研究

リンパ腫、治療後に「がんが残っているか」を血液で調べる シグナテラがPET/CTを補う可能性

144人の前向き研究、治療終了時の陽性的中率100%でPET/CTを補う可能性

赤い血液検体の中にDNAのらせん構造が重なって見える、がん由来DNA検査のイメージ。
血液中のがん由来DNAを調べる検査は、リンパ腫の治療効果や再発の兆候を補助的に評価する方法として研究されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 リンパ腫の治療効果や再発の兆候を、血液検査でより詳しく捉えられる可能性が示された。

 米ナテラ(Natera)は2026年9月、血液検査「シグナテラ(Signatera)」を使った144人の前向き研究の結果を発表した。

血液中の「がん由来DNA」を調べる

建物の外壁に掲げられたNateraのロゴ。
血液検査「シグナテラ」を提供する米ナテラ。(出典:Adobe Stock)
  • シグナテラは血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)を測定し、治療後に残る微小残存病変(MRD)の兆候を調べる検査。
  • 144人を前向きに追跡し、治療前後や経過観察中のシグナテラ結果をPET/CTや実際の臨床経過と比較した。
  • 治療終了時の陽性的中率は100%で、PET/CTの62%を上回り、結果が食い違った症例の85%ではシグナテラ側が正しかった。

 リンパ腫では、治療が効いているか、病気が残っていないかを調べるためにPET/CTなどの画像検査が使われる。一方、画像に異常が見えても、それが本当に生きたがん細胞を反映しているのか判断が難しい場合がある。

 今回使われたシグナテラは、血液中を流れるがん由来DNA、いわゆる「循環腫瘍DNA(ctDNA)」を調べる検査だ。治療後にごく少量残ったがんの兆候を調べる「微小残存病変(MRD)」の評価に用いる。

 研究では、治療前、治療中、治療終了時、その後の経過観察中に血液を採取し、シグナテラの結果とPET/CTなどの画像検査、実際の臨床経過を比較した。

 ナテラの発表によると、米国の全米総合がんネットワーク(NCCN)の指針でも、陽性のPET/CTを確認する方法として、ctDNAを使ったMRD評価が新たに盛り込まれたとしている。

 研究では、治療終了時にシグナテラが陽性だった人は、その後の病状悪化などが起こりやすく、治療終了時の陽性的中率は100%だった。陽性的中率とは、陽性と判定された人のうち、その後に再発や進行などが確認された人の割合を示す。PET/CTでは62%だった。

 シグナテラとPET/CTの結果が食い違ったケースでは、85%で、その後の経過などからシグナテラ側の結果が正しいと確認されたという。

経過観察では感度91%、特異度92%

医療用手袋を着けた手が、赤い液体の入った検体チューブを持っている。
リンパ腫の治療後には、血液中のがん由来DNAを繰り返し測定することで、画像検査を補う情報が得られる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 治療後の経過観察では、再発や進行を捉える感度が91%、再発のない人を陰性と判定する特異度が92%だった。
  • 治療中にシグナテラが陰性化した人では経過が良好な傾向があり、CAR-T療法後でも陰性化した人は寛解が長く続く傾向を示した。
  • 一方、14種類のリンパ腫を含む研究であり、検査結果に基づく治療変更が予後を改善するかは今後の検証が必要。

 治療後の経過観察でも、シグナテラの結果はその後の病状と強く関係していた。

 経過観察中では、再発や進行した人を陽性と捉える感度が91%、再発などが見られない人を陰性と判断する特異度が92%だった。血液中でがん由来DNAが検出された人では、その後の再発や進行などと強い関連が見られた。

 治療中にがん由来DNAが消えたかどうかも重要だった。初回治療中にシグナテラが陰性化した人では、その後の経過が良好な傾向が認められた。

 再発および治療抵抗性の患者でCAR-T細胞療法を受けた人でも、シグナテラが陰性化した場合は長く寛解が続く傾向があった。一方、シグナテラが陽性だった人では病状の進行や死亡が見られた。治療効果が続いた期間の中央値は、陰性化した人で16.1カ月、陽性だった人で1.97カ月だった。

 ただし、今回の研究には14種類のリンパ腫が含まれており、すべての種類で同じ性能が確認されたという意味ではない。また、シグナテラの結果に基づいて治療方針を変更することで、患者の予後が改善するかまでを確かめた研究ではない。

 そうした課題はあるが、画像検査だけでは判断が難しい場面で、血液中のがん由来DNAを繰り返し測定することで、治療効果や再発の兆候をより細かく追える可能性が示された。今後は、どの患者で、どのタイミングに使うと最も役立つのかをさらに検証する必要がある。

参考文献

New Publication Establishes Strong Clinical Validation of Signatera™ for MRD Assessment in Lymphoma(Natera)
https://investor.natera.com/news/news-details/2026/New-Publication-Establishes-Strong-Clinical-Validation-of-Signatera-for-MRD-Assessment-in-Lymphoma/default.aspx

ctDNA for MRD Assessment is Prognostic and Predictive in Lymphoma(Blood Neoplasia)
https://doi.org/10.1016/j.bneo.2026.100250

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

ARCHIVE

新着記事

胃の中にピロリ菌が存在する様子を示した模式図。
胃に感染するピロリ菌は、胃がんの原因として知られるが、膵臓がんとの関連も検討されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

ピロリ菌感染、膵臓がんの一部と関連か 愛知県がんセンターが約3600人を解析

胃がんの主要な原因として知られるピロリ菌が、膵臓がんの一部にも関係している可能性が示された。愛知県がんセンター研究所の研究グループが2026年7月、論文発表…

複数人がビールジョッキを持ち寄って乾杯している様子。
米国では、飲酒に関連すると推計されるがん死亡が30年余りで増加したと報告された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

がん死亡は減っているのに、「飲酒に関連する死亡」は倍増 米国で2023年2万3000人超

飲酒に関連するがん死亡が、米国でこの30年余りで約2倍に増えていることが示された。米国の研究グループが2026年9月に報告した。米国で飲酒が原因と推計された…

胸を押さえ、心臓付近の痛みを示す男性。
心筋梗塞や脳卒中などのリスク評価では、通常のリスク計算に加え、対象を選んで冠動脈カルシウム検査を使うことの有用性が検討された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

心臓CTの「カルシウム検査」、全員には必要ない可能性

心臓の血管にたまったカルシウムをCTで調べる「冠動脈カルシウム検査」は、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを見極める方法として利用が広がっている。しかし、すべて…

関連する病気から探す

カテゴリーから探す

あなたの立場から探す

あなたの関心から探す