研究 2026.02.23 尿でがんを早期発見へ がん由来「細胞外小胞」が腎臓を通過し尿中に移行 東京科学大、東大、名古屋大が報告 がん がん検診(総論) 尿検査 新規スクリーニング技術 検体提出用の容器について説明する医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) ポイント 尿の中にがん組織から分泌された微粒子「細胞外小胞」が現れることが示された。 「細胞外小胞」は、血液中を循環して、腎臓の細胞の層を通り尿の中に移行する。 尿を調べる検査により、がんを早期に見つける方法が実現する可能性が示された。 尿を調べることで、早期にがんを発見できる可能性が示された。 東京科学大学、東京大学、名古屋大学を中心とする共同研究グループが2026年2月に発表した。 遠隔のがんから尿へ 遺伝子導入や細胞外小胞の仕組みを示した模式図。(出典:東京大学) がん細胞が分泌する「細胞外小胞」は、腫瘍の情報を持つ微粒子でバイオマーカーとして注目されている。 これまで小胞が腎臓の糸球体を通過し尿中へ移行できるかは不明だった。 マウス実験により、がん由来小胞が体内を循環する様子が検証された。 研究の発表資料によると、「細胞外小胞」は直径30〜200ナノメートル程度の微粒子で、あらゆる細胞が分泌している。 その内部や表面には分泌した細胞の情報を含んでおり、がん細胞から分泌された小胞は腫瘍の状態を反映する「バイオマーカー」として注目されてきた。これを利用することで、血液や尿を用いて診断を行うことが期待される。 一方で、このような小胞が尿中へ排出される経路は不明だった。腎臓の「糸球体」と呼ばれる部位がフィルターとなり、尿をろ過しているため、小胞が通過できるか疑問があった。 研究グループは、目印を付けた細胞外小胞を分泌するがん細胞を作製し、これをマウスの脳内などに移植した上で、小胞が体内をどのように循環するかを検証した。 尿の中に濃縮される可能性も 研究室で顕微鏡や試験管を用いて実験を行う様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) 脳腫瘍のほか、肺がんや膵がん由来の小胞も尿中に現れることが確認された。 小胞は腎臓細胞内を移動して排出される「トランスサイトーシス」により尿中へ運ばれると考えられる。 血液より尿中で多く検出される場合もあり、尿によるがん早期診断の信頼性向上が期待される。 結果として、脳腫瘍細胞から分泌された小胞が、腎臓の組織を経由して尿中に移ることが確認された。 このようながん由来の小胞が尿中に現れる現象は、肺がんや膵がんでも観察された。 血液中よりも尿中で多くのがん由来小胞が検出されることもあった。小胞は、腎臓の細胞に取り込まれ、その内部を移動した上で、排泄されるというメカニズムも推定された。これは単純に微粒子が通るのではなく、能動的に運ばれる形の「トランスサイトーシス」が行われていると考えられた。その結果、尿中で濃縮される可能性がある。 研究グループは、離れた場所から小胞が移ってくるメカニズムが確認されたことで、尿を用いたがん早期診断の信頼性の向上につながると指摘している。 今後、尿を用いたがんの早期診断を実用化する研究がさらに進むことが期待される。 参考文献 がん由来の微粒子が尿中に出ることを発見 −尿を使ったがん細胞の早期検知へ−(東京科学大学・東京大学・名古屋大学) https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400280806.pdf Kawaguchi S, et al. Glomerular routing of tumor-derived extracellular vesicles substantiates urinary biopsy. Sci Adv. 2026 Feb 20;12(8):eaeb0555. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41719393/ SNSで共有 X(Twitter) Facebook Pinterest LinkedIn Email LINE Threads この記事の執筆者 星良孝 PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。 この執筆者の記事一覧 投稿ナビゲーション 前の記事メタボ健診で国保現役世代の生活習慣病が減少 支出増自治体で罹患率10%減次の記事帯状疱疹ワクチンとバイアグラがアルツハイマー病予防候補に、英国研究 ARCHIVE 新着記事 本を読んでいる人物を表したシルエットイラスト。