検査や予防の分野で、造影剤を使わずにがんを調べるMRI技術「DWIBS(ドゥイブス)」への関心が高まっている。
PREVONOで見てきたように、DWIBSは乳がん検診への応用が注目されているが、用途はそれだけに限らない可能性がある。
イランのイスファハン医科大学などの研究グループは、乳房に疑わしい病変が見つかった女性を対象に、DWIBSが精密検査に役立つかを調べ、2025年に報告した。
疑わしい病変が見つかった後の応用に注目
乳房の画像検査結果を確認する医療従事者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
DWIBSは造影剤を使わないMRI技術で、乳がん検診だけでなく精密検査への応用も検討されている。
造影MRIは病変の血流や造影のされ方を見る検査だが、腎機能が低い人などでは造影剤を使いにくい場合がある。
研究では、生検予定の女性80人を対象に、造影MRIとDWIBSの結果を病理検査と比較した。
乳がん検診や診療では、マンモグラフィなどで疑わしい病変が見つかることがある。その場合、次に重要になるのは、その病変が悪性なのか、良性なのかをより詳しく見極めることだ。
精密検査として使われる方法の一つに、造影MRIがある。造影剤を注射してMRIを撮影し、病変の血流や造影のされ方を見ることで、がんの可能性を評価する。
ただし、造影剤は誰にでも使えるわけではない。腎機能が低下している人では使用が難しい場合がある。検査の負担を減らすという観点からも、造影剤を使わない方法への関心は高い。
そこで研究グループは、造影剤を使わないDWIBSが、乳房病変を調べる場面でどの程度役立つかを検討した。
対象は、家族歴を背景に本人が希望した場合や、マンモグラフィで疑わしい病変が見つかった場合などにより、乳房の組織を採取する生検が予定されていた女性80人だった。全員が生検前に造影MRIとDWIBSを受け、その結果を病理検査と比べた。
見逃しを減らす造影MRI、良性を見分けやすいDWIBS
乳房MRI検査で得られる断面画像。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
造影MRIは悪性病変を拾い上げる感度が高く、今回の研究では悪性病変をすべて検出していた。
DWIBSは造影MRIほど感度は高くなかった一方、良性病変を良性と見分ける特異度では上回っていた。
現時点では造影MRIの代替として広く使う段階ではなく、造影剤を使わない選択肢として今後の検証が必要になる。
結果を大きく見ると、造影MRIは悪性病変を見逃しにくく、DWIBSは良性病変を見分けやすい傾向があった。
病理検査の結果、80病変のうち55病変は良性、25病変は悪性だった。良性とは、がんではない病変を指す。多かったのは、乳房にできる代表的な良性腫瘍である線維腺腫だった。悪性病変では、乳がんの代表的なタイプである浸潤性乳管がんが大半を占めていた。
造影MRIは、悪性病変を拾い上げる力が高かった。感度は100%で、今回の研究では悪性病変をすべて検出していた。ただし、良性病変を良性と見分ける力を示す特異度は38%にとどまり、良性病変でも「悪性の疑い」と判定される例が多かった。
感度は「悪性病変を悪性と判定できる割合」、特異度は「良性病変を良性と判定できる割合」を示す。
DWIBSでは、一部の画像で体動や画像の乱れによる影響がみられたため、7病変が評価対象から除外された。残る73病変で診断性能を調べたところ、感度は77%、特異度は71%だった。DWIBSは、造影MRIほど悪性病変を拾い上げる力は高くなかったが、良性病変を見分ける力は高かった。
言い換えると、造影MRIは悪性病変の見逃しを避けることに強い。一方、DWIBSは、がんではない良性病変まで悪性のように見えてしまうことを抑えられる可能性がある。
研究グループは、造影剤を使えない人では、DWIBSが検査の選択肢になり得るとしている。
ただし、今回の研究は80人を対象にしたもので、規模は大きくない。DWIBSは、良性病変を見分ける力では造影MRIを上回ったが、悪性病変を拾い上げる力では造影MRIに及ばなかった。
現時点では、造影MRIの代わりに広く使う段階ではなく、造影剤を使わない方法としてどこまで役立つかを探る段階といえる。今後は、より大規模な研究で確認する必要がある。