世界

オーストラリアの皮膚がん検診、死亡リスクの高い集団が明確に

公的機関の分析で、効率よく検診を進める対象が明らかに

医療者が皮膚の病変を撮影しモニターで確認している様子
皮膚病変の画像を確認しながら診察する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 皮膚がんが多いオーストラリアで、皮膚がんの死亡リスクの高い集団に関するデータが公表された。

 皮膚がん検診をより効果的に行うための基礎的な情報として活用される予定。公的機関であるオーストラリア保健福祉研究所(AIHW)が2026年3月に発表したものだ。

見逃されやすい死亡リスクの偏り

医療者が皮膚の病変を撮影しモニターで確認している様子
皮膚病変の画像を確認しながら診察する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 2016年・2022年の国勢調査と死亡データを連結し、年齢、性別、居住地、社会経済状況、祖先的背景、障害、就業状況ごとの死亡率の差を分析した。
  • メラノーマ死亡率は非メラノーマ皮膚がんの約2倍で、年齢とともに上昇し、特に男性、地方部、社会経済的に不利な地域で高かった。
  • オセアニア系・北西ヨーロッパ系、障害のある人、不利な地域で死亡率が高く、メラノーマは60~64歳頃、非メラノーマ皮膚がんは70~74歳頃から増加が目立った。

 今回の分析は、2016年および2022年の国勢調査と死亡データを連結し、メラノーマと非メラノーマ皮膚がん(NMSC)の死亡率が、年齢、性別、居住地、社会経済状況、祖先的背景、障害の有無、就業状況によってどう異なるのかを明らかにした。これは将来的ながん検診体制づくりの基礎データとなる。

 全体として、メラノーマの死亡率は非メラノーマ皮膚がんの約2倍となっていた。

 なお、メラノーマ、非メラノーマ皮膚がんともに年齢とともに死亡率は上昇し、特にメラノーマでは男性の死亡率が高かった。

 また、メラノーマ死亡率は、地方部で高く、社会経済的に最も不利な地域でも高かった。

 先住民のメラノーマ死亡率は、非先住民オーストラリア人より低かった。

 さらに新たに明らかになった点として、メラノーマと非メラノーマ皮膚がんの双方で、オセアニア系および北西ヨーロッパ系の祖先的背景を持つ人、障害のある人、社会経済的に最も不利な地域で死亡率が高かったという点がある。一方で、アジア系の祖先的背景を持つ人では死亡率が最も低かった。

 こうした差の背景には、紫外線曝露の違いだけでなく、医療アクセスや受診行動の差も関連している可能性がある。

 年齢による死亡率の上昇時期にも差がある。

 いずれのタイプのがんも高齢になるほど死亡率は高くなるが、メラノーマは60~64歳頃から上昇し始めるのに対し、非メラノーマ皮膚がんは70~74歳頃から目立って増える。皮膚がん全体として一括りに見るのではなく、がん種ごとに注意すべき年齢層が異なることが分かった。

全国一律ではなく重点的な対策へ

シドニー・オペラハウスとハーバーブリッジを望む風景
オーストラリア・シドニー湾の風景。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • メラノーマと非メラノーマ皮膚がんでは死亡パターンが異なり、先住民の死亡率や高リスク地域にも違いがみられた。
  • 死亡の大半は労働力人口に含まれていなかった人に集中し、高齢者の影響が大きいことが示唆された。
  • 就業者では管理職や労務職で死亡率が高く、農家・農場経営者の影響も示され、標的を絞った検診設計の重要性が浮かび上がった。

 今回の分析では、メラノーマと非メラノーマ皮膚がんの間で、死亡パターンが一致しないことも明らかになった。

 例えば、先住民の人々はメラノーマ死亡率が低い一方で、非メラノーマ皮膚がんの死亡率は非先住民と同程度だった。

 また、メラノーマ死亡率は地方部で最も高かったのに対し、非メラノーマ皮膚がんの死亡率は、より医療アクセスの厳しい遠隔地で最も高かった。がん種によって重点的に対策すべき地域が異なることを示している。

 就業状況の分析でも特徴が見えた。

 メラノーマ死亡の約8割、非メラノーマ皮膚がん死亡の約9割は、国勢調査前週に労働力人口に含まれていなかった人に集中していた。多くが高齢者であることを反映した結果と見られる。

 一方で、就業中の人に限ると、メラノーマ死亡率は管理職で最も高く、非メラノーマ皮膚がん死亡率は管理職と労務職でともに最も高かった。

 さらに管理職に分類された人の中では、メラノーマ死亡の多くが農家や農場経営者で見られた。職種の名称だけでは見えにくい屋外曝露の影響が浮かび上がっている。

 高リスク層を絞り込んで検診体制を設計しようとするオーストラリアの議論は、日本でがん検診のあり方を考える上でも参考になる可能性がある。

参考文献

Data helps target skin cancer screening(RACGP)
https://www1.racgp.org.au/newsgp/clinical/data-helps-target-skin-cancer-screening

Using linked data to inform targeted skin cancer screening in Australia
https://www.aihw.gov.au/reports/cancer/targeted-skin-cancer-screening/contents/about

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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