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乳がんを見つけやすくする「ウルトラファストダイナミックMRI」、不要な生検を減らす研究も

数秒間隔の高速撮影と拡散強調画像の進歩 第54回日本磁気共鳴医学会大会

第54回日本磁気共鳴医学会大会のシンポジウム会場。演台で講演する登壇者と座長、講演を聴く参加者の様子。
第54回日本磁気共鳴医学会大会の講演会場。乳房MRIをテーマにしたシンポジウムでは、超高速撮影による乳がんの検出や、拡散強調画像(DWI)を利用して不要な生検を減らす可能性などが議論された。(写真:編集部)

 乳がんの診断に使われるMRIの撮影技術が進歩し、これまで見つけにくかった病変を捉えたり、良性か悪性かを詳しく調べたりする研究が進んでいる。

 特に注目されるのが、造影剤の投与直後から数秒間隔で撮影する「ウルトラファストダイナミックMRI」と、造影剤を使わずに組織内部の水分子の動きを調べる「拡散強調画像(DWI)」だ。

 2026年10月16日に鹿児島市で開幕した第54回日本磁気共鳴医学会大会では、「Breast MRI撮像の最適解を探る:技術の特性と臨床への適用」をテーマにしたシンポジウムが開かれ、専門家4人が新しい撮影技術の有用性や、実際の診療で使うための課題を紹介した。

正常な乳腺に隠れた病変を発見

鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会の会場入口。大会名や開催日程が記された案内看板が設置されている。
2026年10月16~18日に鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会。MRIの画像解析やAI技術などに関する研究成果が発表された。(写真:編集部)
  • 造影剤を投与した直後から数秒おきに撮影し、がんと正常な乳腺が明るくなる時間の違いを利用する技術。
  • 通常のMRIでは正常な乳腺に隠れて見つけにくかった乳がんも、超高速撮影によって確認できる場合がある。
  • AIを使った画像処理を組み合わせ、約3秒間隔での撮影も可能に。良性か悪性かを見分ける手掛かりとしても期待。

 シンポジウムでは、獨協医科大学埼玉医療センター放射線科主任教授の久保田一徳氏と、京都大学医学部附属病院放射線部主任診療放射線技師の佐川肇氏が座長を務めた。

 乳房MRIでは、造影剤を使って乳がんなどの病変を見つけやすくする方法が広く使われている。

 造影とは、血管内に薬剤を注射し、病変や周囲の組織の違いを画像上で分かりやすくすることだ。

 MRIでは、造影剤が血液とともに乳房へ運ばれると、乳がんなどの病変が明るく写ることがあり、その位置や広がりを調べる手掛かりになる。

 ただし、正常な乳腺組織も造影剤によって明るく写る場合がある。特に正常な乳腺の造影が強いと、がんとの区別が難しくなる。

 こうした問題への対策として研究されているのが、造影剤の投与直後から数秒間隔で画像を取得する「ウルトラファストダイナミックMRI」だ。

 がんと正常な乳腺では、造影剤によって明るくなり始めるタイミングが異なる場合があり、そのわずかな時間差を利用して病変を見つけやすくする。

 獨協医科大学埼玉医療センター放射線部の診療放射線技師、大橋一範氏は、超高速撮影の技術と普及状況を紹介した。

 大橋氏が42施設から回答を得た調査では、超高速撮影を実施していた施設は4割未満だった。一方、実施していない施設の約7割が導入に関心を示していたという。

 大橋氏は、比較的古いMRI装置でも高速撮影が可能な場合があると説明。AIによる画像処理を組み合わせ、約3秒間隔で30回の画像を取得した例を紹介した。

 京都大学医学部附属病院先制医療・生活習慣病研究センター特定助教の本田茉也氏は、実際の乳がん診断での活用を解説した。

 京都大学病院では、原則として乳房の造影MRIに超高速撮影を組み込み、造影剤を投与した直後の約1分間に画像を繰り返し取得しているという。

 本田氏は、明確なしこりを作らずに広がる乳がんの症例を紹介した。通常の造影MRIでは周囲の正常な乳腺も明るく写り、病変を区別しにくかったが、超高速撮影では正常な乳腺が明るくなる前に病変を確認できた。

