大腸がん検診で問題になるのは、便潜血検査で異常を拾い上げた後だ。
要精密検査と判定されても、全大腸内視鏡検査に進まない人がいる。前処置が大変そう、痛みが心配、恥ずかしい、仕事を休みにくい、過去の検査がつらかった。理由はさまざまだが、精密検査を受けなければ、便潜血検査で得られた警告を生かせない。
第65回日本消化器がん検診学会総会で論点になった大腸CTは、この「精密検査に進みにくい人」をどう拾うかという課題に関わる。
全大腸内視鏡が精密検査の中心であることは変わらない。大腸の粘膜を直接観察し、必要に応じて組織を採取したり、ポリープを切除したりできるからだ。
ただし、全員が問題なく内視鏡を受けられるわけではない。そこで、内視鏡に強い抵抗がある人や、何らかの理由で内視鏡に進みにくい人を、検診の流れから落とさない選択肢として大腸CTが浮かぶ。
大腸CTは内視鏡への橋渡しになる
大腸CTは、内視鏡に進みにくい人を精密検査につなげる選択肢になり得る。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 大腸CTは、CTで大腸内部を画像評価する検査で、内視鏡に強い抵抗がある人の選択肢になり得る。
- 病変を疑うことはできるが、その場で組織採取やポリープ切除はできず、異常があれば大腸内視鏡が必要になる。
- 精密検査を受けないままになりそうな人を、必要な診断や治療へつなぐ「橋渡し」としての役割が期待される。
大腸CTは、CTを使って大腸の内側を画像として評価する検査になる。CTコロノグラフィとも呼ばれる。
検査では、腸管の前処置を行ったうえで、肛門から二酸化炭素などを入れて大腸を広げ、CTで撮影する。内視鏡のようにスコープを大腸の奥まで進めるわけではないため、内視鏡に強い抵抗がある人には受けやすい場合がある。
ただし、大腸CTは内視鏡の代わりにすべてを担う検査ではない。
画像で病変を疑うことはできても、その場でポリープを切除することはできない。病変が疑われた場合には、最終的に大腸内視鏡で確認し、必要に応じて組織検査や切除を行う必要がある。
このため、大腸CTを検診に組み込むなら、あらかじめ出口を決めておく必要がある。どの大きさや所見で内視鏡へ進めるのか。どの医療機関につなぐのか。大腸CTで異常なしだった人を、次の検診にどう戻すのか。
大腸CTは、内視鏡を避けるための検査ではない。精密検査を受けないままになりそうな人を、必要な診断へ橋渡しする検査と考える方が実態に近い。
腸管外所見を決めずに始められない
大腸CTを検診に組み込むには、読影体制や腸管外所見の扱い、内視鏡への連携が課題となる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 大腸CTでは、大腸だけでなく肝臓や膵臓、腎臓、血管などに偶然異常が見つかる場合がある。
- 腸管外所見は病気の発見につながる一方、追加検査や不安、費用負担を増やす可能性もある。
- どの所見を報告し、追加検査や経過観察につなげるかを事前に定め、標準化して運用することが重要となる。
大腸CTには、もう一つの論点がある。大腸以外の所見、いわゆる腸管外所見だ。
CTでは、大腸だけでなく周囲の臓器や組織も画像に映る。肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、副腎、血管などに、目的外の異常が見つかることがある。
重要な病気の発見につながる場合もある。一方で、追加検査、不安、費用負担、医療資源の消費につながることもある。偶然見つかった所見を、すべて前向きな発見と見なすことはできない。
だからこそ、腸管外所見をどう扱うかを事前に決める必要がある。
どの所見を報告するのか。どの所見を追加検査へつなげるのか。どの所見は経過観察でよいのか。受診者にどう説明するのか。ここが曖昧なままだと、検査後の対応は混乱する可能性が高い。
米国を中心とする海外では、CTコロノグラフィ(大腸CT)の所見を標準化して報告する「C-RADS」と呼ばれる枠組みが使われている。大腸の所見と腸管外の所見を分けて分類し、結果の伝達、その後の対応方針の整理、品質管理や検査成績の評価に生かす仕組みとなる。
大腸CTを検診のどこに置くか
大腸CTで病変が疑われた場合は、内視鏡による確認や切除につなげる必要がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 大腸CTは全大腸内視鏡を置き換える検査ではなく、要精密検査者を診断につなぐ選択肢として位置づける必要がある。
- 導入には、内視鏡への紹介体制、腸管外所見の扱い、読影体制、その後の結果を追跡する仕組みが欠かせない。
- 便潜血検査、大腸CT、内視鏡、診断、治療までをつなぎ、結果を次の検診に戻す組織型検診として設計することが重要となる。
大腸CTを検診や精密検査の中に位置づけるなら、撮影や読影の技術だけを整えて済むものではない。
大腸病変をどう判定するか。腸管外所見をどこまで伝えるか。異常が疑われた人をどこへ紹介するか。その後、実際に内視鏡や精密検査につながったのかまで追う必要がある。
大腸CTは、全大腸内視鏡を置き換える検査ではない。病変が疑われれば、最終的には内視鏡で確認し、必要に応じて組織検査や切除を行うことになる。
一方で、内視鏡に強い抵抗がある人を、精密検査未受診のままにしないための選択肢にはなる。便潜血検査で要精密検査となった人を検診の流れから落とさず、必要な診断へつなぐ受け皿としての役割だ。
その意義を評価するには、大腸CTを受けた人が、その後に内視鏡へ進んだのか、がんや前がん病変が見つかったのか、腸管外所見による追加検査がどの程度あったのかを追う必要がある。
ここで必要になるのは、検査を一回で終わらせない仕組みだ。便潜血検査、大腸CT、全大腸内視鏡、診断、治療、その後の経過をつなぎ、結果を検診の精度管理に戻していく。こうした流れを作れなければ、大腸CTを加えても、検診全体の効果は評価しにくい。
これは、学会で繰り返し示された組織型検診の考え方にも重なる。検査を増やすことではなく、要精密検査となった人を必要な診断につなげ、その結果を戻し、次の検診に生かす仕組みを作ることが求められる。
大腸CTは、内視鏡に進みにくい人を検診から落とさない選択肢になり得る。ただし、その位置づけは、大腸CTだけで決まるものではない。内視鏡との連携、腸管外所見の扱い、読影体制、結果の回収、データ管理まで含めて設計する必要がある。