心臓の血管にたまったカルシウムをCTで調べる「冠動脈カルシウム検査」は、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを見極める方法として利用が広がっている。しかし、すべての人に検査を追加する必要があるわけではないようだ。
米ノースウェスタン大学の研究グループが2026年8月に、医学誌「JAMA」で報告した。
検査を加えるメリットを調べた
心血管疾患の予防では、血圧やコレステロールなどの情報に加え、必要に応じて冠動脈カルシウム検査も判断材料になる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 年齢や血圧、コレステロールなどから10年間の心血管疾患リスクを推定するPREVENTに、冠動脈カルシウム検査を加えた効果を調べた。
- 対象は心血管疾患の既往がない45~79歳の6098人で、PREVENTの予測値とCTによるカルシウムスコアを測定した。
- その後10年間を追跡し、カルシウムスコアを追加することで心筋梗塞や脳卒中などの予測がどこまで改善するかを検証した。
今回使われたのは、米国心臓協会の「PREVENT(プリベント)」と呼ばれるリスク計算式だ。年齢、性別、血圧、コレステロールなど、通常の診療で得られる情報から、今後10年間に心筋梗塞や脳卒中などを起こす可能性を推定する。
一方、冠動脈カルシウム検査はCTを使い、心臓に血液を送る冠動脈にカルシウムを含む動脈硬化の塊がどの程度あるかを調べる。数値が高いほど、将来の心血管疾患リスクも高いと考えられる。
研究では、心血管疾患の経験を持たない45~79歳の6098人を対象に、PREVENTによる10年リスクと冠動脈カルシウムスコアを調べ、その後10年間を追跡した。平均年齢は61.4歳で、52%が女性だった。
境界リスクの人では、冠動脈の石灰化が多いほど発症率が上昇
心血管疾患のリスク評価では、通常の臨床情報に加え、必要な人を選んで冠動脈カルシウム検査を使うことが検討されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 全体ではカルシウムスコアを加えても予測性能の改善はわずかだったが、10年リスク3%以上10%未満の「境界~中間リスク」で有用性が高かった。
- 境界リスク群では、10年間の心血管イベント発症率がカルシウムスコア0で1.9%、300以上では14.3%と大きな差がみられた。
- 低リスクや高リスクでは追加検査のメリットが限られるため、治療方針を決めにくい人に対象を絞って使うことが重要とされた。
10年間の追跡の結果、366人(全体の6%)が心筋梗塞や脳卒中などを発症した。
研究グループは、PREVENTだけで予測した場合と、カルシウムスコアを加えた場合を比較。全体としては予測性能の改善はわずかだった。
一方、PREVENTで10年間のリスクが3%以上10%未満とされた「境界~中間リスク」の人では、カルシウム検査によってリスク評価が変わるケースが多く、誰により積極的な予防治療を行うべきかを判断する材料になった。
「境界リスク」のグループでは、カルシウムスコアが0だった人のうち、10年間に心血管イベントを起こした割合は1.9%だった。これに対し、スコアが1~99では3.9%、100~299では7.4%、300以上では14.3%まで上昇した。
血圧やコレステロールなどからみて一見同じ程度のリスクに見える人でも、冠動脈にどの程度カルシウムがたまっているかによって、実際のリスクには大きな差があった。
一方、もともとリスクが低い人では、カルシウム検査を追加しても得られる情報は限られる。不要な放射線被ばくや追加検査、費用につながる可能性がある。逆に、もともと高リスクと判定されている人では、カルシウムの値にかかわらずスタチンなどによる予防治療が勧められることが多く、検査を追加しても治療方針が変わりにくい。
研究グループは、冠動脈カルシウム検査を一律に行うのではなく、通常のリスク評価だけでは治療方針を決めにくい人に絞って使うことが有用とみている。検査の価値は、誰を対象にするかによって大きく変わることを示す結果となった。