研究

肺がん検診の対象者を血液検査で選べるか

13種類のタンパク質を活用、低線量CT検診の効果向上に期待

検査担当者が、血液検体の入った採血管をラックに並べている様子。
血液検査で用いる検体を扱う検査室。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 肺がん検診では、低線量CTが肺がんによる死亡率を下げることが知られている。

 一方で、年齢や喫煙歴だけでは、検診を受けるべき高リスク者を十分に選びきれない場合がある。

 国際がん研究機関(IARC)などの研究グループは、血液中の13種類のタンパク質を使って肺がんリスクを予測する方法を検証し、2026年5月に医学誌JAMAで報告した。

喫煙歴だけでは拾いきれない肺がん

医療スタッフが操作室から、CT検査を受ける患者の様子を確認している。
CT検査を受ける患者を操作室から確認する医療スタッフ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 低線量CTによる肺がん検診は有効だが、年齢や喫煙歴だけでは高リスク者を十分に選びきれない場合がある。
  • 研究グループは、年齢や喫煙歴に加え、血液中の13種類のタンパク質を組み合わせる「INTEGRAL-Risk」に注目した。
  • 喫煙歴のある約3700人のデータを用いて、将来肺がんを発症する人をどの程度見分けられるかが検証された。

 現在の肺がん検診では、一定以上の喫煙歴がある人が主な対象とされている。たばこは肺がんの大きな危険因子であり、喫煙歴の長い人に低線量CT検診を行うことで、肺がんによる死亡を減らせることが示されてきた。

 一方で、肺がんを発症する人すべてが、現在の検診基準に当てはまるわけではない。喫煙歴があっても、年齢、喫煙量、禁煙からの期間などの条件によって、検診対象から外れる人がいる。

 そのため、低線量CT検診の効果が確認されていても、検診の対象にならない人から肺がんが見つかることがある。年齢や喫煙歴だけで対象者を選ぶことには限界がある。

 研究グループは、この課題を補う方法として、血液中のタンパク質に注目した。今回検証したのは「INTEGRAL-Risk(インテグラル・リスク)」と呼ばれる予測モデルだ。年齢や喫煙歴に加え、血液中に存在する13種類のタンパク質の測定結果を組み合わせ、肺がんリスクを推定する。

 研究グループはこれまでに1000種類以上のタンパク質を調べ、その中から将来の肺がん発症と関連する13種類を選び出していた。

 今回の研究では、IARCが運営する国際共同研究「Lung Cancer Cohort Consortium(LC3)」に参加する複数の研究データを用いた。喫煙歴のある約3700人を対象に、将来肺がんを発症するかどうかを追跡し、INTEGRAL-Riskの性能を評価した。

 研究では、INTEGRAL-Riskと、従来のリスク予測モデル、さらに米国の肺がん検診基準を比較した。従来のリスク予測モデルとは、年齢、喫煙歴、禁煙からの期間などを質問票で確認し、肺がんリスクを推定する方法だ。米国の検診基準は、年齢や喫煙量などの条件に当てはまる人を低線量CT検診の対象とする基準を指す。

 解析対象は、喫煙歴のある3695人だった。このうち1390人は、血液採取後3年以内に肺がんと診断されていた。研究グループは、データを開発用と検証用に分け、モデルが実際に肺がんを発症する人をどの程度見分けられるかを調べた。

血液検査で肺がん高リスク者をより正確に抽出

医師がCT検査装置のそばで、検査台に横たわる患者に説明している様子。
肺がん検診などで用いられるCT検査の場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • INTEGRAL-Riskは、検査後1年以内に肺がんと診断される人を、従来の質問票より高い精度で見分けられた。
  • 同じ規模で低線量CT検診に回す場合、INTEGRAL-Riskは1年以内に肺がんと診断された人の85%を拾い上げた。
  • 血液検査を使ってCT検診の対象者をより正確に選ぶことで、不必要なCT検査を減らしつつ、検診の効果を高められる可能性がある。

 解析の結果、特に性能が高かったのは、検査後1年以内の肺がんを予測する場合だった。

 検査後1年以内に肺がんと診断される人をどれだけ見分けられるかを比べると、血液中の13種類のタンパク質を使ったINTEGRAL-RiskのAUCは0.88だった。従来の質問票による方法のAUCは0.79だった。AUCの数値は1に近いほど見分ける力が高く、血液中のタンパク質を加えた方が、近い将来肺がんになる人をより正確に見分けられたことを示している。

 さらに、低線量CT検診に回す人数を同じくらいにそろえて比べると、違いはより分かりやすい。INTEGRAL-Riskは、1年以内に肺がんと診断された人の85%を検診対象として拾い上げた。質問票による方法では70%、米国の現在の検診基準では63%だった。

 低線量CTを行う前の段階で、血液中のタンパク質を使って対象者をより適切に選ぶことで、同じ規模の検診でも、近い将来に肺がんと診断される人をより確実に検診へつなげられる可能性がある。

 ただし、予測性能は時間が長くなるほど少し下がっていた。INTEGRAL-RiskのAUCは、2年以内の予測で0.84、3年以内では0.81だった。血液検査は、特に近い将来の肺がんリスクを見積もる方法として役立つ可能性がある。

 研究グループは、この方法は低線量CT検診そのものを置き換えるものではなく、「誰にCT検診を受けてもらうべきか」をより正確に判断する手段だとしている。肺がん検診では、対象を広げれば見つかる肺がんは増える一方で、不必要なCT検査も増える。血液検査によって高リスク者をより正確に選べれば、検診の利益を高めながら不利益を減らせる可能性がある。

参考文献

New study finds that blood test could increase the impact of lung cancer screening with low-dose computed tomography(IARC)
https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2026/05/pr380_E.pdf

Zahed H, Feng X, Alcala K, Smith-Byrne K, Moez E, Guida F, Albanes D, Weinstein SJ, Arslan AA, Cai Q, Shu XO, Zheng W, Chen C, Triplette M, Tinker LF, Langhammer A, Nøst TH, Hveem K, Milne RL, Bassett JK, Sheikh M, Malekzadeh R, Wang Y, Patel AV, Visvanathan K, Yuan JM, Wang R, Koh WP, Sesso HD, Zhang X, Johansson MB, Amos C, Hung RJ, Muller D, Robbins HA, Johansson M. Biomarker-Based Eligibility for Lung Cancer Screening: Validation of the Protein-Based INTEGRAL-Risk Model. JAMA. 2026 May 18:e268044. doi: 10.1001/jama.2026.8044. Epub ahead of print. PMID: 42149699; PMCID: PMC13184794.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42149699/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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