世界

前立腺がんのMRI診断でAIは放射線科医に並べるか

英国UCL主導の国際試験「PARADIGM」が500人で検証へ

医師がモニターに表示された骨盤部の画像を見ながら、患者に説明している様子。
画像検査の結果について説明する医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 前立腺がんのMRI診断で、AIが専門医と同じようにがんを見つけられるかを調べる国際試験が始まる。

 英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)などの研究グループが、PARADIGM試験として2026年6月に発表した。

MRI診断の需要増にAIで対応できるか

医療従事者がタブレットに記録を取りながら、患者と向き合って話している様子。
診察や相談で患者の話を聞く医療従事者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 前立腺がんではMRIが重要な検査になっており、不必要な生検を減らし、治療が必要ながんを見つけるために使われている。
  • 前立腺MRIの読影には専門的な知識と経験が必要で、検査需要の増加に伴う放射線科医不足が課題になっている。
  • PARADIGM試験では、AIが前立腺MRIからがんの疑いがある病変を見つけ、診断支援や医療アクセス改善に役立つかが検討される。

 前立腺がんでは、MRIが診断における重要な検査になっている。前立腺がんが疑われる人にまずMRIを行うことで、不必要な生検を減らし、治療が必要ながんを見つけやすくする流れが広がっている。

 一方で、前立腺MRIの読影には専門的な知識と経験が求められる。世界的には前立腺がん患者の増加が見込まれており、MRI検査の需要もさらに高まると考えられている。こうした中で、放射線科医の不足が課題になっている。

 研究グループは、この課題を補う手段としてAIに注目した。AIがMRI画像から前立腺がんの疑いがある病変を見つけられれば、診断の効率化や地域による医療格差の改善につながる可能性がある。

 そこで始まるのがPARADIGM試験だ。この試験では、AIが前立腺がんの診断で専門の放射線科医と同程度の性能を示せるかを調べる。

 試験は国際的な多施設共同研究として行われ、18カ月間で500人の男性を登録する計画となっている。

AIと放射線科医が同じMRIを別々に判定

医師が高齢の夫婦に診療内容や治療方針を説明している様子。
患者と家族に診療内容を説明する医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 試験では500人の男性を対象に、同じMRI画像を放射線科医とAIがそれぞれ独立して判定する。
  • AIまたは放射線科医が疑わしいと判断した病変は生検で確認し、臨床的に重要な前立腺がんを見つけられるかを調べる。
  • AIの判定が放射線科医に劣らないかに加え、低リスクがんの検出、診断性能、医療費への影響も検証される。

 参加者のMRI画像は、放射線科医とAIがそれぞれ独立して判定する。放射線科医はまず、AIの結果を見ない状態で読影し、その後に結果を比較する。AIまたは放射線科医のどちらかが疑わしいと判断した病変については、生検を行い、実際にがんがあるかどうかを確認する。

 PARADIGM試験で重視されるのは、治療が必要になりやすい前立腺がんを見つけられるかどうかだ。対象になるのは、Gleason Grade Group 2以上の「臨床的に重要な前立腺がん」とされる。これは、一般的にはグリーソンスコア3+4以上に相当し、低リスクのがんとは分けて考えられる。

 試験では、AIの判定が放射線科医の判定に劣らないかを検証する。あわせて、低リスクのがんをどの程度見つけるか、AIと放射線科医の診断性能、医療費への影響なども調べる予定だ。

 現時点では、AIが前立腺MRI診断で広く使えることが示されたわけではない。81施設、25カ国、6大陸から参加への関心が示されており、試験は2026年10月に登録開始予定とされている。

 AIを診断支援に使うには、実際の患者を対象に、安全性と精度を確かめる必要がある。PARADIGM試験は、そのための重要な検証になる。

参考文献

Trial to test AI for prostate MRI cancer diagnosis(University College London)
https://www.ucl.ac.uk/news/2026/jun/trial-test-ai-prostate-mri-cancer-diagnosis

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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