コラム

AIは大腸がん予防の要となる内視鏡検査をどう変えるのか

腺腫発見率は約2割向上、ポリープの見落とし減少の一方で「見つけすぎ」という新たな課題も

医師が内視鏡を持ち、検査台に横たわる患者に大腸内視鏡検査を説明しているイラスト。
大腸内視鏡検査を受ける患者と説明する医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 「AIはがんをどこまで早く見つけられるか」の連載では、乳がん検診、肺がんCT検診、膵臓がん診断におけるAI活用を見てきた。

 今回は、大腸がん予防の要となる大腸内視鏡検査に注目する。大腸がんの多くは、前がん病変の一つである腺腫を経て発生するとされる。内視鏡で腺腫やポリープを見つけて切除できれば、大腸がんの発症予防につながる可能性がある。

大腸内視鏡でAIは何を助けるのか

内視鏡カメラと、モニターに映し出された大腸内部の病変を示す画像。
大腸内視鏡で腸内を観察する検査場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 大腸がん予防では、ポリープの中でも前がん病変である腺腫を見つけ、必要に応じて切除することが重要になる。
  • AI支援内視鏡は、検査中の映像を解析し、ポリープが疑われる部分を枠やマークで示して医師の発見を助ける。
  • 33件の臨床研究をまとめた解析では、AIを使うことで腺腫発見率が向上し、腺腫の見逃し率も低下していた。

 中国のハルビン医科大学などの研究グループは2023年、受診者をAI支援を得るグループと通常検査のグループに分けて比較した33件のランダム化比較試験(約2万7400人)を統合して分析した。

 大腸内視鏡検査で重要なのは、ポリープを見つけ、その中でも前がん病変である腺腫を見落とさないことだ。ポリープとは、大腸の粘膜にできる盛り上がった病変を指す。そのすべてががんになるわけではないが、腺腫は将来大腸がんに進む可能性がある。

 そのため、大腸内視鏡でポリープを見つけ、その中の腺腫を必要に応じて切除することが、大腸がん予防につながる。

 ただ、内視鏡検査では病変を見落とすことがある。このハルビン医科大学などの研究グループは、通常の内視鏡検査では、腺腫が最大で約27%見逃される可能性があると説明している。そこで注目されるのが、AIによる病変検出支援だ。AIは内視鏡の映像をその場で解析し、ポリープが疑われる部分を枠やマークで示す。医師が小さな病変に気づきやすくなる仕組みだ。

 研究グループが、AIを使った内視鏡検査と通常の内視鏡検査を比べた33件の臨床研究をまとめたところ、AIを使うことで腺腫発見率は約24%向上していた。腺腫の見逃し率も約50%低下していた。

 実際に見つかった病変の数も増えていた。検査1件当たり、腺腫は平均0.2個、ポリープ全体では平均0.27個多く発見されていた。

 一方で、AIによる発見数の増加は、小さな病変が中心だった。将来がんになる危険性が高い進行腺腫や大きな病変については、明確な改善を示せない項目もあった。

見落としは減るが、新たな課題も

大腸内視鏡検査の様子を、大腸の模式図と医療スタッフで表したイラスト。
大腸内視鏡検査の仕組みを表した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 新しい解析でも、AI支援内視鏡は腺腫やポリープの発見率を高め、見逃し率を下げる傾向が示された。
  • 一方で、AIが便の残りや粘膜のしわを病変候補として示す偽陽性や、小さな病変の過剰検出が課題になる。
  • AIによる発見率向上が将来の大腸がん発症や死亡の減少につながるか、医療費への影響も含めて長期的な検証が必要になる。

 その後、エジプトの研究グループは2025年、より新しい研究を加えたメタ解析を報告した。AIを使った内視鏡検査と通常の内視鏡検査を比べた38件の臨床研究、約2万9700人分のデータをまとめたものだ。

 結果は、2023年の解析とおおむね同じ方向だった。AI支援内視鏡では、腺腫発見率は19%高くなり、ポリープ発見率も19%高くなっていた。一方で、腺腫の見逃し率は48%、ポリープの見逃し率は47%低下していた。

 検査時間への影響は大きくなかった。内視鏡を引き抜きながら観察する時間は、平均で約0.5分延びる程度だった。

 ただし、課題も残る。2023年の解析では、AIが病変と誤って判断する「偽陽性」の割合は約12%だった。便の残りや粘膜のしわなどを病変候補として示すことがあり、その都度、医師が確認する必要がある。

 また、AIによって見つかる病変の中には、がん化リスクが低いものも含まれる。2023年の解析では、腫瘍ではない病変がより多く切除される傾向も報告された。小さな病変を多く見つけることが、必ずしも患者にとって利益になるとは限らない。

 2025年の解析でも、大腸がんそのものの発見率向上については明確な差が確認されなかった。AIはポリープや腺腫の見落としを減らす可能性がある一方、それが将来の大腸がん発症や死亡の減少につながるかは、まだ十分に分かっていない。過剰な検出や不要な切除、医療費への影響も含めて、長期的に検証していく必要がある。

参考文献

Lou S, Du F, Song W, Xia Y, Yue X, Yang D, Cui B, Liu Y, Han P. Artificial intelligence for colorectal neoplasia detection during colonoscopy: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. EClinicalMedicine. 2023 Nov 30;66:102341. doi: 10.1016/j.eclinm.2023.102341. PMID: 38078195; PMCID: PMC10698672.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38078195/

Qutob IA, Soliman A, Trabelsi R, Elkholy MKA, Elgahamy AS, Abuismail M, Hamouda MN, Elhaddad I, Eldaly AA, Elgarawany A, Boshirtela SO, Mohammed S, Seliem S. Improving Colorectal Cancer Detection with AI-Assisted Colonoscopy: A Systematic Review and Meta-Analysis of 38 RCTs with GRADE Assessment. J Gastrointest Cancer. 2025 Dec 19;56(1):240. doi: 10.1007/s12029-025-01353-2. PMID: 41417282.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41417282/

SERIES

AIはがんをどこまで早く見つけられるのか

  1. 1 AIが乳がん発見の4年前から兆候を捉える可能性
  2. 2 肺がんCT検診のAIはどこまで使える段階に来ているのか
  3. 3 AIは膵臓がんと膵炎を見分けられるのか
  4. 4 AIは大腸がん予防の要となる内視鏡検査をどう変えるのか
星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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