PREVONOでは、「過剰診断」を重要なテーマの一つとして継続的に取り上げている。
がんの統計は、通常、生前に診断された患者を基に作られている。しかし実際には、本人が気づかないまま一生を終える「潜在がん」が存在することが知られている。
今回、日本全国66年間、約149万件の病理解剖データを解析した結果、生前に診断されなかった潜在がんの実態が明らかになった。
帝京大学医学部の研究グループが2026年2月に発表した。
約149万件の病理解剖から潜在がんを解析
日本の約149万件の病理解剖データから、生前に診断されなかった潜在がんの頻度が調べられた。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
潜在がんとは、生前には診断されず、亡くなった後の病理解剖で初めて見つかるがんを指す。
研究グループは、日本病理学会の全国病理解剖データベースを用い、1958~2023年の約149万件を解析した。
潜在がんについては1986~2023年の約81万件を詳しく調べ、3万6133件が確認された。
潜在がんとは、生前には診断されず、亡くなった後の病理解剖で初めて見つかるがんを指す。多くは生前に症状を起こさず、直接の死因にもなっていない。
こうしたがんの存在は、治療が必要ながんを早く見つけることと、過剰診断を避けることをどう両立させるかという課題につながる。
研究グループは、日本病理学会が1958年から集積してきた全国病理解剖データベースを用い、1958~2023年の148万6557件を解析した。この66年分のデータから、病理解剖で見つかったがん全体の長期的な変化を調べた。
一方、生前に診断されていなかった「潜在がん」は、1986年以降にデータベースで記録されるようになった。そのため、潜在がんについては1986~2023年の81万1159件に対象を絞って詳しく解析した。
その結果、3万6133件の潜在がんが見つかった。潜在がんの検出率は1986年の1.7%から2023年には7.4%まで増加していた。
研究グループは、病理解剖ががんの実態を把握する上で重要であり、治療が必要ながんの早期発見と過剰診断を抑える取り組みの両方が求められると見ている。
潜在がんのすべてが無害とは限らず
潜在がんの多さはがんの種類によって異なり、治療が必要ながんの早期発見と過剰診断を抑える診断の両立が課題となる。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
前立腺がんや甲状腺がんでは、生前に診断されないまま残る潜在がんが臨床診断を大きく上回っていた。
一方で、肺がんや大腸がんでは、潜在がんと臨床診断との差は比較的小さかった。
潜在がん全体の7.3%には転移が認められ、治療が必要ながんの早期発見と過剰診断を抑える診断のあり方が課題になる。
潜在がんの多さは、がんの種類によって大きく異なっていた。前立腺がんでは、75~79歳で臨床診断の約6.9倍に相当する潜在がんが見つかった。甲状腺がんでは差がさらに大きく、50~54歳で男性は約94倍、女性は約61倍に相当した。
一方で、肺がんや大腸がんでは、潜在がんと臨床診断との差は比較的小さかった。論文では、これらのがんでは潜在がんの割合が臨床診断に比べて大きく上回る傾向は見られなかった。つまり、前立腺がんや甲状腺がんでは、生前に見つからないまま残るがんが特に多いと考えられる。
ただし、潜在がんのすべてが無害とは限らなかった。潜在がん全体の7.3%にはリンパ節や他の臓器への転移が認められた。特に膵臓がん、胆道がん、リンパ腫、白血病では転移を伴う割合が高かった。
今回の研究は、生前に見つからないがんが日本人の体内に一定数存在することを示した。研究グループは、病理解剖が隠れたがんの実態を把握する上で重要だと指摘している。
今後は、治療が必要ながんをより早く見つける一方で、過剰診断を抑えるための診断のあり方が課題になる。