高血圧や2型糖尿病のある人で、心臓や腎臓の異常を早い段階で見つけるための尿検査が十分に行われていないとして、検査の普及を促す取り組みが世界規模に広がる。
ベーリンガーインゲルハイムが2026年9月、尿中アルブミン・クレアチニン比(uACR)の検査普及を目指す「Detect the SOS」を世界展開すると発表した。
高血圧や糖尿病でも「尿の異常」は見逃されやすい
尿検査で使用する検体カップのイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
高血圧や2型糖尿病がある人では、心血管疾患や慢性腎臓病のリスクが高くても、尿中アルブミン・クレアチニン比(uACR)検査が十分に行われていない。
尿中アルブミン・クレアチニン比は、尿中のアルブミンとクレアチニンの比から、腎臓や血管への負担を示すアルブミン尿の有無を調べる検査。
ガイドラインでも推奨される一方、検査実施率は低く、米国やドイツの研究でも十分に普及していないことが示されている。
高血圧や2型糖尿病があると、心血管疾患や慢性腎臓病のリスクが高くなる。血圧や血糖値が比較的安定していても、心筋梗塞や脳卒中、心不全、慢性腎臓病につながるリスクが隠れていることがあると、ベーリンガーインゲルハイムは説明している。
そこで手掛かりになるのが、尿中アルブミン・クレアチニン比だ。尿中のアルブミンとクレアチニンの比を調べ、アルブミンがどの程度尿に漏れ出しているかを評価する検査で、尿中のアルブミンが増える「アルブミン尿」は、腎臓や血管に負担がかかっている兆候の一つとされる。
発表資料によると、尿中アルブミン・クレアチニン比検査は簡単で費用も比較的低く、診療ガイドラインでも推奨されている。一方、高血圧や2型糖尿病などで慢性腎臓病のリスクがある人でも、実際に検査を受けている割合は50%を下回るという。
国によって差も大きい。ベーリンガーインゲルハイムが紹介した研究では、米国で高血圧と2型糖尿病の両方がある対象者のうち、尿中アルブミン・クレアチニン比検査を受けていたのは21%だった。ドイツの約100万人を対象にした研究では、実施率が1%未満だったとしている。
尿中のたんぱく質から心臓のリスクも把握
トイレで尿を採取して検査に用いる。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
尿中アルブミン・クレアチニン比は腎臓だけでなく、心不全や心筋梗塞、脳卒中など心血管疾患のリスクを把握する手掛かりに。
アルブミン尿が多いほど、心血管疾患や心血管死のリスクが高くなることが複数の研究で示されている。
ベーリンガーインゲルハイムなどは「Detect the SOS」を世界規模に広げ、uACR検査を定期的な健康チェックなどに組み込むよう働き掛ける。
尿中アルブミン・クレアチニン比は腎臓の状態を調べる検査として知られているが、心血管疾患のリスクを把握する材料にもなる。
発表資料では、アルブミン尿が多いほど、心不全や心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡のリスクが高くなることが複数の研究で示されているとしている。同社は、尿中アルブミン・クレアチニン比が30mg/g以上の人では、心不全のリスクが90%超、心血管疾患による死亡リスクが70%超、心筋梗塞や脳卒中のリスクが60%超高かったとする研究結果も紹介している。
こうした検査の不足を改善するため、今回の「Detect the SOS」には、欧州腎臓患者連盟、心疾患患者を支援するメンデッド・ハーツ・ヨーロッパ(Mended Hearts Europe、世界心臓連盟も参加する。高血圧や2型糖尿病の人が定期的に尿中アルブミン・クレアチニン比検査を受けられるよう、プライマリケアで行われる健康チェックなどに尿中アルブミン・クレアチニン比検査を組み込むよう働き掛ける。
今回の発表は、新しい検査そのものを開発したという内容ではない。すでにある簡単な尿検査が十分に使われていないことを課題として示し、心臓と腎臓のリスクを早い段階で見つけるために、検査を広く定着させようという取り組みだ。
高血圧や2型糖尿病では、血圧や血糖値だけでなく、尿の中にたんぱく質が漏れていないかを確認することで、自覚症状などからは分かりにくい心臓や腎臓のリスクを捉えられる可能性がある。