研究

100歳超の健康を映す血液のサイン

慶應義塾大学などが百寿者研究で報告、神経や体の傷みを反映する血液成分「NfL」と認知機能・死亡リスクが関連

手首を押さえる高齢女性。関節の痛みやこわばりを示す様子。
手首や指の痛みを気にする高齢女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 100歳以上の人で、血液中の成分と、認知機能や死亡リスクとの間に関連があることが示された。

 慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターなどの研究チームが、2026年5月に発表した。

100歳以上の495人を調べる

屋外で家族が並んで座り、スマートフォンで自撮りをしている様子。
屋外で笑顔を見せる三世代の家族。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 100歳以上の人は「百寿者」と呼ばれる。長く生きるだけでなく、どのように健康や認知機能を保っているのかを知る上で、重要な研究対象とされている。

 慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターは、30年以上にわたり百寿者の研究を続けてきた。これまでの研究から、百寿者では重度のアルツハイマー病になる割合が低いことや、独自の認知特性を示すことなどが分かっている。

 今回の研究では、2000年から2021年に集められた日本人百寿者495人のデータを解析した。平均年齢は104.1歳で、女性が80.4%だった。研究チームは、認知機能を調べる検査と血液検査を行い、その後の経過を最長17年間追跡した。

 血液検査で調べたのは、主に3つの成分だ。アルツハイマー病との関係で知られる「アミロイドβ42/40比」、「リン酸化タウ181」、そして「NfL」だ。

 アミロイドβ42/40比は、アルツハイマー病で脳に蓄積するアミロイドβというタンパク質に関わる血液中の指標だ。構成するアミノ酸の数が異なるアミロイドβの比率を表している。これまで認知症リスクを評価する候補として研究されてきた。

 リン酸化タウ181は、神経細胞にあるタウタンパク質が変化したものの一つ。181という数字は、タウタンパク質の中でリン酸化という変化が起きた位置を示す。アルツハイマー病の進行や脳の病態を反映する指標として注目されている。

 NfLは、神経細胞の軸索と呼ばれる部分にあるタンパク質だ。神経が傷つくと血液中で増えやすいとされ、アルツハイマー病だけでなく、血管障害やパーキンソン病など、幅広い脳や神経の変化を反映する指標として研究されている。

NfLが高い人で認知機能や死亡リスクに違い

ソファに座る高齢男性に、若い女性が後ろから寄り添っている様子。
自宅でくつろぐ高齢男性と家族。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 3つの血液成分のうち、最もはっきりした関連を示したのはNfLだった。
  • NfLが高い百寿者では、認知機能検査の点数が低く、死亡リスクも高い傾向が見られた。
  • アミロイドβ42/40比やリン酸化タウ181は、今回の研究では認知機能や死亡リスクとの明確な関連を示さなかった。

 研究の結果、3つの成分の中で最もはっきりした関連を示したのはNfLだった。

 まず、血液中のNfLが高い百寿者では、認知機能検査の点数が低い傾向が見られた。この検査は「MMSE」と呼ばれ、記憶、計算、言葉の理解などを確認して認知機能を評価するものだ。

 さらに、NfLが高い人では、追跡期間中の死亡リスクも高かった。ここでいう死亡リスクは、特定の病気に限らず、あらゆる原因による死亡をまとめて見たものだ。

 一方で、アルツハイマー病との関係で知られるアミロイドβ42/40比やリン酸化タウ181は、今回の百寿者では、認知機能や死亡リスクとはっきりした関連を示さなかった。

 研究グループは、NfLが100歳を超える人の神経の変化や健康状態を表す指標になり得ると見ている。血液検査でこうした変化を捉えられるようになれば、将来的には、認知機能の低下や体調の変化を早く知り、一人ひとりに合った支援につなげる研究が進む可能性がある。

参考文献

百寿者における血液バイオマーカーと認知機能・死亡リスクの関連を解明 -NfLが認知機能低下と全死亡リスクの有力指標-(慶應義塾大学)
https://www.keio.ac.jp/ja/press-release/20260513-press-01/

Shikimoto R, Sasaki T, Abe Y, Tai K, Hirose N, Okano H, Arai Y. Biomarkers, Cognitive Function, and Mortality in Centenarians. JAMA Netw Open. 2026 May 1;9(5):e2611335. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2026.11335. PMID: 42096201; PMCID: PMC13153989.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42096201/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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