研究

腹部CTのAI解析で転倒リスクを予測

45歳以降の危険を中年期から捉える可能性 米国メイヨー・クリニック報告

CT検査装置に入り仰向けで横たわる患者の様子
医療機関でCT検査を受ける患者の様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 腹部のCT画像をAI(人工知能)で解析することにより、転倒リスクを予測できる可能性が示された。

 米国メイヨー・クリニックが2026年1月に報告した。

中年期から始まる身体の変化をとらえる

木製の人体模型が仰向けで脚を上げている様子
人体の動きや姿勢を示す木製モデル。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 加齢に伴う筋肉や骨、脂肪の変化は高齢期以前から進み、転倒リスクにも関わる可能性がある。
  • 研究では、日常診療で撮影された腹部CT画像を二次利用し、転倒の前兆を捉えられるかを検証した。
  • 3972人を対象にAIで体組成を解析し、BMIや慢性疾患も考慮して約6.7年間追跡した。

 転倒は高齢者の問題として語られがちだが、年齢に伴う筋肉や骨、脂肪の変化はそれ以前から進行している。

 今回の研究は、そうした身体変化のうち何が実際に転倒リスクと結びつくのかを、腹部CTという日常診療でも広く行われる検査から読み解こうとしたものだ。

 研究グループは、別の目的で撮影された腹部CTの画像を二次利用することで、転倒の前兆を拾い上げられる可能性に注目した。

 研究では、2010年から2020年に腹部CTを受けた20〜89歳の成人を対象に、深層学習アルゴリズムを用いて腹部の領域から、皮下脂肪面積、内臓脂肪面積、骨格筋面積、筋密度、骨面積、骨密度を算出した。

 解析対象は3972人で、転倒歴のある人やCT直後の転倒例は除き、その後の転倒発生を追跡調査した。

 研究グループはBMIや慢性疾患などの影響を考慮して、できるだけ正確な予測を試みた。追跡期間は6.7年(中央値)だった。

鍵を握ったのは筋量ではなく筋密度

男性がシャツをめくり腹部の筋肉を指さしている様子
腹筋の状態を示す男性の腹部。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 転倒リスクと明確に関連したのは筋密度のみで、低い群ではリスクが上昇し、高い群では低下した。
  • 筋肉の大きさよりも、脂肪の入り込みが少ない「筋肉の質」が身体機能を反映する可能性が示された。
  • 特に45〜64歳では関連が強く、中年期の筋肉の質低下が転倒に直結しやすい可能性がある。

 結果として、筋密度のみがはっきりとした差を示し、筋密度が最も低い群は中間群に比べて転倒リスクが2.31倍高かった。逆に、筋密度が最も高い群では、中間群に比べて転倒リスクが0.63倍となり、約37%低かった。

 研究グループは、筋肉の「大きさ」よりも、脂肪の入り込みが少なく均一な状態、すなわち筋肉の「質」が身体機能をよりよく反映している可能性を指摘している。

 一方で、皮下脂肪、内臓脂肪、筋面積、骨面積、骨密度はいずれも転倒リスクとの明確な関連を示さなかった。

 とりわけ注目されるのは年代別の解析で、45〜64歳では、筋密度が低い群の転倒リスクは中間群の4.98倍に達し、高齢群よりも強い関連が認められた。

 高齢者では認知機能低下、視覚障害、服薬、生活環境など転倒に関わる要因が多いため、中年期の方が筋肉の質の低下が比較的直接的に転倒へつながっている可能性がある。

 体幹の筋肉を良い状態に保つことが、転倒予防につながる可能性がある。

参考文献

Mayo Clinic researchers use AI to predict patient falls based on core density in middle age(Mayo Clinic)
https://newsnetwork.mayoclinic.org/discussion/mayo-clinic-researchers-use-ai-to-predict-patient-falls-based-on-core-density-in-middle-age/

St Sauver JL, Grossardt BR, Weston AD, Garner HW, Chamberlain AM, Rocca WA, Pickhardt PJ, Thackeray B, Keegan OR, Rule AD. Associations Between Deep Learning-Derived Fat, Muscle, and Bone Measures From Abdominal Computed Tomography Scans and Fall Risk in Persons Aged 20 Years or Older. Mayo Clin Proc Digit Health. 2025 Oct 24;3(4):100299. doi: 10.1016/j.mcpdig.2025.100299. PMID: 41323361; PMCID: PMC12664019.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41323361/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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