便に含まれる腸内細菌を調べ、大腸がんや膵臓がんの可能性を数値で示す新たな手法が開発された。
少量の便から6種類の細菌の遺伝子を測定し、がんの種類ごとに「リスクスコア」を算出する。前がん病変や早期膵臓がんでも特徴的な変化が確認された。
藤田医科大学の研究グループが2026年8月4日に発表した。
便から6種類の腸内細菌の遺伝子を測定
便に含まれる腸内細菌の遺伝子を調べることで、大腸がんや膵臓がんの可能性を数値化できる可能性が示された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 便に含まれる6種類の腸内細菌由来の遺伝子を定量PCRで測り、大腸がんと膵臓がんのリスクスコアを算出する。
- 大腸がんでは4種類、膵臓がんでは3種類の細菌マーカーを組み合わせることで、特徴的な変化を捉えやすくなった。
- 便は自宅でも採取しやすく、採血や内視鏡検査より身体的な負担が少ないため、繰り返し調べやすい。
腸内細菌の種類や働きの変化は、大腸がんや膵臓がんとの関係が注目されている。便を調べれば、こうした変化を体に大きな負担をかけずに捉えられる可能性がある。
ただ、腸内細菌を幅広く分析する従来の方法は、費用や解析の負担が大きく、日常的な検査への導入は簡単ではない。
そこで研究グループは、調べる対象を6種類の腸内細菌由来の遺伝子マーカーに絞った。使ったのは、狙った遺伝子が便の中にどれくらい含まれているかを測る「定量PCR」という方法だ。
研究では、比較の基準となる50歳以上の65人と、がんや前がん病変のある人たちの便を比べた。大腸については、大腸腺腫のある38人と大腸がんの27人の便を調べ、基準となる人たちとの違いを調べた。膵臓については、膵臓がんの高リスク群64人、早期膵臓がん17人、進行膵臓がん5人の便を調べた。
解析の結果、大腸がんでは6種類のうち4種類、膵臓がんでは3種類を組み合わせると、それぞれのがんに特徴的な変化を捉えやすくなることが分かった。
研究グループは、この組み合わせを使って、大腸がんと膵臓がんの可能性を示す計算式を作った。算出されるリスクスコアは、便に含まれる腸内細菌の特徴が、それぞれのがんで見られるパターンにどの程度近いかを示す。
便は自宅でも採取しやすく、採血や内視鏡検査に比べて身体的な負担が少ない。繰り返し調べやすいことも、この方法の利点となる。
前がん病変や早期膵臓がんでも変化
腸内細菌の変化は、大腸がんや膵臓がんだけでなく、大腸腺腫や早期膵臓がんでも確認された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- リスクスコアのAUCは大腸がんで0.824、膵臓がんで0.780となり、がんのある人とない人を見分ける力を示した。
- 大腸がんの前段階に当たる大腸腺腫や、早期膵臓がんでも腸内細菌の特徴的な変化が確認された。
- 早期膵臓がんと高リスク群を見分ける解析ではCA19-9を上回る傾向を示したが、参加者数が少なく追加検証が必要。
新たなリスクスコアは、大腸がんと膵臓がんのいずれでも、がんのある人とない人を見分ける力を示した。
検査の性能を表すAUCは、1に近いほど見分ける力が高い。今回の結果は、大腸がんで0.824、膵臓がんで0.780だった。
注目されるのは、がんだけでなく、前がん病変や早期の段階でも腸内細菌の変化が表れたことだ。
大腸がんの前段階とされる大腸腺腫でも、リスクスコアに特徴的な変化が確認された。便を調べることで、がんになる前の段階から異変を捉えられる可能性がある。
膵臓がんでも、早期の患者で特徴的な変化が確認された。さらに、早期膵臓がんと、膵嚢胞や慢性膵炎などがある高リスクの人を見分ける解析では、便のリスクスコアが、血液検査で使われる腫瘍マーカー「CA19-9」を上回る傾向を示した。
ただし、CA19-9との差は統計学的に明確ではなく、今回の研究は参加者数も限られた探索的な段階だ。別の集団での検証も必要で、現時点では、このスコアだけでがんの有無を判断することはできない。
将来は、大腸がん検診の便潜血検査を補う方法や、膵臓がんの危険性が高い人を継続的に調べる方法への応用が期待される。自宅で採取しやすい便を使うため、体への負担を抑えながら、詳しい検査につなげる判断材料となる可能性がある。