コラム

全身MRI「DWIBS」は、がんスクリーニングの新たな選択肢になるか

CTとの比較で見えた検出力と、全身を見ることで生じる「見つかりすぎ」の課題

MRI検査装置のそばで、検査台に横たわる患者に医師が対応している様子。
MRI検査を受ける患者と対応する医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 PREVONOでは、造影剤を使わずに全身のがんを調べるMRI技術「DWIBS(ドゥイブス)」について見てきた。乳がん検診や精密検査、診療への応用を取り上げてきたが、DWIBSの特徴の一つに「全身を一度に見られること」もある。その可能性が検証されている。

CTと比べてどうなのか

白い検査室に設置された大型の画像診断装置と検査台。
がんの発見や精密検査では、目的に応じてCTやMRIなどの画像検査が選択される。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • DWIBSは造影剤を使わずに全身を一度に見られるMRI技術として、がんスクリーニングへの応用が検討されている。
  • 関節リウマチ患者524人を対象にした日本の研究では、胸部から骨盤までのCTとDWIBSの性能が比較された。
  • がん検出の感度はCTが75%、DWIBSが93.8%で、DWIBSは少なくともCTと同等の性能を示す可能性が示された。

 DWIBSが本当に全身のがん検査として役立つのかを調べた研究の一つが、関節リウマチ患者524人を対象にした日本の研究だ。

 関節リウマチでは、免疫に関わる治療を行うこともあり、治療前後に悪性腫瘍の有無を確認することが重要になる。

 千葉県鎌ケ谷総合病院と東京女子医科大学の研究グループは、胸部から骨盤までのCTとDWIBSを比較し、どのような情報が得られるかを調べた。

 実際に見つかったがんは16例で、前立腺がん7例、肺がん4例、乳がん2例のほか、子宮がん、卵巣がん、卵管がんが含まれていた。

 がんがある場合に陽性と判定する割合である感度はCTが75%、DWIBSが93.8%だった。統計学的な有意差はなかったものの、DWIBSは少なくともCTと同等の性能を示した。

 さらに、がんがない場合に陰性と判定する割合である特異度は、CTの76.0%に対してDWIBSは85.8%だった。不要な精密検査につながる可能性のある偽陽性を減らせる可能性も示された。

 この研究は、DWIBSが全身のがんスクリーニングでCTに匹敵する選択肢になり得ることを示している。

全身を見るほど増える「偶然の発見」

検査台に横たわる患者が、医療スタッフの介助を受けながらMRI検査を受けている様子。
MRI検査を受ける患者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 全身MRIでは、本来の検査目的とは別に見つかる偶発所見が増える可能性がある。
  • 前立腺がん患者124人の研究では334件の偶発所見が見つかり、その一部は追加検査や経過観察が必要と判断された。
  • DWIBSは再発や転移の確認にも役立つ可能性がある一方、どの所見を追跡すべきかを整理することが課題になる。

 しかし、全身を詳しく見る検査には別の側面もある。

 前立腺がん患者124人を対象とした群馬大学などの研究では、DWIBSを含む全身MRIで334件の偶発所見が見つかった。

 偶発所見とは、検査の本来の目的とは別に見つかる異常のことである。

 そのうち27件(8.1%)は、追加検査や経過観察が必要と判断されていた。

 平たく言えば、全身を詳しく見ることで、思いがけない病変が見つかることがあるということだ。膵臓の病変や心拡大、腫瘍などが見つかった。

 その中には、早期発見につながる重要な病変も含まれる。しかし一方で、追加検査や患者の不安につながる可能性もある。

 DWIBSが広く使われるようになれば、「どこまで調べるべきか」「どの所見を追跡すべきか」という新たな課題も生まれる。

 全身を見られることは、再発や転移を調べる場面では大きな利点になる。肺がん術後患者55人を対象とした金沢医科大学の研究では、術後の経過観察でCT、DWIBS、FDG-PET/CTを比較した。55人のうち32人で再発が確認され、肺転移、骨転移、肝転移、リンパ節転移、胸膜転移など、さまざまな部位に病変が見つかっていた。

 DWIBSによる再発・転移検出の正確度は55人中54人で0.98だった。CTとFDG-PET/CTはいずれも55人中52人で0.94であり、統計学的な差はなかったものの、DWIBSはほぼ同等の成績を示した。

 費用面でも差があった。論文では、DWIBSを含むMRI検査の費用は123ドル(1ドル160円とすると、日本円で1万9680円)で、FDG-PET/CTの798ドル(同12万7680円)より大幅に低いとされている。全身を一度に確認でき、放射線被ばくも伴わない点を考えると、術後の再発確認のように繰り返し検査が必要になる場面で、DWIBSが選択肢になる可能性がある。

 DWIBSは、全身を一度に見られる検査として、がんの発見や再発確認に役立つ可能性がある。

 一方で、見える範囲が広がれば、偶然見つかる所見も増える。どの場面で使うと利益が大きいのかを見極めることが重要になる。

参考文献

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Kumasaka S, Motegi S, Kumasaka Y, Nishikata T, Otomo M, Tsushima Y. Whole-body magnetic resonance imaging (WB-MRI) with diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS) in prostate cancer: Prevalence and clinical significance of incidental findings. Br J Radiol. 2022 Mar 1;95(1131):20210459. doi: 10.1259/bjr.20210459. Epub 2021 Jun 16. PMID: 34111963; PMCID: PMC8978253.
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33476488/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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