研究

「悪玉」LDLコレステロールよりリスクを細かく見る指標

「アポB」で心筋梗塞や脳卒中をより防げる可能性

健康診断結果の脂質検査欄に、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールなどの項目が並んでいる。
健康診断ではLDLコレステロールが広く使われているが、研究ではアポBを加えることでリスク評価が改善する可能性が検討された。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 動脈硬化による心筋梗塞や脳卒中を防ぐため、健康診断では一般に「悪玉コレステロール」とされるLDLコレステロールが測定されている。しかし、LDLコレステロールだけでは、動脈硬化を起こしやすい粒子の数を十分に捉えられない場合がある。

 今回、そうした粒子の数を反映する「アポリポタンパクB(アポB)」を目安に脂質低下治療を行う方が、LDLコレステロールを目安にするより多くの心筋梗塞や脳卒中を防ぎ、費用対効果にも優れる可能性が示された。

 米国ノースウエスタン大学などの研究グループが2026年4月に発表した。

悪玉コレステロールの「量」ではなく、粒子の「数」を見る

血管内を流れる赤血球と、血管壁付近に集まる脂質粒子を示したイメージ図。
アポBは、LDLなど動脈硬化に関わる粒子の数を推定する指標として注目されている。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • LDLコレステロールは、LDL粒子に含まれるコレステロールの量を見ているが、動脈硬化には粒子の数も関係する。
  • アポBは、LDLなどの動脈硬化に関わる粒子に1つずつ含まれるため、血液中のリスク粒子の数を推定できる。
  • 研究グループは、LDLコレステロール、非HDLコレステロール、アポBをそれぞれ治療目標にした場合の効果と費用対効果をシミュレーションで比較した。

 コレステロールは脂質の一種で、そのままでは血液に溶けにくい。そのため、血液中ではタンパク質などと一緒に粒子を作り、体内を運ばれる。このうち、肝臓から全身へコレステロールを運ぶ粒子の代表がLDLだ。

 LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」として広く知られている。ただし、LDLコレステロールの値は、LDLという粒子に含まれるコレステロールの量を見ている。一方で、動脈硬化に関わるのは、コレステロールの量だけではなく、それを運ぶ粒子の数でもある。

 アポBは、LDLなどの動脈硬化に関わる粒子に1つずつ含まれるタンパク質だ。そのため、アポBを測ると、血液中にある動脈硬化を起こしやすい粒子の数を推定できる。

 LDL粒子1個が運ぶコレステロールの量には個人差があるため、同じLDLコレステロール値でも粒子の数が多い人もいれば少ない人もいる。このため、アポBの方が動脈硬化のリスクをより正確に捉えられる可能性がある。

 これまでの研究でも、アポBはLDLコレステロールより心血管疾患のリスクを正確に評価できることが報告されてきた。一方で、アポBは通常の脂質検査とは別に測定する必要があり、追加の費用がかかる。そのため、医療現場で広く使う価値があるかは明らかではなかった。

 研究グループは、心血管疾患を発症していないものの、コレステロールを下げる薬であるスタチンの対象となる米国成人25万人を想定し、コンピューターシミュレーションを行った。

 比較したのは、LDLコレステロール、非HDLコレステロール、アポBの3つだ。非HDLコレステロールは、総コレステロールから善玉とされるHDLコレステロールを引いた値を指す。研究では、この3つをそれぞれ治療の目安に薬による治療を、追加または強化した場合の生涯にわたる心筋梗塞や脳卒中、寿命、生活の質、医療費がどう変わるかを比べた。効果は、寿命と生活の質の両方を考慮した指標であるQALY(質調整生存年)で評価した。

アポBなら、治療を強化すべき人を見つけやすい

両手で赤いハート型のオブジェを包み込む様子。
LDLコレステロールだけでは見えにくい心筋梗塞や脳卒中のリスクを、アポBでより詳しく捉えられる可能性が示された。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • アポBを目安に治療方針を決める方法は、LDLコレステロールや非HDLコレステロールを目安にする方法より、心筋梗塞や脳卒中を多く防げる可能性が示された。
  • 医療費は増えると推計されたが、増加分の多くは予防効果によって長く生きる人が増え、薬を使う期間が延びるためと考えられる。
  • 今回の研究はシミュレーションであり、実際の臨床試験ではないものの、従来の脂質検査だけでは見えにくいリスクをアポBで捉えられる可能性を示している。

 解析の結果、アポBを目安に治療方針を決める方法は、LDLコレステロールや非HDLコレステロールを目安にする方法より、心筋梗塞や脳卒中を多く防げる可能性が示された。非HDLコレステロールを目安にした場合と比べても、アポBの方が効果は大きかった。

 アポBを使う方法では、非HDLコレステロールを目安にした場合と比べて、米国成人25万人のシミュレーション全体で、生涯医療費が約4020万ドル増えると推計された。1ドル160円で換算すると約64億円となる。

 ただし、この増加分の多くは検査代そのものではない。心筋梗塞や脳卒中を防いで長く生きる人が増え、その分、スタチンなどの予防薬を使う期間が長くなるためだ。医療費は増えたものの、その増加に見合う効果があると推計された。

 今回の研究は、実際に患者を追跡した臨床試験ではなく、米国成人のデータを使ったコンピューターシミュレーションではあるものの、従来のコレステロール検査だけでは見えにくいリスクをアポBで捉えられる可能性を示している。

参考文献

Little-Used Cholesterol Test Could Prevent More Heart Attacks, Strokes
https://news.feinberg.northwestern.edu/2026/04/20/little-used-cholesterol-test-could-prevent-more-heart-attacks-strokes/

Luebbe S, Sniderman AD, Moran AE, Wilkins JT, Kohli-Lynch CN. Cost-Effectiveness of ApoB, Non-HDL-C, and LDL-C Goals for Primary Prevention Lipid-Lowering Therapy. JAMA. 2026;335(17):1507-1514.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41949879/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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