研究

大腸がん検診に参加した人、大腸がん死亡リスク43%低い

37万人超を最長14年追跡、便検査を受ける重要性をスウェーデンで検証

大腸の図が描かれた検査キットの前で、採便用の容器を手に持つ様子。
大腸がん検診などで用いられる便検査キット。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 自宅で便を採取して提出する大腸がん検診を受けた人では、大腸がんによる死亡リスクが大きく低下する可能性が示された。

 スウェーデンのカロリンスカ研究所などの研究グループは、ストックホルムなどで行われた大腸がん検診について、37万6511人を最長14年間追跡。実際に検診へ参加した人では、大腸がんによる死亡リスクが43%低かったと、2026年8月に報告した。

自宅で便を採取、血液が見つかれば大腸内視鏡へ

夕暮れのスウェーデン・ストックホルムの水辺に並ぶ歴史的な建物と街並み。
大腸がん検診の有効性が検証されたスウェーデンの首都ストックホルム。画像はイメージ。
  • スウェーデンでは60~74歳を対象に2年ごとに便潜血検査を案内し、自宅で採取した便を提出する。
  • 便に微量の血液が見つかった場合は、大腸内視鏡検査で詳しく調べる流れとなる。
  • 研究では37万6511人を最長14年間追跡し、検診と大腸がん死亡との関係を統計的に調整して解析した。

 大腸がんは早期に見つかれば治療しやすい一方、症状がない段階で発見することが重要になる。

 スウェーデンでは、60~74歳を対象に2年ごとに大腸がん検診が案内されている。検査キットが自宅に届き、自分で便を採取して提出する。便の中に、目では見えない微量の血液が含まれていないかを調べる検査だ。

 血液が見つかった場合は、通常、大腸内視鏡検査を受けることになる。

 ストックホルム地域と同国最大の島ゴットランドでは、全国に先駆けて2008年から検診が導入された。研究グループは、2008~2012年に検診へ招待された人と、後から招待された人、または検診に招待されなかった人を比較した。

 ただし、単純に「検診を受けた人」と「受けなかった人」を比べると、健康への関心や生活習慣などの違いが結果に影響する可能性がある。また、比較対照となったグループの中にも後から検診を受けた人がいた。

 そこで研究では、こうした違いの影響をできるだけ取り除くために統計的な調整を行い、検診そのものと大腸がん死亡との関係を推定した。

「招待」では26%、「実際に参加」で43%低い

スウェーデン・ゴットランドの海沿いの街並みと、教会の塔や赤い屋根の建物。
ストックホルムとともに大腸がん検診が早期に導入されたスウェーデンのゴットランド。画像はイメージ。
  • 検診に招待された人では、大腸がんによる死亡リスクが26%低かった。
  • 実際に検診を受けた人では、死亡リスクが43%低いと推定された。
  • 一方、約3分の1は便の検体を提出しておらず、検診は案内を受けるだけでなく実際に参加することが重要とされた。

 37万6511人を追跡した期間中、大腸がんによる死亡は1668人確認された。

 統計的な調整後、検診に招待された人は、招待されなかった人などと比べて大腸がんによる死亡リスクが26%低かった。

 さらに、実際に検診を受けた人に絞ると、死亡リスクは43%低いと推定された。

 過去の評価では、検診に招待された人では大腸がんによる死亡リスクが14%低かったと報告されていた。今回、より長期間の追跡と統計的な補正を行ったことで、実際に検診へ参加した人では、より大きな死亡リスクの低下が見られる可能性が示された。

 一方、無料で簡単に受けられる検査であるにもかかわらず、約3分の1の人は便の検体を提出していなかったという。

 研究グループは、今回の結果から、大腸がん検診は「案内を受けること」だけでなく、実際に検査を受けることが重要だとしている。

 今回の43%という数字は、検診を受ける人と受けない人の違いなどを統計的に調整して推定した値であり、すべての影響を完全に取り除けたとは限らない。研究グループも一定の不確実性が残るとしている。こうした制約はあるものの、今回の結果は、大腸がん検診に実際に参加する重要性を示すものとなった。

