研究

近視で緑内障リスク上昇、京大が約1420万人を7.5年追跡調査

強度近視は眼圧を下げる「濾過手術」が約4倍に

眼鏡を額に上げ、タブレットを見つめる女性。
視力の低下や見えにくさに悩む女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 日本人に身近な「近視」であることが、失明原因の上位を占める緑内障の発症の増加、および手術を要する重症化リスク上昇と関連することが示された。

 京都大学をはじめとした共同研究グループが、約1420万人を7.5年追跡調査し、関連を明らかにした。

近視は将来の重症化と関連するか?

正常な眼球と緑内障の眼球を比較し、眼圧上昇による視神経圧迫を示した図。
正常な眼球と緑内障の状態を比較した模式図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 約1420万人を7.5年間追跡し、近視と緑内障発症の関連を大規模に検証した。
  • 追跡開始前の緑内障患者や白内障手術歴のある人を除外し、近視の程度別に発症や手術の有無を分析した。
  • 電子カルテ約8万2000人分で病名の一致を確認し、特に強度近視の判定精度の高さを検証した。

 研究報告によれば、近視は眼鏡やコンタクトで矯正できる一方、将来の目の病気のリスクにつながる可能性が注目されている。

 中でも緑内障は日本の失明原因の1位になっている。この病気は、視神経が障害され視野が徐々に欠けていく疾患で、眼圧の上昇が重要な危険因子とされている。緑内障は、いったん失われた視野が戻らない病気であるため、早期発見と早期治療により、進行を抑えることが重要とされる。

 一方で、近視の人に緑内障が多いことが知られていた。ただし、近視の程度が将来どの程度の確率で緑内障につながるのかを検証した研究は少ない。加えて、手術が必要になるほど重症化しやすいのかを検証した研究はなかった。

 今回の研究では、近視と緑内障の関連が大規模に検証された。

 研究グループは、厚生労働省が管理する「診療報酬請求データベース」を活用。2014年時点で近視や遠視などの検査である屈折検査を受けた40歳以上の約1420万人を抽出し、2015年9月から2023年3月までの約7.5年間にわたり追跡調査した。

 解析に当たっては、追跡開始前に緑内障と診断されていた人や、白内障手術を受けていた人を除外した。

 その上で、対象者を「非近視」「近視」「強度近視」に分類し、その後に新たに緑内障を発症したか、さらに緑内障手術や進行例に対して行われる「濾過手術」に至ったかを確かめた。濾過手術は、眼内の房水の流出路を人工的に設けて、眼圧を下げる手術をいう。

 なお、緑内障に関連する可能性がある他の要素、年齢や性別、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの影響は統計的に補正している。

 また、診療報酬の請求に使われるレセプトデータの弱点とされる「病名の正確性」を補うため、複数の医療機関の電子カルテ約8万2000人分を用い、病名の一致状況を検証した。これは、請求上、薬の処方などの目的で実際とは異なる病名が付けられる場合があるためだ。この検証の結果、特に強度近視の判定は実際の検査結果と高い一致を示し、解析の信頼性が確認されたと説明している。

強度近視は濾過手術リスク4.03倍

眼科で細隙灯顕微鏡検査を受ける女性。
眼科で精密な目の検査を受ける様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 緑内障の発症リスクは、近視で1.44倍、強度近視で2.67倍に上昇した。
  • 緑内障手術に至るリスクも、近視で1.71倍、強度近視で3.07倍と段階的に増加した。
  • 濾過手術のリスクは強度近視で4.03倍に達し、将来の重症化リスクの高さが示された。

 結果として、近視の程度が強いほど、緑内障の発症リスクおよび手術リスクはいずれも段階的に上昇することが分かった。

 発症リスクは、非近視と比べて近視で1.44倍、強度近視で2.67倍に上昇した。発症だけでなく、緑内障手術に至るリスクも近視で1.71倍、強度近視で3.07倍だった。

 中でも濾過手術では、近視で2.03倍、強度近視では4.03倍と約4倍に達した。追跡期間を通じて、濾過手術に至る割合は非近視群より近視群で高く、特に強度近視群で顕著だった。

 濾過手術は治療効果が大きい一方、術後の通院や管理の負担も大きい。今回の結果は、強度近視を単なる視力の問題ではなく、「将来、重症の緑内障になりやすい状態」として捉える必要があることを示している。

 研究グループは、強度近視では「視神経」や「網膜」の形状が変化していることが多く、通常の検査では緑内障のサインが見落とされやすい可能性にも言及。リスクに応じた検査頻度の見直しや、丁寧なフォロー体制の構築を提案している。

 今回の研究を踏まえると、緑内障の予防という視点から近視がとらえ直される可能性もある。

参考文献

近視、強度近視では緑内障手術を要するリスクが最大約4倍に上昇―1400万人追跡調査で判明―(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-01-08-0

東北大学が緑内障を見つけるAIを開発、初期段階の緑内障に強い(PREVONO)
https://prevono.net/research/345/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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