東北大学の研究グループは、40~49歳女性7万人以上を約15年にわたって追跡調査することにより、マンモグラフィに超音波検査を併用することで進行乳がんの累積罹患率を有意に減らせることを示した。
同大学によれば、マンモグラフィ+超音波検査による進行乳がんの抑制効果が、信頼性が高いとされるランダム化比較試験(RCT)という手法により、7万人以上の大規模研究で示されたのは世界で初めて。
成果は2026年2月20日付で国際的に評価の高い医学誌『The Lancet』電子版に掲載された。
高濃度乳房が多い40代、検診の課題
乳房構成(高濃度乳房など)の違いを示したマンモグラフィ画像。発表資料によると、乳腺が白く、脂肪が黒く写るため、乳腺が多い乳房では白く濃く写る。この乳腺が多いタイプを「高濃度乳房」と呼び、アジア人や若年層に多いとされる。画像はイメージ。(出典:東北大学)
- 40代女性の約6~7割は「高濃度乳房」で、マンモグラフィでは腫瘍が見えにくい。
- J-STARTは7万人超を対象にした世界初の大規模RCTとして実施された。
- 超音波併用で早期がん発見率は向上したが、当初は進行がん抑制効果は示されなかった。
乳がんは日本人女性において最も罹患数が多いがんであり、死亡率も増加傾向にある。乳がんの早期診断と早期治療が求められる中で、従来、死亡率の減少効果が証明されている検診法としてマンモグラフィが推奨されている。
一方で、40代では乳腺密度の高い「高濃度乳房」が約6~7割を占め、腫瘍が乳腺に隠れて見えにくいという課題がある。特にアジア人や若年女性ではこの傾向が強いとされる。
日本国内で行われた研究である「J-START」は、この課題に対し科学的根拠を確立するために計画された世界初の大規模RCT(ランダム化比較試験)となる。ランダム化比較試験とは、対象者を複数のグループに分けて、それぞれのグループにランダムに異なる検査や治療を受けてもらい、その効果を比較する手法だ。
今回の研究では、2007年から2011年にかけて全国42施設で7万6196人が登録され、7万2998人がマンモグラフィを単独で受けるグループとマンモグラフィと超音波を併用するグループに無作為に割り付けられた。初回検診と2年後の検診を実施し、最終的に7万2661人が解析対象となった。
2015年度に公表された第一報では、超音波併用により早期乳がんの発見率が約1.5倍に向上することが示された。しかし一方で、進行がんの発見数には差がなかった。しかも、病気ではないにもかかわらず偽陽性による追加検査の増加といった不利益も報告されていた。
今回の解析では、約15年間の長期追跡データを用いて、進行乳がん(ステージII以上)の累積罹患率が検証された。
進行乳がんリスク17%低下、10年累積罹患率も改善
マンモグラフィ検査を受ける女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- マンモグラフィ+超音波により進行乳がんのリスクが17%低下(ハザード比0.83)。
- 10年累積罹患率は併用0.64%、単独0.79%と有意差が確認された。
- 長期RCTで進行乳がん抑制効果が科学的に示され、40代検診の重要な根拠となる。
この結果、マンモグラフィ+超音波の組み合わせにより、進行乳がんのリスクが17%低下することが確認された。
具体的には、長期追跡の結果、乳がんは併用グループで894例、単独グループで843例確認された。このうち進行乳がんは併用グループ234例(26%)、単独グループ277例(33%)だった。累積罹患率で比較すると、併用グループは単独グループに比べ有意に低く、ハザード比は0.83だった。これはリスクが17%減少したことを示す。
10年時点の進行乳がん累積罹患率は、併用グループ0.64%に対し単独グループ0.79%であった。検診開始後4年目から8年目にかけて両グループの差が拡大し、その後はおおむね一定の差を保つ傾向が認められた。
これらの結果は、超音波併用が単に早期がんの発見数を増やすだけでなく、将来的な進行乳がんの発生を抑制し得ることを示すものとなる。
マンモグラフィ+超音波による乳がん検診のメリットが、進行乳がん抑制という観点から、世界初の長期RCTによるデータとして科学的に示されたことになる。高濃度乳房が多い40代女性に対する検診の方法を決める上で重要な科学的根拠となると考えられる。