血液疾患との関連で知られていた遺伝子に、がん化を抑える働きがあることが示された。
九州大学、国立がん研究センター、徳島大学の共同研究グループが2026年5月に発表した。注目された遺伝子「RPS19」の、がん化を抑える詳しいメカニズムが明らかになったのは、世界で初めてだ。
細胞増殖の「アクセル」と「ブレーキ」をコントロール
細胞内の染色体やDNA、遺伝子の構造を示すイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- RPS19は、先天性の血液疾患「ダイアモンド・ブラックファン貧血」との関連で知られてきた遺伝子。
- 今回の研究で、RPS19には細胞のがん化を抑える働きがあることが示された。
- RPS19に異常が起こると、細胞増殖のブレーキが効きにくくなり、がん化しやすくなる可能性がある。
がんは、細胞が必要以上に増え続けることで起こる。
細胞には本来、増殖を進める「アクセル」と、増えすぎを止める「ブレーキ」がある。このバランスが崩れると、細胞ががん化しやすくなる。
今回、注目された遺伝子は「RPS19」と呼ばれ、先天性の血液疾患「ダイアモンド・ブラックファン貧血」との関係が知られてきた。
この病気ではRPS19に変異があることが多く、患者でがんが起こりやすいことも知られていた。
ただし、RPS19が実際にがんを抑えているのか、どのように働くのかは分かっていなかった。
今回の研究で、RPS19が細胞のがん化を抑える側に働くことが示された。
具体的には、RPS19は、がん化を進める「アクセル」のように働くSETというタンパク質を抑え、細胞増殖の「ブレーキ」であるp53が働きやすい状態を保つことが示された。
そのため、RPS19に異常が起こると、このアクセルやブレーキのコントロールがうまく効かなくなる。結果、細胞が増えすぎる方向に傾き、がん化しやすくなると考えられる。
乳がんや胃がんの悪性度を知る手がかりにも
DNAや遺伝子の研究。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- RPS19の異常を調べることが、がんのなりやすさや性質を知る手掛かりになる可能性がある。
- 乳がんや胃がんでは、RPS19タンパク質の量が少ないがんほど悪性度が高い傾向と関連する可能性が示された。
- 将来的には、遺伝子異常の情報がリスク評価や診断、個別化治療に役立つ可能性がある。
こうした発見から考えれば、RPS19の異常が、がんになりやすさや、がんの性質を知る手掛かりになる可能性がある。
研究グループが乳がんや胃がんのデータも調べたところ、RPS19タンパク質の量が少ないがんでは、悪性度が高い傾向と関連する可能性も示された。
現時点では、RPS19を調べる検査や、この考え方に基づく治療がすぐに一般診療で使える段階ではないが、今後、どのがんで役立つのか、どの患者に効果が期待できるのかが明らかになるかもしれない。今回のように、がんの背景にある遺伝子異常を調べることは、将来のリスク評価や診断、個別化治療につながる可能性がある。