早期食道がんは内視鏡的切除により治療することが可能となり、食道の温存手術を選択する患者が増えている。
一方で、治療後に同じ食道から新たながんが生じる「異時性発がん」が高頻度に起こることが課題となっている。
京都大学などの研究グループは、内視鏡的切除後の患者330人を10年以上追跡し、飲酒と喫煙の両方を完全にやめることで、異時性の新規食道がん発生リスクを大幅に下げられることを2026年1月に医学誌「Lancet Regional Health- Western Pacific」で報告した。
温存した食道で発がん続く
喫煙から禁煙への選択を表現。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 食道がんは5年純生存率が40%台と予後が厳しいが、早期発見例では内視鏡的切除により食道を温存できるようになっている。
- しかし、温存した食道粘膜から新たながんが発生することがあり、長期的な再発・多発が課題となっている。
- ヨード不染帯の数で粘膜異常を評価し、グレードA~Cに分類して新規発がんリスクを長期追跡した。
食道がんは完治が難しいがんの一つとして知られている。例えば、2025年11月に国立がん研究センターが公表したがんの生存率に関する統計資料によれば、食道がんは5年純生存率が40%台にとどまる。
一方で、内視鏡による診断と治療の技術が進歩しており、早期がんで発見された場合には、内視鏡的切除でがんを切除することが可能となっている。これにより大がかりな外科手術を避けられるようになり、食道を温存できるようになっている。しかし、温存した食道粘膜で新たながんが発生することもあり、長期の予後を損ねることが問題になっている。
一方で、飲酒や喫煙は食道がんのリスクを高めることが知られ、食道がんを治療した後に、禁酒や禁煙をすることで新たな発がんを防ぐことができる可能性が注目されてきた。
そこで今回、研究グループは、「早期食道扁平上皮がん」の内視鏡的切除を受けた330人を対象に、治療後、文書を使った禁酒と禁煙指導を行いながら、新たな食道がんの発生を定期的に検査していく追跡調査を行った。
観察期間は中央値10年(最短1.3カ月〜最長14年9カ月)と長期にわたった。
追跡期間中、食道粘膜の状態は、内視鏡画像の1画面中に確認される「ヨード不染帯」の数で判断した。ヨードはヨウ素を含む液体で、正常な組織は糖類のグリコーゲンがヨードで染まるが、異常な組織は染まりにくいことを利用している。研究グループは、グレードA(なし)、グレードB(1〜9個)、グレードC(10個以上)に分類してリスクを評価した。
飲酒や喫煙は減らすだけでは不十分
禁煙を示すピクトグラム。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- ヨード不染帯が多いほど新規食道がんの発生率は高く、グレードCでは10年累積発生割合が約6割に達した。
- 禁酒でハザード比0.52、禁煙で0.44とリスクは半減し、両方を完全にやめた場合は約5分の1まで低下した。
- 飲酒や喫煙を減らすだけでは明確な効果はなく、特にハイリスク群ほど完全な禁酒・禁煙の重要性が示された。
追跡期間中に新たな食道がんが発生した割合は、ヨード不染帯に基づいて評価される食道粘膜の状態によって大きく異なった。
食道がんの10年時点の累積発生割合は、グレードAで約10.4%、グレードBで約27.2%、グレードCで約61.8%だった。
つまり、ヨード不染帯が多い粘膜ほど、発がんリスクが高いことが示された。
さらに生活習慣の影響を調べると、飲酒をやめた場合のリスク低下の程度を示すハザード比は0.52、喫煙をやめた場合は0.44で、いずれも新規発がんリスクの半減程度と関連した。
特に飲酒と喫煙の両方を完全にやめた群ではハザード比0.21となり、リスクは約5分の1まで低下した。
一方で、飲酒量や喫煙量を減らすだけではこのような明確なリスク減少効果は認められず、確実にやめることの重要性も示された。
粘膜異常が高度なグレードCでは禁酒の効果がより大きい傾向も示され、ハイリスクなグループほど禁酒と禁煙の価値が高い可能性がある。
また、禁酒と禁煙の習慣化という面では、禁煙達成は時間とともに増えた一方、禁酒の達成は伸び悩み、継続が難しい実態も示された。
食道がんの再発を防ぐという観点から、生活習慣の改善が注目される。
参考文献
飲酒・喫煙の両方をやめることで内視鏡治療後の食道に新たながんが発生するリスクを大幅に低減することを明らかにしました(JEC試験)―食道がん内視鏡的切除後の患者さん330人を10年以上追跡した多施設共同研究―(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-02-12
Chikatoshi Katada, Tetsuji Yokoyama, Tomonori Yano, Yasuaki Furue, Haruhisa Suzuki, Kenji Ishido, Keiko Yamamoto, Hiroyoshi Nakanishi, Tomoyuki Koike, Masashi Tamaoki, Noboru Kawata, Motohiro Hirao, Yoshiro Kawahara, Takashi Ogata, Atsushi Katagiri, Takenori Yamanouchi, Hirofumi Kiyokawa, Hirofumi Kawakubo, Maki Konno, Akira Yokoyama, Shinya Ohashi, Tai Omori, Tadakazu Shimoda, Atsushi Ochiai, Hideki Ishikawa, Akira Yokoyama, Manabu Muto, Japan Esophageal Cohort Study Group (2026). Alcohol consumption, smoking, and the implications of their cessations for field carcinogenesis in the esophagus: a 10-year prospective cohort study. The Lancet Regional Health – Western Pacific, 101798.
https://www.thelancet.com/journals/lanwpc/article/PIIS2666-6065(26)00002-7/fulltext
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