人間ドックでは、どの検査でどれだけのがんが見つかり、その後の精密検査につながっているのか。
第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会で、川崎医科大学総合医療センターの鎌田智有氏が、日本人間ドック・予防医療学会のがん検診実態調査委員会による2023年度の全国集計を報告した。なお、以下の数値は学会誌から補足している。
調査対象432施設のうち259施設が回答し、人間ドック受診者は約200万人。この中から6456例のがんが発見された。
内視鏡や低線量CTで早期のがんを多く発見
医療スタッフが内視鏡機器を手に持ち操作している様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 全国259施設、約200万人の人間ドック受診者を集計し、6456例のがんが確認された。
- 胃がんや大腸がんでは内視鏡、肺がんでは低線量CTの方が、胃X線・便潜血・胸部X線より高いがん発見率を示した。
- 内視鏡や低線量CTでは早期がんが多く見つかった一方、受診者の背景や検査負担が異なるため、単純な優劣は判断できない。
講演では、胃、大腸、肺などについて、人間ドックで使われている複数の検査法の結果が比較された。
胃がんでは、胃X線検査と胃内視鏡検査を比較した。胃がんの発見率は、胃X線で0.018%だったのに対し、胃内視鏡では0.1%台と、内視鏡の方が高かった。また、胃内視鏡で見つかった胃がんの73.4%は、がんが胃の粘膜内にとどまる「粘膜内がん」だった。胃X線では約半数。早い段階で見つかれば、条件によっては胃を切除せず、内視鏡治療で対応できる可能性がある。
食道がんでも、内視鏡で見つかったがんの74.4%が粘膜内がんだった。胃X線で見つかった場合は約42%で、内視鏡の方が早期のがんを多く拾っていた。
大腸がんでは、便潜血検査による発見率が0.062%だったのに対し、全大腸内視鏡では0.162%だった。単純計算では全大腸内視鏡の方が約2.6倍高い。ただし、受診者の年齢やリスク、検査の負担などが同じとは限らないため、数字だけで優劣を決めることはできない。
肺がんでも大きな差がみられた。発見率は胸部X線が0.018%、低線量CTが0.060%で、がん発見率を単純に比べると、低線量CTは胸部X線の約3.4倍だった。さらに、低線量CTで発見された肺がんの90%以上が0期またはI期だったと報告された。
鎌田氏は、肺がんと診断された女性では現在喫煙者が約9%、過去喫煙者も約9%にとどまったことにも触れた。肺がんが見つかった女性では、喫煙歴のない人が多かったことがうかがえる。現在、低線量CT検診の対象として主に検討されているのは重喫煙者だが、非喫煙女性での位置付けについても今後検討する余地があるとの問題提起を行った。
課題は「異常が見つかった後」
大腸がん検診などで用いられる便検査キット。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 要精密検査となった人の精密検査受診率は、胃X線で49.5%、便潜血検査で53.6%にとどまった。
- 胸部X線でも精密検査受診率は70.9%で、国が目標とする90%には達していない。
- がんを見つける検査の性能だけでなく、要精密検査となった人を確実に診断や治療へつなげる仕組みが重要になる。
一方で、今回の全国集計からは、検査そのものの性能とは別の大きな課題も見えてきた。
胃X線検査で要精密検査となった人のうち、実際に精密検査を受けた割合は49.5%だった。便潜血検査で陽性となった人でも53.6%にとどまった。
胃X線と便潜血検査では、異常を指摘された人のうち、およそ半数しか精密検査につながっていない計算になる。
便潜血検査については、発見された大腸がんの約半数が粘膜内がんだった。便潜血という比較的簡単な検査でも、陽性後の精密検査につなげることで、早い段階のがんを見つける機会になることが分かる。
肺がんの胸部X線では精密検査受診率は70.9%で、胃X線や便潜血より高かったものの、国が目標とする90%には届いていない。
講演では、高性能な検査でより多くのがんを見つけることだけでなく、「要精密検査」となった人を確実に診断、治療へつなげることの重要性が浮かび上がった。
また、胃内視鏡、全大腸内視鏡、低線量CTで発見率が高かったからといって、すべての人にこれらの検査を行えばよいわけではない。検診では、死亡率を減らせるかに加え、偽陽性や過剰診断、偶発症、費用、受診者の負担まで含めて評価する必要がある。
全国の人間ドックで蓄積される実際のデータを使い、誰にどの検査が適しているのかを見極めることと、異常が見つかった後を確実に医療へつなぐこと。この両方が、今後のがん検診の質を高める鍵になりそうだ。