アルツハイマー病の予防や治療に向け、既存の薬の「再活用」に光が当たっている。
英国エクセター大学を中心とする研究グループは、80種類の既存薬を評価し、アルツハイマー病に転用できる可能性が高い3つの薬剤を特定した。
帯状疱疹ワクチン(商品名ゾスタバックス)や勃起治療薬のシルデナフィル(同バイアグラ)などが有望と分かった。
専門家や当事者が過去の研究に基づき合意形成
上腕にワクチン接種や注射を行う場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
同大学によれば、認知症は英国における最大の死因であり、約100万人が認知症とともに生活している。
3人に1人が生涯で認知症を発症すると推計される一方で、根本的な治療法は確立していない。
この疾患の新薬を一から開発するには10~15年の歳月、巨額の費用がかかり、実用化に至る保証もない。
そこで、今回、研究グループは、既に承認され安全性が確認されている薬剤を別の疾患に転用する「ドラッグ・リポジショニング」を検討した。
研究では、大学や病院、製薬企業に所属する認知症の専門家に加え、当事者が組織を作り、80種類の薬について過去の研究知見に基づき、段階的に候補薬を絞り込み、合意形成を図った。
帯状疱疹ワクチンが最有力、臨床試験を計画
バイアグラ100mgの錠剤とパッケージ。(写真:Adobe Stock)
その結果、臨床試験を進めるべき3種類の薬として、帯状疱疹ワクチン(商品名ゾスタバックス)、シルデナフィル(バイアグラ)のほか、筋萎縮性側索硬化症の薬リルゾール(一般名)が挙げられた。
同研究によれば、3剤のうち、最も有望と評価されたのが帯状疱疹ワクチン。帯状疱疹ウイルスと認知症リスクとの関連を示唆する研究が蓄積しているからだ。同ワクチンは免疫に影響し、予防につながる可能性があると考えられている。過去の研究では、ワクチン接種者は認知症発症リスクが16%低い可能性が示された。最大2回の接種で済み、安全性の実績が確立している点も利点とされた。
シルデナフィルは神経細胞の保護作用や、認知症に関連するとされる脳内タウ蛋白の蓄積抑制効果が示されている。シルデナフィルやリルゾールは、動物の研究で認知機能の改善が確認されている。
研究チームは今後、英国で帯状疱疹ワクチンの大規模な臨床試験を実施する計画を進める。
既存薬の再活用が、アルツハイマー病予防の新たな選択肢となる可能性がある。
参考文献
Shingles vaccine most promising common drug to potentially prevent Alzheimer’s – research(University of Exeter)
https://news.exeter.ac.uk/faculty-of-health-and-life-sciences/shingles-vaccine-most-promising-common-drug-to-potentially-prevent-alzheimers-research/
Corbett A, Sultana J, Stych K, Mills R, Cummings JL, Williams G, Ismail Z, Soto-Martin M, Mintzer J, Gauthier S, Greig NH, Noble W, Killick R, Lai MKP, Routledge C, Walsh F, Fillit H, Aarsland D, Lane R, Mills K, Ballard C. Drug repurposing for Alzheimer’s disease: a Delphi consensus and stakeholder consultation. Alzheimers Res Ther. 2025 Nov 18;17(1):237. doi: 10.1186/s13195-025-01895-4. PMID: 41250235; PMCID: PMC12625010.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41250235/