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) 2026年3月13日 15歳の学業プレッシャー、うつ症状は22歳まで関連 自傷リスクも24歳まで持続か 医師が聴診器で男性患者の胸部を診察する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) 2026年3月12日 前糖尿病+高血圧に「心筋のダメージ」が加わると心不全リスク約10倍 食パンを食べる女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) 2026年3月11日 炭水化物中心の食事は太りやすい? 歯みがきをする女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) 2026年3月10日 歯をすべて失うと老化が進む? 医療AIが診断支援を行う様子を表したイラスト。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) 2026年3月9日 AIチャットボットの医療相談にリスク、質問次第で回答が変化 医師が腹囲を測定する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) 2026年3月8日 肥満は感染症重症化リスクを70%増加に関連
ポイント 尿の中にがん組織から分泌された微粒子「細胞外小胞」が現れることが示された。 「細胞外小胞」は、血液中を循環して、腎臓の細胞の層を通り尿の中に移行する。 尿を調べる検査により、がんを早期に見つける方法が実現する可能性が示された。 尿を調べることで、早期にがんを発見できる可能性が示された。 東京科学大学、東京大学、名古屋大学を中心とする共同研究グループが2026年2月に発表した。 遠隔のがんから尿へ 遺伝子導入や細胞外小胞の仕組みを示した模式図。(出典:東京大学) がん細胞が分泌する「細胞外小胞」は、腫瘍の情報を持つ微粒子でバイオマーカーとして注目されている。 これまで小胞が腎臓の糸球体を通過し尿中へ移行できるかは不明だった。 マウス実験により、がん由来小胞が体内を循環する様子が検証された。 研究の発表資料によると、「細胞外小胞」は直径30〜200ナノメートル程度の微粒子で、あらゆる細胞が分泌している。 その内部や表面には分泌した細胞の情報を含んでおり、がん細胞から分泌された小胞は腫瘍の状態を反映する「バイオマーカー」として注目されてきた。これを利用することで、血液や尿を用いて診断を行うことが期待される。 一方で、このような小胞が尿中へ排出される経路は不明だった。腎臓の「糸球体」と呼ばれる部位がフィルターとなり、尿をろ過しているため、小胞が通過できるか疑問があった。 研究グループは、目印を付けた細胞外小胞を分泌するがん細胞を作製し、これをマウスの脳内などに移植した上で、小胞が体内をどのように循環するかを検証した。 尿の中に濃縮される可能性も 研究室で顕微鏡や試験管を用いて実験を行う様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock) 脳腫瘍のほか、肺がんや膵がん由来の小胞も尿中に現れることが確認された。 小胞は腎臓細胞内を移動して排出される「トランスサイトーシス」により尿中へ運ばれると考えられる。 血液より尿中で多く検出される場合もあり、尿によるがん早期診断の信頼性向上が期待される。 結果として、脳腫瘍細胞から分泌された小胞が、腎臓の組織を経由して尿中に移ることが確認された。 このようながん由来の小胞が尿中に現れる現象は、肺がんや膵がんでも観察された。 血液中よりも尿中で多くのがん由来小胞が検出されることもあった。小胞は、腎臓の細胞に取り込まれ、その内部を移動した上で、排泄されるというメカニズムも推定された。これは単純に微粒子が通るのではなく、能動的に運ばれる形の「トランスサイトーシス」が行われていると考えられた。その結果、尿中で濃縮される可能性がある。 研究グループは、離れた場所から小胞が移ってくるメカニズムが確認されたことで、尿を用いたがん早期診断の信頼性の向上につながると指摘している。 今後、尿を用いたがんの早期診断を実用化する研究がさらに進むことが期待される。 参考文献 がん由来の微粒子が尿中に出ることを発見 −尿を使ったがん細胞の早期検知へ−(東京科学大学・東京大学・名古屋大学) https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400280806.pdf Kawaguchi S, et al. Glomerular routing of tumor-derived extracellular vesicles substantiates urinary biopsy. Sci Adv. 2026 Feb 20;12(8):eaeb0555. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41719393/ SNSで共有 X(Twitter) Facebook Pinterest LinkedIn Email LINE Threads