研究

働く世代の健診で見つかる心房細動に注意 脳梗塞5倍・心不全18倍の入院リスクを約1000万人で検証

京都大と広島大の研究チームが発表

心電図検査を受ける患者と、心電図の記録紙を確認する医療従事者の手元。
心電図検査で心房細動の兆候を確認する医療現場。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 働く世代の健康診断で、本人が自覚していない不整脈の一つである心房細動が、将来の脳梗塞や心不全のリスクに関連していることが、国内最大規模のデータで示されている。

 京都大学の研究チームが2025年9月に報告。研究成果は国際学術誌の「Circulation」に2025年9月25日付で掲載された。

無症状でも起こる心房細動

心電図の波形が印刷された用紙を手に持ち、赤いペンで所見を確認する医療従事者。
心電図データをもとに心房細動の有無やリスクを評価する様子。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 心房細動は自覚症状がないことも多く、健診の心電図で偶然見つかるケースがある。
  • 心房細動は脳梗塞や心不全などの重大な健康リスクにつながる可能性がある。
  • 約950万人の健診データを用いた大規模研究で、心房細動とその後の脳卒中・心疾患・死亡との関連が追跡調査された。

 心房細動は、心臓の上部に当たる心房が不規則に震える不整脈の一種。

 心房細動が起こっていると心臓内に血栓ができやすくなり、この結果、血栓が脳の血管に流れていくことによる脳梗塞の原因となり得るほか、心臓のポンプ機能低下(心不全)にもつながると考えられている。

 ただし、心房細動があっても、動悸などの症状が出ないケースも少なくなく、本人が気づかないまま健診の心電図で偶然見つかることも珍しくない。

 日本では毎年、働く人は心電図検査を含む健診を受けているものの、働く世代において健診で見つかった心房細動が将来どの程度の健康リスクにつながるのかは、大規模データで十分に検証されてこなかった。

 今回、研究チームは、全国健康保険協会(協会けんぽ)加入者の健診および医療データを解析し、健診で新規に検出された心房細動と、その後の脳卒中や心臓の病気との関連を追跡調査した。

 解析対象は2015~2020年の約1160万人(35~59歳)。このうち過去に心血管疾患の既往のない約950万人を抽出し、健診心電図で新たに心房細動が見つかった人を同定した。

 さらに年齢や性別などを揃えた対照群と比較して、健康保険請求記録を用いて脳梗塞、心不全、死亡などの発生を3年間追跡した。

健診での「発見」をきっかけに生活改善などを

心房細動の有無による脳梗塞入院、死亡、心不全入院のリスク上昇を示した研究結果の図表。
心房細動が確認された人では、脳梗塞入院、死亡、心不全入院のリスクが高まることを示した解析結果。(出典:京都大学)
  • 健診で新たに心房細動が見つかった人は、脳梗塞・心不全・死亡のリスクがそれぞれ大幅に上昇していた。
  • これらのリスク上昇は性別や年齢、生活習慣病の有無に関係なく一貫して観察された。
  • 研究チームは、健診で不整脈が見つかった場合、生活習慣の見直しや心臓機能低下の早期対策が重要だと呼びかけている。

 結果は明確で、心房細動と、脳梗塞や心不全による入院のリスクが関連していることが確認された。

 心血管疾患の既往がない35~59歳の約950万人のうち、健診で新たに心房細動が見つかった人は1万1790人で、頻度は「1年あたり約2400人に1人」と推定された。

 その後3年間の追跡により、心房細動が見つかった人の脳梗塞による入院リスクが5.38倍、心不全による入院リスクが18.35倍に上昇していたことが明らかになった。さらに、死亡リスクも1.98倍と高かった。

 このような関連は性別や年齢層、生活習慣病の有無にかかわらず一貫して観察された。

 健診で偶然心房細動が見つかった場合には、誰にとっても将来の病気のリスクに気を付けることが求められる形だ。

 研究チームは、とりわけ心不全との強い関連が、心臓機能低下の早期シグナルである可能性を指摘。注意を促している。

 研究チームは、健診で見つかった不整脈をきっかけに、禁煙、節酒、血圧や血糖、コレステロール管理などの生活や健康管理を見直すことが重要と説明する。

 今後、どのような対策が重要になるのか研究が注目される。

参考文献

働く世代の健診で心房細動発見―脳梗塞5倍・心不全18倍リスク―(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-10-28-2

Mori Y, Sawano M, Kohsaka S, Tsugawa Y, Yanagita M, Fukuma S. Screening-Detected Atrial Fibrillation and Cardiovascular Outcomes in Working-Age Adults. Circulation. 2025 Nov 11;152(19):1338-1347. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.125.074433. Epub 2025 Sep 25. PMID: 40995626; PMCID: PMC12594118.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40995626/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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