参考文献

Bowel cancer screening could reduce mortality by over 40 per cent(Karolinska Institutet)
https://news.ki.se/bowel-cancer-screening-could-reduce-mortality-by-over-40-per-cent

Johannes Blom, Lennarth Nyström, Håkan Jonsson, *JAMA Network Open*, online 20 August 2026, doi: 10.1001/jamanetworkopen.2026.29856.
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2853098

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

ARCHIVE

新着記事

第64回日本癌治療学会学術集会の演台で、マイクを使って講演する坂東英明氏。
MCED検査の適正な利用に向けたガイダンス作成について講演する、国立がん研究センター東病院の坂東英明氏。(写真:編集部)

多がん種早期検出(MCED)、日本癌治療学会が初の見解書を公表 世界でも先駆的な適正利用の考え方を提示

血液や尿などを使い、複数のがんをまとめて調べる「多がん種早期検出(MCED)」検査について、日本癌治療学会は2026年10月22日、初めての見解書となる「多…

第54回日本磁気共鳴医学会大会の講演会場。演台で講演する登壇者と、座長席で話を聞く2人の座長、参加者の様子。
2026年10月16~18日に鹿児島市で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会の講演会場。専門家による研究発表や討論が行われた。(写真:編集部)

MRIの撮影方法を工夫し、これまで分かりにくかった病気の特徴を捉える研究が進む

MRIの撮影方法を工夫することで、これまでの画像では分かりにくかった病気の特徴や、治療による変化を捉えようとする研究が進んでいる。注目されているのは、体内の…

第54回日本磁気共鳴医学会大会のシンポジウム会場。演台で講演する登壇者と座長、講演を聴く参加者の様子。
キャプション 第54回日本磁気共鳴医学会大会で開催された「子宮肉腫の鑑別、最新事情」のシンポジウム。良性の子宮筋腫と子宮肉腫を見分ける難しさや、MRIによる診断精度の向上、AIを活用した診断支援の研究などが紹介された。(写真:編集部)

子宮肉腫、良性の子宮筋腫と見分ける難しさに挑む MRIの診断方法を改善、AI活用の研究も進む

子宮にできる悪性腫瘍の一つである「子宮肉腫」。良性の子宮筋腫と似た画像を示すことがあり、MRIを使っても手術前に正確に見分けることが難しい場合がある。肉腫を…

鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会の会場入口。大会名や開催日程が記された案内看板が設置されている。
2026年10月16~18日に鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会。MRIの画像解析やAI技術などに関する研究成果が発表された。(写真:編集部)

全身MRI、異常が疑われる場所をカラー表示で見やすく 画像を重ね合わせる「フュージョン」に注目

全身をMRIで調べる検査で、異常が疑われる部分と、体の形が分かる画像を重ね合わせる「フュージョン画像」が注目されている。2026年10月16日から鹿児島市で…

鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会の会場入口。大会名や開催日程が記された案内看板が設置されている。
2026年10月16~18日に鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会。MRIの画像解析やAI技術などに関する研究成果が発表された。(写真:編集部)

胆管や膵管のMRI検査、AIで撮影時間を約6割短縮

MRIを利用して肝臓の働きや腫瘍の特徴を詳しく調べる研究が進んでいる。また、人工知能(AI)を活用し、胆管や膵管の検査時間を短くする技術も登場している。20…

第54回日本磁気共鳴医学会大会のシンポジウム会場。演台で講演する登壇者と座長、講演を聴く参加者の様子。
第54回日本磁気共鳴医学会大会の講演会場。乳房MRIをテーマにしたシンポジウムでは、超高速撮影による乳がんの検出や、拡散強調画像(DWI)を利用して不要な生検を減らす可能性などが議論された。(写真:編集部)

乳がんを見つけやすくする「ウルトラファストダイナミックMRI」、不要な生検を減らす研究も

乳がんの診断に使われるMRIの撮影技術が進歩し、これまで見つけにくかった病変を捉えたり、良性か悪性かを詳しく調べたりする研究が進んでいる。

関連する病気から探す

カテゴリーから探す

あなたの立場から探す

あなたの関心から探す