全身をMRIで調べる検査で、異常が疑われる部分と、体の形が分かる画像を重ね合わせる「フュージョン画像」が注目されている。
2026年10月16日から鹿児島市で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会では、「Body DWI研究会」による「全身MRI―Fusion画像の作り方」が開かれ、専門家3人が講演した。
骨転移や膿瘍の位置を分かりやすく表示
前立腺MRI検査などの画像検査を受ける患者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 全身MRIでは、がんなどが疑われる部分を明るく写す「DWI」という撮影方法を利用。ただし、異常が疑われる場所を特定しにくい場合も。
- DWIと臓器や骨の形が分かる画像を重ね合わせ、異常が疑われる部分をカラーで表示する「フュージョン画像」に注目。
- 骨転移や体内に膿がたまる「膿瘍」の症例で、病変の位置を分かりやすく表示。周囲の骨や臓器との位置関係も確認しやすくなる。
座長を務めたのは、ハイメディッククリニックWEST(大阪市中央区)MRI部門の中西克之氏と、静岡済生会総合病院放射線技術科の診療放射線技師、山崎敬之氏だ。
MRIにはさまざまな撮影方法があり、その一つが、体内の水分子の動きに着目した「拡散強調画像(DWI)」だ。がんなどの病変が疑われる部分が明るく写る場合があり、全身の広い範囲を調べる検査にも利用されている。
DWIを全身の検査に活用するため、撮影方法にはさまざまな工夫が重ねられてきた。その代表的な成果の一つが、高原クリニック イノベーティブスキャン(東京都世田谷区)院長の高原太郎氏らが2004年に報告した「DWIBS(ドゥイブス)」だ。呼吸を止めずに撮影し、脂肪などの背景信号を抑えることで、病変が疑われる部分を見やすくする方法だ。
一方、DWIだけでは、明るく写った部分が体のどこにあるか分かりにくい場合がある。そこで活用されているのが、DWIと臓器や骨の形が分かるMRI画像やCT画像を重ね合わせる「フュージョン画像」だ。DWIで明るく写る部分をカラー表示することで、異常が疑われる場所と周囲の臓器や骨の位置関係を一度に確認しやすくなる。
熊本中央病院放射線診断科部長の片平和博氏は、骨転移などの症例を通じて、フュージョン画像の利点を説明した。
CTでは分かりにくかった骨の病変が、MRIでは確認できた例を紹介。DWIで目立つ部分と骨の形を示す画像を重ねることで、病変の位置を分かりやすく表示できたという。
片平氏によると、熊本中央病院では全身MRIを年間約600件実施しており、日常的に使用する医療画像システムでフュージョン画像を作成しているという。
鹿児島大学病院放射線科准教授の内匠浩二氏も、骨病変や感染症の症例を紹介した。体の複数の場所に膿瘍が認められた例では、フュージョン画像によって、異常信号が背骨の中を通る脊柱管に位置することを確認しやすくなったという。
内匠氏は、富士フイルムの画像診断ソフトウェア「シナプス・サイ・ビューワー(SYNAPSE SAI viewer)」を使った表示方法を実演。DWIに加えて、水分子の動きやすさを数値化した「ADC」の情報を色分けして表示する機能などを紹介した。
簡単に画像を重ねる技術が進歩、日常診療での活用広がる
MRI検査装置の内部と検査台。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 医療画像ソフトウェアの進歩により、画面上の簡単な操作でMRI画像を重ね合わせ、短時間でフュージョン画像を作成できるように。
- 医師が確認したい部分を見やすく調整でき、画像を読み取る負担の軽減にも期待。日常診療での活用が進む。
- DWIで明るく写る部分がすべてがんとは限らず、炎症や正常な組織でも見られる場合がある。診断の正確性を高める効果は今後の検証が必要。
今回の講演で共通していたのは、専門的な画像処理を簡単な操作で行い、日常診療に取り入れやすくするという方向性だった。
「DWIBS」を考案した高原太郎氏は、医療画像ソフトウェア「OsiriX MD」を使ったフュージョン画像の作成方法を実演した。
画面上で画像を重ね合わせるだけで、短時間でフュージョン画像を作成できることを紹介。複雑な操作を覚えなくても、医師が必要な画像をすぐに作成し、見やすく調整できることが重要だと説明した。
全身MRIをより使いやすい検査にするため、撮影技術だけでなく、画像の表示方法や医療現場での運用も進歩している。
ただし、DWIで明るく写る部分がすべてがんとは限らず、炎症や正常な組織でも同様の信号が見られる場合がある。フュージョン画像は異常が疑われる場所を分かりやすくする技術であり、病気の発見率や診断の正確性をどの程度改善できるかについては、引き続き検証が必要だ。