瘍の種類によって治療への反応も異なるため、正確な診断が重要になる。

 現在はMRIやCTなどの画像検査に加え、手術や生検で採取した腫瘍組織を病理検査室で詳しく調べる。そのため、腫瘍の種類を確定診断するまで数週間かかる場合があるという。

 今回NHSが試験導入する方法では、手術や生検で採取した少量の腫瘍組織のDNAを迅速に解析する。技術にはオックスフォード・ナノポア・テクノロジーズ(Oxford Nanopore Technologies)のDNA解析技術と、ノッティンガム大学で開発された専用の解析ソフトが使われる。

 英国ノッティンガム大学病院で行われた最近の手術では、手術室で採取した腫瘍組織を同じ病院内で解析した。DNAの読み取り自体は約20分で終わり、検体が検査室に届いてから2時間以内に、腫瘍の早期分類が手術チームへ伝えられたという。

 これにより、腫瘍の種類が手術前には分からない場合でも、手術中に得られた情報を基に、正常な脳組織をできるだけ守りながら、どこまで腫瘍を取り除くかを判断する材料になる可能性がある

治療を早める可能性

研究者がペトリ皿の中の液体をピペットで扱いながら確認している様子。
迅速なDNA解析により、脳腫瘍の詳しい分子診断までの時間を短縮できる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • より詳しい分子診断も数週間ではなく数日で得られる可能性があり、治療開始の早期化につながると期待される。
  • 迅速な遺伝情報により、放射線治療や化学療法の開始、適した臨床試験への参加判断を早められる可能性がある。
  • まず英国の5つの専門施設で試験導入し、安全性や一貫した運用を検証したうえで、将来の拡大に必要な根拠を集める。

 NHS Englandによると、手術中に得られるのは腫瘍の早期分類で、より詳しい分子診断の結果は、その後の追加解析によって数日で得られる。現在は確定診断まで数週間待つことがあるため、大幅な短縮につながる可能性がある。

 診断が早まれば、必要に応じて放射線治療や化学療法をより早く始められる。また、脳腫瘍の臨床試験の中には、参加条件として腫瘍の詳しい遺伝的特徴を確認する必要があるものもあり、適した臨床試験へ早くつなげられる可能性もある。

 今回の取り組みは、ノッティンガムとバーミンガムで既に進められてきた試験を拡大するものだ。第1段階では、英国の計5カ所の専門施設に導入する。その後、他の検査施設も加わる予定だ。

 NHS Englandは、脳腫瘍のゲノム医療ネットワークに2年間で200万ポンド以上を投じる。今回の取り組みは、すでに標準診療として全国導入されたものではなく、安全かつ一貫して診療に取り入れられるかを確かめ、将来の幅広い導入に必要な根拠を集めるための試験となる。

 脳腫瘍では、診断の速さが治療方針や手術中の判断に関わることがある。遺伝情報を数時間から数日で得られるようになれば、診断までの待ち時間を短くし、患者ごとの腫瘍の特徴に合わせた治療へ早くつなげられる可能性がある。

参考文献

NHS pilots rapid genomic test to transform brain tumour diagnosis(NHS England)
https://www.england.nhs.uk/2026/09/nhs-pilots-rapid-genomic-test-to-transform-brain-tumour-diagnosis/

Oxford Nanopore technology supports NHS pilot of rapid genomic testing for brain tumours(Oxford Nanopore Technologies)
https://nanoporetech.com/news/oxford-nanopore-technology-supports-nhs-pilot-of-rapid-genomic-testing-for-brain-tumours

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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