「AIはがんをどこまで早く見つけられるか」の連載では、まず乳がん検診や肺がんCT検診におけるAIの活用について見た。
続けて、膵臓がんと膵炎を見分けるという、画像診断の中でも特に難しい課題にAIがどこまで役立つかを取り上げる。
中国の西南医科大学などの研究グループが、過去の研究を統合して分析し、2026年1月に報告した。
なぜ膵臓がんと膵炎は見分けにくいのか
腹部にあるすい臓の位置を示した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
膵臓がんと膵炎は、体重減少や腹痛などの症状が似ており、CTやMRIでも判断に迷う場合がある。
治療方針は大きく異なり、診断を誤ると必要な手術を逃したり、不要な手術につながったりする可能性がある。
AIはCT、MRI、超音波、PET/CTなどの画像から、人の目では捉えにくい特徴を抽出し、両者を見分ける手段として注目されている。
膵臓がんは、進行が早く、見つかった時点で治療が難しくなっていることも多いがんだ。その中でも、膵臓がんの代表的なタイプとして、膵臓の中の分泌液を通す「膵管」から発生する「膵管がん」がある。
一方で、膵炎は、膵臓に炎症が起こる病気を指す。急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎などがあり、論文では、こうした炎症性の膵臓の病気をまとめて膵炎として扱っている。中には、炎症によって膵臓の一部がかたまりのように見え、画像上は膵臓がんとよく似るものがある。
両者の症状も似ており、体重減少、腹痛、膵臓の働きの低下などは、膵臓がんでも膵炎でも見られることがある。CTやMRIなどの画像検査でも、形や周囲の変化だけでは判断に迷う場合がある。
しかし、治療方針は大きく異なる。膵臓がんでは手術が検討される一方、膵炎では薬による治療や経過観察が中心になる。診断を誤ると、必要な手術の機会を逃したり、がんではないのに大きな手術を受けることになったりする可能性がある。
そこで注目されているのがAIによる画像解析だ。AIはCT、MRI、超音波、PET/CTなどの画像から、人の目では捉えにくい特徴を抽出し、膵臓がんと膵炎の違いを見分けようとする。
今回の研究は、新たに患者を登録してAIを検証した臨床試験ではない。2001年から2025年までに報告された研究を集め、結果を統合したシステマティックレビューとメタ解析だ。対象は28研究、3279人分のデータで、多くは機械学習を用いた研究だった。
AIはどこまで見分けられたのか
すい臓の位置と形を示した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
28研究、3279人分のデータを統合した解析で、AIによる画像解析は膵臓がんと膵炎を見分ける上で高い成績を示した。
全体の感度は89%、特異度は88%、診断性能を示すAUCは0.94だった。
AIは医師の判断を補う可能性がある一方、多くは過去データを用いた研究であり、実用化には多施設での前向き研究や外部検証が必要になる。
解析の結果、AIによる画像解析は、膵臓がんと膵炎を見分ける上で高い成績を示していた。
全体では、膵臓がんを正しく膵臓がんと判定できた割合である感度は89%だった。一方、膵炎を膵臓がんではないと判定できた割合である特異度は88%だった。
診断性能全体を示すAUCは0.94だった。AUCは、膵臓がんと膵炎をどれだけうまく区別できるかを示す指標で、1に近いほど見分ける力が高い。0.94という数値は、高い判別性能を示す結果といえる。
研究の中には、同じ画像データをAIと医師がそれぞれ判定したものも含まれていた。その解析では、AIの感度は88%、特異度は88%だった。これに対し、医師の感度は77%、特異度は80%だった。AIは、医師の判断を補う手段として有望である可能性が示された。
画像の種類ごとの分析では、CTを用いたAIの成績が比較的高く、AUCは0.96だった。超音波を用いたAIもAUCは0.94と高い成績を示していた。
ただし、今回の分析には限界もある。対象研究の多くは過去データを用いた後ろ向き研究で、単一施設の研究も多く、方法や対象にもばらつきがあった。
AIは、膵臓がんと膵炎の判断を支える手段になる可能性があるが、実用化には多施設での前向き研究や外部検証が必要になる。