原因不明の発熱が続く場合、その背景に悪性リンパ腫が隠れていることがある。そうした悪性リンパ腫について、採血によって血液中の遺伝子を解析する方法が、従来の皮膚や骨髄を調べる検査よりも高い検出率を示した。
藤田医科大学、名古屋医療センターの研究グループが、2026年10月3日、米国血液学会の医学誌で報告した。
リンパ節が腫れず、発熱だけが症状となる場合も
血液中のDNA断片を解析し、悪性リンパ腫に特徴的な遺伝子変異を調べる検査が研究されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 解析対象49人中28人(57%)が悪性リンパ腫と診断され、うち17人が血管内大細胞型B細胞リンパ腫だった。
- 17人のうちデジタルPCR法では16人(94.1%)、次世代シーケンス法では17人全員で特徴的な遺伝子異常を検出。
- 皮膚生検と骨髄検査の検出率はともに53%。採血による検査の有用性が示されたが、確定診断には他の検査との組み合わせが必要。
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化して増殖する病気で、さまざまな種類がある。
一般的には、リンパ節の腫れなどをきっかけに見つかり、画像検査や組織を採取する検査によって診断される。
しかし、一部にはリンパ節が腫れず、発熱だけが症状となるものもある。その一つが「血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)」だ。がん細胞が主に血管の中で増殖するため、画像検査でも異常を見つけにくく、診断が遅れることがある。従来は、皮膚の一部を採取する「皮膚生検」や、骨の内部にある骨髄を調べる「骨髄検査」などを行ってきた。ただし、これらの検査でも悪性リンパ腫を見つけられない場合があり、体への負担も伴う。
そこで研究グループは、原因不明の発熱が続き、悪性リンパ腫が疑われる50人を登録し、採血による遺伝子解析の有用性を調べる前向き研究を実施した。解析対象となったのは49人だった。対象者は、38度以上の発熱が3週間以上続き、抗菌薬で改善せず、血液検査や画像検査などから悪性リンパ腫が疑われた人たちだ。
血液中に含まれるDNA断片を取り出し、がんに特徴的な遺伝子変異を調べる「リキッドバイオプシー」という方法を用いた。検査には、特定の遺伝子変異を高感度に調べるデジタルPCR法や、複数の遺伝子をまとめて調べる次世代シーケンス法を使用した。
採血による遺伝子検査は94%で陽性
原因不明の発熱が続き、悪性リンパ腫が疑われる人を対象に、採血による遺伝子解析の有用性が検証された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
研究の結果、解析対象49人のうち28人(57%)が最終的に悪性リンパ腫と診断された。このうち17人は血管内大細胞型B細胞リンパ腫で、解析対象全体の35%を占めた。この17人について、従来の皮膚生検では検査を受けた15人中8人(53%)、骨髄検査では17人中9人(53%)で悪性リンパ腫を検出した。
一方、血液から得られたDNAを調べるデジタルPCR法では、17人中16人(94.1%)で、悪性リンパ腫に特徴的なMYD88またはCD79B遺伝子の変異が見つかった。さらに、次世代シーケンス法による幅広い遺伝子解析では、17人全員で特徴的な遺伝子異常が検出された。
この結果から、採血による遺伝子解析は、従来の検査で見つけにくい悪性リンパ腫を検出する手段として有用である可能性が示された。研究グループによると、デジタルPCR法は幅広い遺伝子を解析する方法と比べて費用を抑えやすく、比較的短期間で結果を得られる利点もある。
ただし、採血による遺伝子解析だけでは確定診断には至らず、臨床症状や画像検査、組織検査などと合わせて判断する必要がある。今後は臨床現場での導入や、診断までの時間短縮などの効果を検証することが重要になる。