研究

尿でがんを早期発見へ がん由来「細胞外小胞」が腎臓を通過し尿中に移行

東京科学大、東大、名古屋大が報告

医師が黄色いふたの検体容器を手に持ち、患者に説明している様子。
検体提出用の容器について説明する医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 尿を調べることで、早期にがんを発見できる可能性が示された。

 東京科学大学、東京大学、名古屋大学を中心とする共同研究グループが2026年2月に発表した。

遠隔のがんから尿へ

マウスと細胞外小胞、遺伝子導入を示した研究模式図。
遺伝子導入や細胞外小胞の仕組みを示した模式図。(出典:東京大学)
  • がん細胞が分泌する「細胞外小胞」は、腫瘍の情報を持つ微粒子でバイオマーカーとして注目されている。
  • これまで小胞が腎臓の糸球体を通過し尿中へ移行できるかは不明だった。
  • マウス実験により、がん由来小胞が体内を循環する様子が検証された。

 研究の発表資料によると、「細胞外小胞」は直径30〜200ナノメートル程度の微粒子で、あらゆる細胞が分泌している。

 その内部や表面には分泌した細胞の情報を含んでおり、がん細胞から分泌された小胞は腫瘍の状態を反映する「バイオマーカー」として注目されてきた。これを利用することで、血液や尿を用いて診断を行うことが期待される。

 一方で、このような小胞が尿中へ排出される経路は不明だった。腎臓の「糸球体」と呼ばれる部位がフィルターとなり、尿をろ過しているため、小胞が通過できるか疑問があった。

 研究グループは、目印を付けた細胞外小胞を分泌するがん細胞を作製し、これをマウスの脳内などに移植した上で、小胞が体内をどのように循環するかを検証した。

尿の中に濃縮される可能性も

顕微鏡と試験管を用いて実験を行う研究者の手元。
研究室で顕微鏡や試験管を用いて実験を行う様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 脳腫瘍のほか、肺がんや膵臓がん由来の小胞も尿中に現れることが確認された。
  • 小胞は腎臓細胞内を移動して排出される「トランスサイトーシス」により尿中へ運ばれると考えられる。
  • 血液より尿中で多く検出される場合もあり、尿によるがん早期診断の信頼性向上が期待される。

 結果として、脳腫瘍細胞から分泌された小胞が、腎臓の組織を経由して尿中に移ることが確認された。

 このようながん由来の小胞が尿中に現れる現象は、肺がんや膵臓がんでも観察された。

 血液中よりも尿中で多くのがん由来小胞が検出されることもあった。小胞は、腎臓の細胞に取り込まれ、その内部を移動した上で、排泄されるというメカニズムも推定された。これは単純に微粒子が通るのではなく、能動的に運ばれる形の「トランスサイトーシス」が行われていると考えられた。その結果、尿中で濃縮される可能性がある。

 研究グループは、離れた場所から小胞が移ってくるメカニズムが確認されたことで、尿を用いたがん早期診断の信頼性の向上につながると指摘している。

 今後、尿を用いたがんの早期診断を実用化する研究がさらに進むことが期待される。

参考文献

 がん由来の微粒子が尿中に出ることを発見 −尿を使ったがん細胞の早期検知へ−(東京科学大学・東京大学・名古屋大学)
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400280806.pdf

 Kawaguchi S, et al. Glomerular routing of tumor-derived extracellular vesicles substantiates urinary biopsy. Sci Adv. 2026 Feb 20;12(8):eaeb0555.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41719393/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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