 超高速MRIでは、造影剤によって病変が明るくなる速さも調べられる。悪性腫瘍では短時間で強く造影される場合があり、良性か悪性かを見分ける手掛かりとして期待されている。

 ただし、良性病変でも急速に造影される場合があり、造影の速さだけで乳がんとは判断できない。また、短い間隔で撮影するため、通常の高精細な画像と比べて病変の細かな形が分かりにくくなることもある。

造影剤を使わず良悪性を評価、不要な生検を減らせるか

MRI検査装置で検査を受ける人と、そばで見守る医療スタッフを描いたイラスト。
MRI検査を受ける患者と医療スタッフを表した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 造影剤を使わず、乳房の中の水分子の動きを調べるMRI技術。撮影方法を工夫すると病変を見つけやすくなる。
  • 米国の研究では、組織検査が必要と判断された67病変のうち14病変(約21%)で、検査を省略できる可能性。
  • 小さな乳がんは見つけにくい場合もあり、見逃しを防ぐには造影MRIなどと組み合わせた判断が重要。

 もう一つの技術が、造影剤を使わずに乳房内部の状態を調べる「拡散強調画像(DWI)」だ。

 組織の中で水分子がどの程度動きやすいかを調べる方法で、乳がんなど細胞が密集している場所では、水分子の動きが制限されることがある。この特徴を利用して、病変の内部の状態を推測する。

 水分子の動きやすさを数値化したものが「ADC(見かけの拡散係数)」だ。一般に乳がんではADCが低くなる傾向があり、良性病変との区別に役立つ可能性がある。

 名古屋大学医学部附属病院放射線部の診療放射線技師、加藤裕氏は、病変を見つけやすくするための撮影方法を紹介した。

 DWIでは、「b値」と呼ばれる撮影条件を調整し、水分子の動きを画像にどの程度強く反映させるかを変える。加藤氏は、この値を高くすることで正常な乳腺組織が目立たなくなり、病変がはっきり見えるようになった症例を紹介した。

 一方、撮影条件を変えるとADCの測定値も変わる場合がある。加藤氏は、病変を見つけやすくすることと、良性か悪性かの判断に使う数値を正確に測ることを分けて考える必要があると説明した。

 さらに、京都府立医科大学大学院医学研究科放射線診断治療学特任准教授の後藤眞理子氏は、DWIによって不要な組織検査を減らせる可能性を取り上げた。

 乳がんが疑われる場合には、針などで組織を採取して詳しく調べる「生検」が行われる。MRIで良性の可能性が高いと判断できれば、生検の必要性を検討する際の参考になる。

 後藤氏が紹介した米国の多施設研究では、DWIによる数値を利用すると、生検が必要と判断された67病変のうち14病変(20.9%)で、生検を省略できる可能性が示された。この条件では乳がんの見逃しはなかったが、各施設で測定した数値に別の判定基準を適用すると、3病変の乳がんを見逃す結果となった。

 特に注意が必要なのは、小さな乳がんだ。

 後藤氏は、自施設で乳がんの手術前MRIによって新たに発見された40病変を調べた結果を紹介した。このうち83%は大きさが1cm以下だった。40病変全体では、良性と悪性の間でADC値に統計学的に明確な差は認められなかった。

 講演では、8mmの乳がんがDWIではっきり見えた一方、同じ大きさでも、造影MRIでは確認できた「浸潤性小葉がん」という種類の乳がんがDWIでは目立たなかった症例も紹介された。

 DWIで病変が見えないからといって、乳がんではないと判断することはできない。また、乳房の形や脂肪の量、撮影条件などによって画質や測定値が変わることも課題になる。

参考文献

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30647080/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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