研究

AIで推定した「顔年齢」はがん患者の生存率と関係するか

ハーバード大学などが、顔写真から見た目の年齢と生存率を解析

カメラマンが人物を撮影している様子。
人物撮影を行うカメラマン。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 AI(人工知能)で推定した「顔年齢」が、がん患者の生存率と関係する可能性が示された。

 米国ハーバード大学医学部などの研究グループが、顔写真から推定した顔年齢とがん患者の生存率との関係を解析。2026年5月に、この研究を紹介した。

実年齢より若く見える患者は死亡リスクが低い傾向

室内でスマートフォンを使い、自分を撮影する女性。
スマートフォンで自分を撮影する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • がん治療では実年齢が重要な情報になる一方、同じ年齢でも体力や治療に耐えられる力には差がある。
  • 研究グループは、患者の体の状態の違いが顔に表れる可能性に注目し、顔写真から顔年齢を推定するAI「FaceAge」を使った。
  • 60歳以上のがん患者2万4556人を対象に、AIが推定した顔年齢と生存率との関係が調べられた。

 がん治療では、患者の年齢が治療方針を考える上で重要な情報になる。

 ただし、同じ70歳でも、体力や治療に耐えられる力には大きな差がある。研究グループは、こうした体の状態の違いが、顔に表れる可能性に注目した。

 今回使われたのは、顔写真から「顔年齢」を推定するAI「FaceAge」だ。顔年齢とは、実際の年齢ではなく、顔の特徴から見た目として推定される年齢を指す。

 研究グループは2つの方向から検証した。

 一つは、放射線治療を受けた60歳以上のがん患者2万4556人について、顔年齢と生存率の関係を調べる研究だ。

 もう一つは、放射線治療中に撮影された2回の顔写真を比べ、治療中に顔年齢がどのくらい変化するかを調べる研究で、対象は2276人だった。

顔年齢と老化の速さが生存率と関連

カメラマンが笑顔の女性を撮影している様子。
スタジオで人物写真を撮影する場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • がん患者の65%では、AIが推定した顔年齢が実年齢より高く、中央値では実年齢70歳に対して顔年齢は74歳だった。
  • 顔年齢が実年齢より10歳以上高い患者では死亡リスクが高く、5歳以上若い患者では死亡リスクが低い傾向が示された。
  • 顔写真から患者の体の状態や老化の変化を読み取り、がん治療の判断を支える補助技術になる可能性がある。

 解析の結果、がん患者の65%では、AIが推定した顔年齢が実年齢より高かった。中央値では、実年齢が70歳だったのに対し、顔年齢は74歳だった。

 顔年齢と実年齢の差は、生存率とも関係していた。顔年齢が実年齢より10歳以上高い患者では死亡リスクが高く、30日以内や60日以内の早期死亡リスクも高かった。一方で、顔年齢が実年齢より5歳以上若い患者では、死亡リスクが低い傾向が示された。

 さらに、治療中の顔年齢の変化にも同じ傾向が見られた。放射線治療中に顔年齢の上がり方が速い患者では、生存期間が短かった。

 治療間隔が短い患者では、顔年齢の上昇が速い群の生存期間中央値が4.1カ月だったのに対し、上昇が遅い群では6.5カ月だった。治療間隔が最も長い患者群でも、顔年齢の上昇が速い群は15.2カ月、上昇が遅い群は36.5カ月だった。

 これは、顔写真だけでがんを診断するという話ではない。顔に表れる老化の度合いや変化の速さが、患者の体の状態や治療への耐えやすさを反映し、予後を考える手掛かりになる可能性を示した研究だ。

 研究グループは、顔年齢の情報が、治療方針を考える補助材料になる可能性があると見ている。実年齢だけでは分かりにくい患者の体の状態を、顔写真から推定できる可能性があるためだ。

 一方で、この技術はまだ研究段階にある。顔写真だけでがんを診断したり、CTやMRIなどの検査を置き換えたりするものではない。

 顔写真という身近な情報から、患者の状態やその後の経過を推定しようとする点は新しい。将来的には、がん診療で患者ごとの治療を考えるための補助技術になる可能性がある。

参考文献

Predicting cancer outcomes with a selfie(Harvard Gazette)
https://news.harvard.edu/gazette/story/2026/05/predicting-cancer-outcomes-with-a-selfie/

Lee G, Haugg F, Bontempi D, He J, Zalay O, Bitterman DS, Catalano P, Prudente V, Pai S, Guthier C, Kann BH, De Ruysscher D, Aerts HJWL, Mak RH. FaceAge as a biomarker for prognosis and treatment stratification in a large-scale oncology cohort. J Natl Cancer Inst. 2026 May 1;118(5):811-821. doi: 10.1093/jnci/djaf323. PMID: 41259012.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41259012/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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